自動車税制、どのように変わるのか(写真:bee32/iStock)

来年(2019年)10月に消費税率が10%へ引き上げられるのに合わせて、自動車税制も改正される。「どのように変わるのか」「自動車はいつ買えば良いのか」という点について考えたい。


東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

自動車は購入や所有の際に、さまざまな税金を徴収される。購入時には取得価格に応じて自動車取得税を納め、購入時と車検を受ける時には自動車重量税も支払う。毎年、自動車税/軽自動車税も請求される。自動車を購入する際はもちろん、各種点検・車検などのサービスを受けても、そこには増税を控えた消費税が加わる。

燃料にも税金が含まれる。ガソリン価格が1リットル当たり150円とすれば、消費税8%の時点で本体価格はわずか82.29円だ。残りの67.71円(比率に換算すれば45%)は、ガソリン税や消費税などの税金で占められる。

加えて初年度登録から13年を超えた車両に関しては、自動車重量税と自動車税/軽自動車税を増やす「重課」まで行われる。

この状態で消費税率が2%引き上げられて10%になると、自動車の売れ行きが大幅に下がってしまう。そこで与党が決定した「2019年度税制改正大綱」には、自動車に関する税負担の軽減が盛り込まれた。

自動車取得税について

まず購入時に納める自動車取得税は、2019年4月1日にエコカー減税率の見直しが予定されている。自動車取得税の現行エコカー減税が、2019年3月31日に終了することから、見直しが可能になった。この見直されるエコカー減税の実施期間は2019年9月30日までで、消費増税が行われる10月1日以降は、新たな環境性能割に移行する。

2019年4月1日にエコカー減税率を変更するのは、中級水準のエコカー減税車だ。2020年度燃費基準+10%達成車は、今は自動車取得税が40%軽減されているが、2019年4月1日以降は25%軽減になる。つまり納める税金が増える。

同基準+20%達成車は、今は60%の軽減、+30%を達成すると80%軽減されるが、2019年4月1日以降は両方とも50%の軽減にとどまる。

2020年度燃費基準達成車の場合

その一方で、2020年度燃費基準達成車(+のない車種)は、今は20%の軽減で、2019年4月1日以降も20%の軽減を保つ。また+40%以上を達成した場合も、今と同様に免税(100%の減税)だ。次世代自動車(電気自動車/プラグインハイブリッド車/燃料電池車/天然ガス車/クリーンディーゼル車)も、同じく免税を保つ。


具体的な車種で見ると、自動車取得税の40%軽減が25%に変わる2020年度燃費基準+10%達成車には、ホンダ「N-BOX」やダイハツ工業「タント」といった軽自動車のノーマルエンジン車が多い。

60%軽減が50%軽減に変わる2020年燃費基準+20%達成車には、ハイブリッドとしては燃費数値が伸び悩む日産自動車「エクストレイル ハイブリッド」、軽自動車でも比較的燃費の良いホンダ「N-WGN」などが該当する。

80%軽減が50%軽減になる2020年燃費基準+30%達成車には、トヨタ自動車「エスティマ ハイブリッド」 、日産「フーガ ハイブリッド」などがある。

トヨタ「プリウス」「アクア」「アルファード/ヴェルファイア ハイブリッド」、日産「ノートe-POWER」といった売れ筋ハイブリッド車は、2020年燃費基準+40%以上を達成しているから、2019年4月1日以降も免税を保てる。

そして消費増税が行われる2019年10月1日になると、自動車取得税が廃止され、新たに環境性能割が導入される。課税の仕組みは取得価格に応じる。税率は2020年度燃費基準の達成度合いによって異なり、実態は今のエコカー減税を実施する自動車取得税に極めて近い。

わかりにくいのは、環境性能割に暫定措置を設けることだ。2019年10月1日には低い税率を適用して納める税額を抑え、2020年10月1日からは、本来の環境性能割税率を適用する。

気になるのは今の自動車取得税との違いだろう。まず小型/普通車の場合、エコカー減税に該当しない車種の税率は、今の自動車取得税が取得価格の3%、環境性能割は2020年10月1日までが2%、それ以降は3%だ。

2020年度燃費基準を達成すると、今の税率はエコカー減税が実施されて取得価格の2.4%だが、環境性能割は2020年10月1日までが1%、それ以降は2%だ。

2020年度燃費基準+10%を達成すると、今の税率は1.8%だが、2020年10月1日までは免税、それ以降は1%になる。

2020年度燃費基準+20%の場合は、今の税率は1.2%だが、2019年10月1日以降は継続的に免税だ。それ以上の燃費基準達成も同様に免税される。

現時点で2020年度燃費基準+20%の車種には60%のエコカー減税が適用されて自動車取得税を納めているから、消費増税後は税負担が軽減される。ただし消費税は2%切り上げられるため、購入時の税金負担が軽くなるわけではない。

自動車重量税について

自動車重量税は、購入時と車検を受ける時に納める税金で、税額は車両重量に応じて決められる。現時点で実施されているエコカー減税は2019年4月30日に終了して(自動車取得税よりも1か月遅い)、2019年5月1日から2021年4月30日まで、2年間にわたり新しいエコカー減税を導入する。


基本的な仕組みは今までと同じだが、大半の減税区分で減税率を下げる。したがって納税額が増える。現時点で2020年度燃費基準+10%の車種は、購入時に納める自動車重量税が50%軽減されるが、2019年5月1日以降は25%の軽減だ。

同様に2020年度燃費基準+20〜30%の車種は今でこそ75%軽減されているが、2019年5月1日以降は50%の軽減になる。

一方、2020年度燃費基準達成車は現在と同じ25%軽減を保つ。また+40%以上の免税も変わらない。クリーンディーゼルなどの次世代自動車も同じく免税だ。

なお、自動車重量税で減税率の高い車種は、購入後に受ける初回車検時の自動車重量税も免税される。次世代自動車と2020年度燃費基準プラス90%の車種であれば、2019年5月1日以降の登録でも、現在と同じく初回車検時の免税を受けることが可能だ。

しかし2020年度燃費基準+50〜80%の場合、現在の登録なら初回車検時も免税になるが、2019年5月1日以降の登録では対象外になる(減税もない)。

自動車税について

2019年10月1日に消費税率が10%に高まると、2019年10月1日以降に新規登録を受けた自家用小型/普通乗用車については、自動車税が1000〜4500円の範囲で安くなる。


従来のエコカー減税は、主に購入時の減税を対象にしており、自動車を大量に売りたい自動車業界を支援する性格が強かった。これに比べると自動車税は、所有する段階での減税だから、多くのユーザーが継続的にメリットを得られる。

特に改正された自動車税額を見ると、排気量の小さな車種ほど引き下げられる金額が多い。したがって低価格車は自動車税が大幅に安くなり、高価格車ほど税額が増える累進性を強めた。自動車税制としては珍しくユーザーの理解を得やすい変更になる。

ただしここにも問題はあり、今は小排気量のターボ車が輸入車を中心に増えつつある。ディーゼルを含めて、2000ccエンジンで4000cc並みの性能を発生させる高級車もあるから、実態に合わせるなら最高出力や最大トルクを基準に課税する必要もあるだろう。

税制改正を行う背景には、消費増税に伴う車両の販売減少を抑える狙いがある。そこも視野に入れて、2019年4/5月にはエコカー減税率を下げる。消費増税前に自動車取得税と同重量税の納税額を増やすことで、消費増税前の駆け込み需要と増税後の落ち込みを緩和するわけだ。

ただし環境性能割は本来の趣旨と異なる。消費税率が10%になったら、二重課税になっていた自動車取得税を単純に廃止することになっていたからだ。それなのに環境性能割が設けられ、この内容は前述のようにエコカー減税を実施する自動車取得税とほぼ同じになる。名称と税率を少し変えたにすぎない。

また初年度登録(軽自動車は届け出)から13年を超えた車両の「重課」も残り、自動車ユーザーの実質的なメリットは自動車税の引き下げ程度だ。

いつどのような自動車を買えば良いのか

最もトクな買い方は、現行エコカー減税が実施されている2019年3月31日までに、登録や届け出を行うことだ。2019年の4月(自動車取得税)、5月(自動車重量税)になると段階的に新しいエコカー減税が実施されて税額が高まってしまう。

ただし現時点で自動車取得税や同重量税が免税になっている車種は、新しいエコカー減税でも購入時の免税に変更はない。したがって2019年4月以降に購入しても購入時の税額は同じだが、購入後の初回車検時に納める自動車重量税の免税は対応が変わる。2020年度燃費基準+50〜80%達成車は、現行エコカー減税であれば初回車検時の自動車重量税も免税だが、2019年5月1日以降の登録では免税を受けられない。ハイブリッド車でも対応が分かれるので注意したい。

判断に悩むのが減額される自動車税とのバランスだ。消費増税後に購入すると、先に述べたように自動車税が1年間で1000〜4500円安くなる。高価格車は減税額が少なく、2%の違いでも消費税は多額になるから、消費増税前に登録するのがトクだ。

しかし1000cc以下の車種は価格が安く、たとえばトヨタ「パッソ」で1000Xというグレードを選ぶ場合、税抜き価格は109万円だから、消費増税分の2%は2万1800円に相当する。

一方、購入後に納める自動車税は年額4500円安くなるから、5年間所有すれば自動車税の減税で、2万1800円の消費増税分を取り戻せる。

またパッソは2020年度燃費基準+10%を達成するから、2019年10月1日から2020年9月30日までは環境性能割が免税になる。重量税はエコカー減税率が下がって増えるが、ほぼ相殺されると考えていい。そうなると消費増税後の方が若干安くなる可能性がある。

こういう計算はパッソのような低価格車に限られるが、消費増税に伴って、自動車税は非常に複雑になってしまう。

特に購入する車種によって、損得勘定がバラバラなのは困る。消費者の立場に立ったわかりやすい自動車税制を望みたい。