前向きに挑んだときには、藤波との“名勝負数え唄”や一連の猪木に挑んだ闘い、UWFインターナショナルとの対抗戦のような名勝負を生み出すが、その一方で、トム・マギーとの異種格闘技戦やW-1での佐々木健介戦など、気の乗らない試合では思わぬ凡戦となったりもする。

 そもそも長州は、プロレスならではの演出自体に興味がないとの評もある。
「新日を退団してWJを旗揚げした際、フロント側は健介との師弟対決アングルを組もうとしたが、長州は『そんな必要ない』と一蹴しています。長州なりのプロレスを見せればファンは満足するという考えが、根本にあるんですね」(スポーツ紙記者)

 ハッスル出場時には、長州に“ハッスルポーズ”をさせることをアングルにしようとしたものの、東京スポーツ紙上で「そんなもんいつでもやりますよ」と、あっさり披露して関係者を激怒させたこともあった。
 素のままの感情で素のままの試合をする。それでスター選手となったのは長州の才能ゆえなのか、それとも時代や周囲に恵まれた結果なのか…。判断の分かれるところであろう。

長州力
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PROFILE●1951年12月3日、山口県出身。身長184㎝、体重120㎏。
得意技/サソリ固め、リキラリアット、バックドロップ。

文・脇本深八(元スポーツ紙記者)