先日iPhone XRの増産が中止されたとの噂が報じられましたが、新たにiPhone XSiPhone XS Maxもサプライチェーンへの注文が削減されたと伝えられています。

本日の報道によると「9月に発表されたiPhone3機種の(サプライチェーンへの)注文が削減された」とのこと。関係者の話では、アップルはiPhone XRの生産計画も再度、下方修正すると複数のサプライヤーに伝えたとされています。米Wall Street Journal(WSJ)は、2018年発売のiPhone3機種の売行きが予想より低調なことに加えて、従来よりも機種が増えた(2機種から3機種)ためにサプライチェーンの混乱を招き、アップル自らも必要な部品やデバイス数の予測が困難になっていると、複数の事情通の話として報じています。

さらに関係者によると、特にiPhone XRは需要の予測が難しいとして、アップルがサプライヤーに対して今年9月〜来年2月に約7000万台の発注をしていたところ、10月下旬には生産計画を約3分の1カットしたとのこと。ちなみに先日の日経報道では、20〜25%の下方修正とされていました。

アップルのルカ・マエストリ最高財務責任者(CFO)は、今年初めのWSJインタビューで「サプライヤーは競合他社の製品も生産しているため、サプライヤー情報を元にデバイス(iPhone)の需要を予測すると見誤る」と指摘していました。

が、先週iPhoneの大手サプライヤーである Qorvo、Lumentum、そしてジャパンディスプレイは「大手顧客の注文削減」を理由に、四半期の利益見込みを下方修正しています。アップルが名指しこそされていないものの、財務当局に提出された書類等によると、3社の売上の3分の1〜半分をアップルとの取引が占めていることは明らかとのこと。

こうした情報を総合すると「iPhone XRなどの売上が低調」は要因の1つではあれ、生産削減の主な理由はそれらの事情を織り込んだ「iPhone3機種の需要が予測しにくくなっている」ということです。

2億台を超えるiPhone向けの部品生産では、売上の予測を読み間違えると莫大な損失を招きかねないだけに「とりあえず生産を控えて、市場の動きを様子見」というニュアンスが読み取れます。

実際、昨年のiPhone Xについてはアップルの当初見通しが甘すぎたため、多くのサプライヤーが打撃を受けたとのこと。アップルはそれを受けて、2018年1月〜3月の生産台数を約2000万台削減した......という過去を、WSJは「アップルとのビジネスは、しばしば約束を覆すために、とてもリスキーだ」という某サプライヤー幹部の話とともに伝えています。

アップルは過去モデルのiPhoneを併売していることや、サービス部門の目覚ましい発展もあり、こうした事態がどれほど問題かは明らかではありません。米9to5Macは、当四半期においてiPhoneのASP(平均価格)も上昇が予想されるため、以前よりも少ない販売台数で同じ利益を上げられるとも指摘しています。

あるサプライヤーの幹部による「成長は多くの罪を隠す」「成長が遅くなれば、海底から岩が姿を現す」との談話も伝えられています。これまでアップルは圧倒的なiPhoneの販売台数を背景にサプライヤーに対して強い立場を維持してきましたが、今後はこうした力関係に変化が生じるのかもしれません。