Eコマースの拡大などで、物流の効率化を課題とする企業が増えている。しかし、将来の事業成長を見据えて物流の改革を実現できる人材を見つけるのは容易ではない。物流分野の採用支援で実績を上げているエグゼクティブ・サーチ会社、兆(きざし)の近藤保代表取締役に企業の人材ニーズや採用の実態などを聞いた。

三和銀行(現三菱UFJ銀行)で支店営業、本部でデリバティブ商品の営業推進、全社ウェブビジネスを企画・推進。2000年、大手エグゼクティブ・サーチ会社に入社。大阪拠点を立ち上げ、西日本責任者、取締役ヘッドハンティング事業部長を歴任。2011年に兆を設立。通算約500件以上のヘッドハンティング実績(うち上場企業の代表取締役ポジションに20件余、取締役・執行役員ポジションで約100件)がある。名古屋工業大学大学院生産システム工学修士。 すでに多くのメディアでも取り上げられている通り、物流分野の人手不足は深刻な状況です。低価格で非常に高いレベルのサービスを提供し続けてきた結果、物流の現場には相当のしわ寄せが生じています。すでに再配送や料金などを見直す動きが出ていますが、今はその過渡期です。

 近年、消費者に商品をダイレクトに届けるEコマースや通信販売などの事業が大きく伸びていますが、今後の事業成長においては物流がボトルネックになると考える企業が増えています。物流の仕組みを自ら構築するのか、他社の物流サービスを活用するのかといった選択をはじめ、事業戦略を考える上で物流が大変なポイントになっています。

 例えば、ある大手ネット企業は過去に自ら物流会社を立ち上げたものの難易度が高いということで一旦手を引いていましたが、物流の重要性がますます高まってくると認識して再度チャレンジしています。

 事業戦略における物流の重要性が高まる中で、当社には「今の物流課題を改善するだけでなく、中長期を見据えた成長に耐えられる物流を構築するための人材」、「改善というレベルではなく非連続な成長を目指して改革的な新しい思想を導入できる人材」を探してほしいという相談が入っています。特にEコマースや通信販売のほか、ドラッグストアやスーパーなどのリテール分野の企業は採用を急いでいます。 物流分野には大きく次の三つの課題があると考えています。「物流の最適化を実現するためのサプライチェーンマネジメント企画戦略立案」、「多品種少量の商品を扱う複雑な倉庫内マネジメントの効率化」、「IT活用や自動化などの物流テクノロジーの強化」です。

 まず、「サプライチェーンマネジメント企画戦略立案」ですが、こうした仕事を担えるような戦略人材を求めるに当たって、同じ業界から人材を採用してもせいぜい10%程度の改善にしかつながらないことが大半です。

 改革を目指すのであれば、例えば、ものづくり企業の生産管理担当者が候補になります。自動車や家電メーカーでは膨大な点数の部品を調達して組み合わせて製造し、期日に遅れることなく指定の場所に納品するという動きを世界標準で実現しています。こうした人材を当社で探し出してEコマース企業に紹介し、高い評価を得ています。 また、コンサルティング会社で物流分野を専門とする人材も経験値がありますので候補になります。いずれにしても同じ業界のライバル企業から人材を引き抜くよりも、自社よりも上流でビジネスを行っている企業から人材を獲得するのがトレンドです。

 次に、「倉庫内マネジメントの効率化」を実現できる人材についても、ものづくり企業の生産管理担当者はフィットします。ものづくりの現場は動線のマネジメントが重要で、いかに少ない動線で効率的に部品などを集め、組み立てられるかを徹底的に追求しています。また、多品種少量を取り扱う企業の物流戦略の経験者も適しています。