同社は正社員に支給されていた住居手当を18年10月から段階的に削減し、最終的に廃止することを決めた。ただし、対象となるのは転勤(転居を伴う異動)のない一般職正社員の5000人。住居手当を支給されていなかった非正社員に合わせる形での廃止だ。 そのほかに正社員の遠隔地手当や寒冷地手当も削減。一方、繁忙期の年末年始手当のうち、年始勤務手当は非正社員にも支給し、年末手当は廃止する。

 当初は労働組合側が住居手当など正社員にだけ支給されている手当を非正社員にも支給するように要求したが、会社側が正社員の手当の廃止を逆提案してきたという。同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)の法制化に伴うリスクを回避しようと考えたのかもしれない。 本来は非正規の処遇改善を目指した働き方改革に関する法律であるが、悪用すれば正社員の処遇低下につながりかねない危険性も含まれている。そうなると安倍政権が意図している非正社員の処遇改善による賃金の上昇と需要拡大を通じて景気浮揚を図る成長戦略に水を差すことになる。

 同一労働同一賃金の対応についても単なる目先の手当の見直しにとどまらず、非正規と正規双方が納得するような賃金制度全体の改革も必要だろう。