またクラウドソーシング事業者と交渉できる報酬の内容については「報酬の支払方法」が交渉できるが46.1%、「報酬の支払期日」(43.7%)、「経費の負担」(42.7%)、「報酬額、報酬決定方法」(42.5%)となっており、半数以下にとどまっている。とくに専業クラウドワーカーは兼業に比べて「報酬の支払期日」「経費の負担」「報酬額、報酬決定方法」の3項目は3割以下であり、交渉が難しい実態が浮かび上がる。 クラウドワークが新しい働き方といっても、すでに過去にも個人請負型就業者のような「雇用」と「自営」の中間的な働き方の増加が指摘され、保護のあり方が検討されてきた。労働基準法上の労働者であれば社会保険や雇用保険、労災保険などの労働保険などの権利が保障される。また、労働組合法上の労働者であれば憲法で保障された団結権、団体交渉権、団体行動権が保障されるが、クラウドワーカーにはそんな保障は一つもない。

 厚労省では有識者による「雇用類似の働き方に関する検討会」を開催し、今年3月に報告書を出したが、クラウドワーカーの保護については、結論から言えば先送りされた。 クラウドワークに詳しい専門家は何より実態調査を急ぐべきだと指摘する。

「雇用によらない働き方がトレンディな働き方だと言われることに非常に違和感がある。個人請負など自営的働き方は雇用ではないがゆえの弱さを持つ。そういう働き方で稼げる人がいる一方、稼げない人もいる。つまり格差があるという大事な事実が消えているのが一番の疑問だ。クラウドワーカーに関するこれまでの調査で最も欠けているのが所得だ。本人が主たる生計維持者なのか、クラウドワークが主な仕事あるいは従の仕事なのか、生活実態を含めて国がきっちりと実態調査をすべきだろう」

 従来のように明確な実態調査や保護策がないままにクラウドワーカーがこのまま増えていけば、勝者と敗者の格差拡大はもちろん、“クラウド・ワーキングプア”が大量に発生する可能性もある。