レノボ・ジャパンは、2in1 PC「Yoga Book C930」を12月14日に発売した。
「Yoga Book C930」は、10.8型ディスプレイを搭載し、
・クラムシェル型ノートPC
・タブレット
2つの形態に変化する。

この新製品「Yoga Book C930」は、当初11月の発売を予定していた。
しかし全世界での予測を超える予約注文があり、供給が追いつかない状況と判明したことから、発売を延期せざるを得ない状況だったという。

なぜ「Yoga Book C930」は、このような超人気を集めているだろうか?

その理由は「Yoga Book C930」のディスプレイとキーボードにある。




通常の回転式2in1 PCは、一般的なクラムシェル型ノートPC形状から、中央のヒンジを軸にディスプレイを折り返してタブレット型PCに変化する。
タブレット形態ではディスプレイ面の裏側がキーボードとなる。
この際、キーボードの入力はオフになるため、キーが押されても、文字入力されることはない。
とはいえ、本体を持つ背面が凹凸のあるキーボードになるため、決して持ちやすいとはいえない。

回転式2in1PCである「Yoga Book C930」の場合は、どうなのか?




「Yoga Book C930」のキーボードは、E-Ink(電子ペーパー)が搭載されており、タッチパネルキーボードとなってる。

このE-Inkによるキーボードには、当然、凹凸がない。
フラットな平板に、E-Ink(電子ペーパー)のキーボードが表示されている。
クラムシェル型ノートPCとして利用する際は、このE-Inkによるキーボードをタッチして入力するのである。

本来のキーボード最大のメリットは、キーボードを押したという「打鍵感」にある。
しかしながらタッチスクリーンのキーボードの場合、
キーに触っても、キーには打鍵感がない。

つまり、ちゃんと入力できたのか? わかりづらいのだ。

とくにキーボードにおける「打鍵感」は、文字入力の精度や速度に直接影響するため、重要な要素となったいた。

では物理的に打鍵感が得られない「Yoga Book C930」のキーボードは、
この問題をどう解決しているのだろうか?

「Yoga Book C930」のキーボードは、
・キーをタッチした際にキーボードが沈む表示
・キータッチと同時にバイブレーションする
この視覚と触感の2つでキーが動かないながら打鍵感を再現しているのだ。

とはいえ、これで物理キーボードの打鍵感が味わえるのか?
と、問われれば、いわゆる物理キーボードに慣れ親しんできたユーザーの多くは、

「No」と、答えるだろう。

パソコンにとって、もっとも身近なデバイスであったキーボードに慣れているユーザーにとって、キーを打鍵する感覚は捨てきれない部分もある。

「Yoga Book C930」のキーボードを見ていると、ふと、SF映画やアニメなどに登場する、空中に表示されたキーボードを入力するシーンを思いだす。

Yoga Book C930のE-Inkのキーボードは、まさにSFのそれなのだ。

Yoga Book C930のキーボードは、
・ブライドタッチで高速打鍵する
・長文を高速でタイピングする
・Excelなどで大量の数値を連続して入力する
といった入力に特化した作業を求めるのではない。




利用するシーンシチュエーションの変化に対し、クラムシェル型とタブレット型に変化することで適応する。
このことで、移動中でも作業を可能とし、デスクのデスクトップPCとの連携、移動中のスマートフォンとの連携など、間をつなぐデバイスと見るべきなのかも知れない。

というのも、E-Inkを採用したキーボードは、いくつか大きなメリットがあるからだ。
1つは、圧倒的な省電力性能だ。
液晶と異なり、E-Inkは画像の書き換えの際に少量の電力を必要とするが、表示の維持には電力を必要としないという特徴を持つ。

もう一つは、キーボードが画像として表示される点だ。
日本語キーボードに限らず、様々な言語のキーボードが表示できる。
更にキー配列も物理キーボードと異なり、入れ替えや変更が表示を切り替えれば実現可能になる。

グローバル展開するレノボとしては、
各国の言語別にキーボードが異なる製品を用意することは、製造コスト増となるだけでなく、多種製品を在庫する管理コストも大きくなる。
E-Inkキーボード「Yoga Book C930」であれば、基本、1種類の製品を製造、在庫すればよい。このコスト削減でのメリットは、メーカーにとって非常に大きい。

ユーザーとしても、日本語キーボードやシンプルな英語キーボードなど、利用者の好み分かれており、E-Inkキーボードは表示を切り替えるだけで好みのキーボードが使えるようになるメリットは大きい。

実は、このE-Inkキーボードの開発には日本のレノボ大和研究所が携わっている。
大和研究所と言えば、レノボのグローバル製品開発において、日本の住環境や公共での利用を考慮した静音性を高めたキーボード開発など、様々な製品開発をする拠点である。こうした日本初の技術がグローバル市場に発信されているのだ。

大和研究所デザインのE-Inkキーボードのユニークな点は、通常であればキーボードと、マウスを操作するタッチパッドの両方を画面内に表示していないところだ。

利便性をあげるなら両方を表示しておくことだが、そうすることでキーの表示が小さくなり打ちにくくなってしまう。




Yoga Book C930のキーボードには、タッチパッドを呼び出すキーがありそれに触れるとスペースバーがタッチパッドに切り替わる。
マウスカーソルを操作して、文字入力するために文字キーに触れるとタッチパッド表示からスペースバー表示に切り替わる。

よく考えてみれば、マウスを操作しながら文字入力することはない。
この仕様には、なるほど! と思わされた。

ゲームなど、特殊な用途ではマウスとキーボードの両方を同時に使用するが、それはタッチパッドではなくマウスを使うというシチュエーションだ。
そもそもYoga Book C930はゲーミング向けPCではないので、そうした用途で利用もほぼないので心配する必要はないだろう。

このE-Inkキーボードは、キーボード利用だけのものではない。
E-Inkにタッチペンでメモや絵を描き、それを画像としてアプリケーションに貼り付けることも可能である。

そしてE-Inkのブックリーダーとしても勿論利用可能だ。
ビジネスでは、PDF書類などの閲覧などにも最適である。




タブレット型にした際に、E-Ink面を表示することも可能なので、キーボード面が無駄にならないと言うメリットもある。

つまりYoga Book C930は、
前面の液晶ディプレイでは、
WindowsタブレットとしてWebブラウザや動画視聴にもりようできる。

背面のE-Inkディスプレイでは、
ブックリーダーとしても利用できると言うわけなのである。

さて、E-InkのキーボードはSFのようなキーボードを連想させると述べた。
そのSF感を実現するには、
E-InkとUI(ユーザーインターフェイス)の作り込みが大事となる。

これが実現すれば、我々は新しい入力デバイスを手に入れるきっかけになるのではないかと考えている。

そもそも
・キーボード配列は、現在の物理キーと同じで良いのだろうか?
・Windows起動後、まずキーボードで文字を入力する操作が合理的なのか?

そのヒントとなるのが今から11年前に発売された携帯電話の「D800iDS」(NTTドコモ/三菱電機製)だ。この携帯電話は通常の液晶画面のほかにキーボード面をタッチパネルの液晶表示としたことが画期的だった。

通常のキーボードを模した表示で従来の携帯電話の操作ができたのだが、これはあまり反応が良くなくお世辞にも使いやすかったとは言えないのだが、表示と操作をシンクロさせることができたため、着信時には通話ボタンと拒否のボタンのみを表示すると言うわかりやすいUIを実現していた。

そのほか、「はい」、「いいえ」などの選択肢がある場合は、直接それを表示してタッチして操作を完結することができたのである。画面をみてボタン操作するという視線の移動がなく、初心者でも扱いやすいものであった。

とはいえ、従来のキーボードを真似たUIが全てを台無しにしていたように思うのである。

Yoga Book C930も従来のキーボードをそのまま再現するのではなく、
・タッチパネル上でフリック入力すう
・両手を使ったフリック入力をする
など新しい効率の良い入力方法がデザインできるのではないか?

・文字入力ありきの操作ではない操作、
・写真編集や動画編集、音楽製作など、より直接的な操作
これらを考えれば、
今後、どのような入力補助があれば作業を効率よくできるのだろうか?

キーボードの打鍵感や感触にこだわることで、
効率的で、自由な操作の未来を否定してしまっていないだろうか?

Yoga Book C930の登場は、
ただ物理キーとの違いがあるだけで、
E-Inkキーボードに、「No」と言うことは、そもそもの間違いだったのではないか? 
そういう考えもできるようになってきた。

Yoga Book C930は、様々な業務や用途に合わせて選ばれるPCだ。
2in1 PCとしては、まだ100%ではないかもしれない。

しかしながら、レノボの取り組みは、
今後のPCを変える可能性があるのは間違いないのではないだろうか。


執筆  mi2_303