息子同然にかわいがってくれた人に、20億円をだまし取られた…

プロ野球とメジャーリーグで華々しく活躍した「スター」新庄剛志さんが数年ぶりに注目を集めたのは、とんでもない金銭トラブルでした。

驚きの体験やこれまでの人生をつづった著書『わいたこら。』(学研プラス)を上梓したばかりの新庄さんが、バリから来日! ということで“新庄の今”について、話を聞きました。

〈聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉


【新庄剛志(しんじょう・つよし)】1972年生まれ。福岡県出身。1989年オフ、ドラフト5位で阪神タイガースに入団。2001年にニューヨーク・メッツへ移籍。日本人選手初の野手としてメジャーリーグで活躍。2002年、サンフランシスコ・ジャイアンツに移籍後、2003年メッツに復帰。2004年には日本球界に戻り、北海道日本ハムファイターズに入団。2006年に現役引退し、現在はバリ島で自由な生活を満喫中

整形は「日本を元気にするアイデア」だった

天野:
本読みました。めちゃくちゃ面白かったです!

新庄さん:
あ、そうなの? 面白いんだ

ボク、本を読もうとすると文字が「もわ〜ん」となっちゃって読めないんだよね。天才だからさ(笑)。


自著を「読んでいない」と話す新庄さん

天野:
…まずは、新庄さんが現在どんな生活をしてるのか? についてお伺いしたいです。

今はバリ島に住んでるんですよね。日本に戻ってくることもあるんですか?

新庄さん:
日本にはほとんど来ないね。今回みたいにたまたま広告の撮影があったときとか、テレビのオファーがあったときくらいかな。

天野:
バリ島では、普段どんなことをしているんですか?

新庄さん:
海を眺めながら、アイデアを考えてます。最近だと「雨って止められるのかな?」とか。


一瞬困惑してしまいましたが、「天気の影響で広告などの撮影が延期にならないよう、天候をコントロールできないか?」ということでした

新庄さん:
テレビの企画とか本とか…

日本のみんなが下ばかり向いてないで、笑顔になれるような方法」みたいなアイデアをおもに考えてますね。

天野:
日本のみんなが笑顔になる方法って、具体的にどんなものがありますか?

新庄さん:
最近だと整形を公表したことかな!



天野:
あ〜、ニュースになってましたね! それがなぜ「日本を笑顔にする」アイデアなんでしょうか…

新庄さん:
整形したのは「自分の顔に飽きた」っていうのもあったし、あとはおれ、ずっと「目」がコンプレックスだったの

たとえば自分の顔がキライで自信が持てない女の子とか、いっぱいいるじゃない。そんな人たちに「別に整形したっていいから、楽しく生きようよ」ってメッセージになるんじゃないかなと思って(笑)。

天野:
新庄さんにもコンプレックスがあったんですね…超意外です。

新庄さん:
人間誰だってコンプレックスはあるけど、それを「克服しよう!」って楽しめるかどうかだと思うのね。

ボクのそういう考えをテレビで話したり本にまとめたりすることで、ポジティブになりたいとか、そういう生き方をしたい、と言ってくれる人も出てきた。

そういうふうに「みんながもっと笑顔になれるにはどうしたらいいかな?」っていうのをいつも考えてる。



「1カ月に3台ケータイなくしたこともあるくらいだから、選手仲間と連絡取れない」

新庄さん:
バリでは、現役時代にはできなかった「普通の生活」を楽しんでるね。自分でATM行ってお金下ろして、スーパーで買い物して、マックシェイクを飲んで(笑)。



天野:
人との交流はどうですか?

現役時代の選手仲間たちと交流することはあるんでしょうか。

新庄さん:
ないない! ボク、すぐケータイなくすから、昔の仲間と連絡とれないんだよね。1カ月に3台なくしたこともある(笑)。

この間も飛行機でケータイなくして、航空会社に「新庄ですけど、ケータイの忘れ物ありませんか?」って問い合わせたら、ダンボールが届いたの。

開けてみたら新品のケータイが6台入ってたもんね(笑)。その航空会社だけで今まで6台も忘れてた。ロックの外し方も忘れてるから、処分しちゃったけど。

天野:
錚々たる人の連絡先が入ったケータイを6台も…

じゃあ、現地の人と遊んだりしてるんですか?

新庄さん:
現地の人には「ビッグボス」って呼ばれてる。でもおれが何者なのかは誰も知らないと思うよ(笑)。

ただ、そこでもあんまり交流したり、遊んだりってしないんだよね。なんか話が合わないっていうか…

正直言って今は犬といる時間が一番幸せ。犬は裏切らないもんね(笑)



20億円だまし取られて、より「人を信用したい」という気持ちが強くなった

天野:
裏切らない…というのは、やはり資産20億円をだまし取られた事件のショックが大きかったのでしょうか。

新庄さん:
そうだねー。ボクが18歳のころ母親に紹介された、地元で会社を経営してる“お金持ちのおじさん”に、プロ入り以来ずっとお金の管理を任せっきりにしてて。

「今いくら貯まってるか」なんて考えたこともなかったんだよね。

そうしたらその人が、会社が傾いた穴埋めで、ボクのお金をほとんど使ってしまっていた。



新庄さん:
メジャーに行く前に相談したら「チャレンジしろ!」って言ってくれたり、一緒に旅行に行ったり、お風呂に入ったり…

親子のようにお世話になった人だったから、本当にショックだったよね。

もしかしたらそうなったのも、自分に責任があったんじゃないかとも思った。ボクがちゃんとお金を管理できてなかったからじゃないかと。

天野:
本人に、「なんでそんなことしたんですか?」とは聞かなかったんですか?

新庄さん:
聞いてないよ。ショックすぎていろんな思いがめぐって、聞く気にならない。

天野:
では会うことも…

新庄さん:
ないね。

でもちょっと懲らしめてやりたいって気持ちがあったから『しくじり先生』(テレビ朝日系)で事件を暴露したんだよね。

天野:
今はお金の管理を自分でするようになったんですか?

新庄さん:
うん、これに懲りて最近はちゃんとチェックしてるよ。あと、マネージャーも公認会計士だし。

でもそれはお金を取られるのがイヤなんじゃなくて、人との信頼関係を保つためというか、信頼している人にお金で変わってほしくないから

だまされた経験があって、より「人のことを信頼したい」っていう気持ちが強くなったんだよね。

「お金ゼロ」から立ち直った「ポジティブをつくる方法」

新庄さん:
結局、残ったお金でバリに家を買って、お金はゼロ

またゼロからやり直してみよう! って思ったの。



天野:
すごいな…事件からよくそんなに立ち直れましたね。

新庄さん:
自分だったらどう? 20億円だまし取られて立ち直れる?

天野:
いやー、無理かな…やっぱり新庄さんぐらいポジティブな性格じゃないと失敗から立ち直れないんじゃないですかね。

新庄さん:
ちがうちがう! みんなできるんだって

よく「新庄さんは特別だから」「宇宙人だから」とか言われるんだけど、ちがう。野球だったら「打てなかった…」と落ち込んでたってヒットにしてもらえるわけじゃないじゃん。

つまりポジティブな姿勢は自分でつくっていくしかないんだよね。

天野:
なるほど…。「ポジティブな姿勢」になれる方法とかってあるんでしょうか?

たとえば仕事で結果を出せなくて落ち込んでるときとか。

新庄さん:
現役時代もずっとやってたんだけど、目を閉じてイメージするじゃない。

まず、「チャンスかつ、一番プレッシャーがかかる状況で自分に出番がまわってくる」ところを想像する

「前のバッターが打って、いいムードのなかで…」とかラクなのはダメだよ。前のバッターは三振! ツーアウト満塁で「自分が決めるしかない!」っていう場面を想像するわけ。



新庄さん:
で、そのあとが大事で、自分が打つところとか、打てるかどうかは考えない。イメージもしない。そこはもう無我夢中でやるところだから。

次にイメージするのは「ヒーローインタビューで『お前最高!』って言われてるところ」だよね。

天野:
肝心な「打つところ」は考えないんですか?

新庄さん:
ネガティブになっちゃう人って、多分そこを考えすぎるんだよね。「どういうプレーをしよう」とかの過程を。

仕事にポジティブに向き合えるコツはそうじゃなくて、「どうなっていたいのか」「どうなれたら気持ちがいいのか」をちゃんと考えることなんだよ。



新庄さん:
同じ理由で、ボク「頑張ってください!」「みんなで頑張ろう」っていう言葉もキライなんだよね。「頑張る」って、苦労に耐えて…っていう過程をもうツライものだととらえちゃってるでしょ。

ボクがファイターズにいたときは、若手に「楽しんで!」「今日活躍したらスターだぞ!」っていうことだけ声をかけるようにしてた。

そしたら実際優勝したんだから。この考え、マネしてみてくださいね(笑)。

「現役時代も今も、どっちも楽しい」

天野:
ちなみに今後、コーチや監督として野球に関わりたいという気持ちはありますか?

新庄さん:
そうねー。ケータイもコロコロ変わるし、向こうから誘いが来ないんじゃないかな(笑)。

でも、(2023年に開業予定の)ファイターズの新球場には行ってみたい。

天野:
おお! 新球場のタイミングで「新庄監督」が誕生したら大盛り上がりになりますね!

本日は今をエンジョイされている様子をお伺いできましたが…新庄さん、現役時代と今ってどちらが楽しいですか?

新庄さん:
う〜ん、そうだね…



新庄さん:
どっちも楽しい

天野:
スター扱いされてて高年俸だった現役時代も、お金を取られてしまった現在も同じように楽しいと…?

新庄さん:
ボクは昔から「毎日、その日できる楽しいことを必ずひとつする」というのを決めてたんです。お金を取られたりしても、その日できる楽しいことはいっぱいあるでしょ。

現役時代だってずっと高年俸だったわけじゃなくて、最初はお金なくて、同期の選手に借金してたんだもん(笑)。月の手取りが12万円で、1本7000円のバットが買えなくてね。



新庄さん:
それでも野球が楽しかったから、誰よりも練習してた。まわりが110kgのバーベルでヒーヒー言ってたら、自分は135kgのバーベルを上げる。試合後の練習も人の4倍やった

お金にめぐまれてなくたって、「楽しいこと」と思ってたらなんだってできるんですよ。今、朝起きてすぐ笑い出すこともあるもんね。楽しくて(笑)。



取材後、「時間短かった?」と声をかけてくれた新庄さん。

「そうですね、正直短く感じてしまいました」と言ったところ、「それはあなたが仕事が楽しいと思ってるからだし、おれが楽しませてあげられたからあっという間だったんだね!」と“グータッチ”。

メジャーをも魅了したそのポジティブさは、まだまだ衰えることはなさそうです。



〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=森カズシゲ〉

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【新庄剛志】「20億円をだまし取られた“しくじり”に比べたら、すべてかすり傷」
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