4月27日に裁判所による買収手続きの停止命令が出されて以降、買収をめぐる動きは混迷を深めた。反対派の大株主との和解、和解案の失効、統合の再交渉、そして統合そのものの白紙―。事態はわずか3週間もたたない間に二転三転ならぬ、三転四転のドタバタ劇となった。

 ゼロックスは一連の責任をとり、ジェフ・ジェイコブソン最高経営責任者(CEO)が辞任し、新たにアイカーン氏らが推す取締役5人を受け入れるとも表明。今後は新たな経営体制のもと、再出発することになる。

ペーパーレス進む北米、買収効果に疑問符
 北米市場では、IT化の進展とともにオフィスではペーパーレス化が急速に進む。これに伴い、ゼロックスは売上高、営業利益ともに年々、右肩下がりに減少するなど業績は低迷。最近では、日系の複写機大手リコーが北米事業で約1700億円以上の巨額の減損に追い込まれるなど、先進国の市場環境は厳しさを増す。関係者の思惑が交錯する中、「富士フイルムHDがゼロックスを取り込む利点は何なのか」が改めて問われている。

 「オフィス機器系で成長が期待できるのは、エマージング(新興国)マーケット」。事務機器大手の経営幹部が強調するように、市場自体が停滞する先進国に代わり、拡大が見込めるのは新興国だ。

 この成長市場を主要な販路として押さえているのが富士ゼロックス。同社を傘下に収める富士フイルムHDにとってはある意味、成長市場を既に確保しているともいえる。

 このため、そもそも富士フイルムHDが「(北米、欧州市場が中心の)ゼロックスを買収することに大きなメリットはないのでは」(アナリスト)と問う声も大きい。

(文=堀田創平、杉浦武士)