土屋礼央の「じっくり聞くと」。今回は編集プロダクション風来堂の今田壮さんにインタビュー。

全国津々浦々、450本以上伸びている国道。今田さんはその国道が古ければ古いほど、細ければ細いほど、重複していればしているほど愛してしまい、途中で切れている道に歴史とロマンを感じる超国道マニア。

鉄道マニア・土屋礼央は、国道のどこにそんなに惹かれるのか、興味津々です。

そんな今田壮さんに、土屋礼央が今回も「じっくり」聞いています。

道の歴史は鉄道より遥かに古い



土屋:最近、福島から栃木に車でイチゴ狩りに行ったのですが、県が変わるとアスファルトが変わる。道は境目が面白いって気がついたんです。

今回、風来堂さん編集の本『国道の謎』を読ませて頂いて、僕たち鉄道ファンが秘境駅に興奮する感じに近いのかなと思いましたが、正直国道で興奮するという領域まで、まだ理解が及んでいません。最近では鉄道好きも認知されて人数も多い。でも国道好きとなると……。

今田:どうかしてますよね。

土屋:どうかしてるかもしれません(笑)。ですので、今日は国道の魅力を伺えるといいなと思っています。

今田:国道はどれもそんなに違わないと思っていました。でもガチッと取材してみると違いがたくさんあって、先入観とのギャップが面白い。

例えば国道は国が全部管理していると思いきや、県や政令指定都市が管理しているケースも多いんです。県境をまたぐと、いきなりボロボロの道になったりする。国道の看板、我々国道マニアは『おにぎり』と呼びますが、あの国道の看板が出ていないこともあります。

青い三角形の国道標識を「おにぎり」と呼ぶ

この間、福島県と新潟県を結ぶ国道252号線を通った時に、福島の只見線に田子倉という超秘境駅があるんですが、あの辺りは10キロ、20キロも国道のマークが出てきません。それが新潟に入った途端、『おにぎり』が出てくる。

看板って統一の設置基準があるような顔をしていますが、実は自由。そのギャップを探す楽しさがあります。それから国道の峠道には歴史があって、調べていくと面白いんです。

土屋:僕は鉄道ファンだし、鉄道は日本の血流だと思っていました。でも国道に比べると鉄道なんて赤ん坊。まず道ありき。道は鉄道の大先輩だったんですね。「国道好き」なんて新キャラが出てきたなと考えていましたが、今田さんの本を読んで反省しています。国道好きは、今どれくらいの人数がいるんでしょうか?

今田:鉄道に比べると数百分の一くらいの規模になると思いますが、道路好きは確かに存在します。道自体に関心がある場合や、地図・地形マニアも。「よぉここにトンネル通したなぁ」と、土木技術の凄さに感動しながら、景色を眺めるのが好きな人たちも多いです。

鉄道との比較でいうと、鉄道は勾配に限界がある。それに対して「この勾配は鉄道では登れんな」と、思う人もいるはず。僕もそのタイプです。

土屋:そういう視点かー!改めて鉄道は道の足元にも及びませんね。大変失礼しました! ちなみに今田さんは全国の国道を何割くらい走破しました?

今田:国道は459本ありますけど、そのうちの半分くらいでしょうか。地図の道を塗りつぶしていく感覚で楽しんでいますね。


土屋:『ブラタモリ』のブームから、いろいろな想像ができる道の魅力に注目が集まっていますよね。今田さんが国道の魅力に目覚めたのは、いつでしたか?

今田:きっかけは20年くらい前に国道が切れているのを地図で見つけた時です。峠の手前で道が切れて「これなんだ?」と。調べてみると事情があって作られていなかっただけでしたが、それならば別々の国道にすればいいのに、「同じ番号になっているのはなぜだろう?」と意識するようになりました。

土屋:はじめの一歩は、地図を眺める面白さから始まるんでしょうか?

今田:僕はそうでした。実物を見る面白さは、地図で確認する面白さの延長上にあるものです。国道を見るポイントは、地図や地形をまず頭に入れて現地に出かけ、実際に勾配を肌で感じられるところ。鉄道好きな人の場合だと、先ほどの勾配のように、鉄道と比べて道のこういうところに参った!と思うところを見つけられるかどうかじゃないでしょうか。

土屋:平地よりも山岳地帯の方が面白さを見つけやすいでしょうか?

今田:そうですね。加えて、土木目線で見ていくといいと思います。昔は長い距離を掘ることが出来なかったトンネルが、技術の進歩とともに長くなって、何年につながったのか。そういう知識があるのとないのとでは見えてくるものが全然違います。

土屋:運転しながら湧いてくる疑問をスマホで調べたいときに、一人だと車を止めなければいけないので、相方がいた方がよさそうですね。

今田:相方が国道好きならいいですけど(笑)。

土屋:その点、鉄道好きは乗りながら調べられる!この安心感。

今田:それは鉄の勝ちですね。