アラサー女子と言えば、仕事以外にも恋愛や趣味の活動で忙しく過ごしている人が多い世代。一見、充実しているように見える彼女たちですが、職場のストレスや、SNS疲れ、結婚への焦りなどから、現実逃避もしたくなります。そんな“ちょっとした息抜き”のために始めたことや趣味嗜好が、金銭をつぎ込み、時間を費やし、思わぬ『沼』への一歩となるとは……。普通のアラサーOLが、周りから見ると“常識から外れている”と思われるほど、その世界の『沼』にハマってしまったケースを本シリーズでは紹介していきます。

課金ゲームで疑似恋愛

お話を伺った由紀子さん(32歳・仮名)は、3年ほど前イケメンが出てくる乙女ゲームにハマってしまい、給料の3分の1ほどを毎月ゲーム課金につぎ込んでしまったと言います。彼女は現在は婚活中で、webディレクターとして働いています。

「乙女ゲームは、主人公のイケメンが言ってほしい言葉を全部言ってくれるのが、気持ちいいんです!最初は課金しなくても楽しめるのですが、ゲームの中にある“ミニゲーム”を攻略するためや、“別エンド”と呼ばれる隠しエンディングを見るためには、課金しないとできないものがあって、気づけば一度に5万円くらい使っていました」

彼女は関西地方の大学を卒業後、web関連の企業に就職するために上京します。社会人になると、仕事の忙しさと真面目過ぎる性格がネックとなり、恋愛から遠ざかってしまいます。

「仕事では雑誌やプロモーションのサイトを任されて、Webディレクターとしてやりがいを感じていました。友達の紹介や飲み会でそれなりに出会いはあったのですが、深夜に帰宅するような不規則な生活と仕事のプレッシャーから激太りして、体重が20kg近く太ってしまったんです」

太った由紀子さんの姿を見て、同僚男性が容姿をからかうようになります。

「毎朝、鏡を見ても、自分の容姿に全く自信が持てなくなっていました。自分のことを好きになれない時って、誰かを好きになれないんです。それでも、どこかで恋愛をしたい気持ちがあって、気分が晴れないでいました」

友達との約束のドタキャンを繰り返し絶縁!その孤独からゲームへ

次第に、恋愛対象がリアルの男性から二次元の男性に移っていきます。

「20代半ばまでは男性とデートをしたり、相手のことを好きになりかけたりもしたのですが、社会人になってからはリアルの男性には全く興味が持てなくなっていました。ずっと10代の頃から漫画が好きだったので、乙女ゲームはその延長線上にありましたね」

もともと由紀子さんは学生の頃から派手なタイプではなく、少年向け漫画や鉄道というようなマニアックなものが趣味でした。

「男性と話すとき、どういう話をすればよいのかいつも迷ってしまうんです。趣味の話だとマニアックすぎるし、共通の話題になるようなものがなくて、つい仕事の話ばかりになってしまうんです。そのせいか“つまらない”と言われてしまって、男性と出かけるのが億劫になっていました」

そんな時、働きづくめの状況が、彼女の精神状態を追い詰めます。

「その当時働いていた会社では、どんなに頑張っても達成できないような高い目標が設定されていたんです。それでも仕事が生きがいだったため、できないのは自分の能力不足ではないかと思って一人で全部抱え込んでいました。その結果、一人ではできないような仕事量を任されてしまい、深夜残業と休日出勤は当たり前の状況に……。仲が良い友達と約束しても、仕事で急ぎの対応が入るとドタキャンしてしまい、怒った友人から絶縁されるほどでした」

忙しさで人と会えない孤独から、ゲームの世界にどんどんハマっていきます。

「自分のプライベートの時間を費やしても、全然仕事が終わらないだけでなく、それを評価されることもなくて辛い毎日でした。そんな時に、何気なく仕事で関わったライターさんから教えてもらった乙女ゲームをやってみたら、時間を忘れるほどハマったんです。しかも、ゲーム内の着せ替えアイテムもオシャレで、現実の太って醜い自分では絶対に似合わないものも、アバターが着れば可愛らしく見えて、着せ替えも楽しかったんです」

乙女ゲームの良さは、こちら側の都合で遊べるところだったと言います。

「深夜に帰宅して、誰かと話をしたくても一人暮らしだとできないじゃないですか。でも、乙女ゲームだったら時間に関係なく、どんな私でも“素敵だね”って言ってもらえるんです。これは二次元だから可能だと思うと、ますますリアルの男性よりも乙女ゲーに出てくるイケメンの方がいいって思うようになったんです」

乙女ゲームにハマりすぎて、トイレに行く時も、ベッドのなかでもスマホが手放せなかった。

ゲームを始めて3日で2万課金!仕事中も通勤中もイケメンの甘〜い言葉で胸がドキドキ!〜その2〜に続きます。