その後、女性に対するキャリア意識を高め、自己成長の気づきを与えるセッションや男性上司に対する育成のコーチング手法を学ぶ場も設けている。女性部下の持つ悩み、強みと弱みを上司と共有し、どのように支援していくかを考えさせることに狙いがある。

 そして最後に女性部下の育成プランを作成し、上司と合意し、それをベースに1〜2年かけて実行することにしている。
 
 育成担当の男性上司の意識をどう変えていくかは人事担当者にとって喫緊の課題だ。女性に対する差別感はないにしても「女性に対してやさしすぎることが成長を阻害している」という指摘も多い。
 
 もっと女性も修羅場の経験を積ませるべきだと語るのは食品業の人事部長だ。「女性部下が『自分は楽しいのでこのままでいいです』と言えば『わかった、頼りにしているから引き続きがんばって』と言うだけの上司が多い。
 
 もし優秀な男性部下なら『もっと上を目指せ、俺のポジションになるぐらいにがんばれ』と言い、難易度の高い大きな仕事にチャレンジさせるはず。女性社員も同じような経験を積ませなければ成長しないし、管理職も任せられない」
 
 社員の中にはいまだに長時間働き続ける人が、仕事ができる人と思い込んでいる人も少なくない。仮に上司もそう思い込んでいるとしたら女性は前に進もうとはしないだろう。こうした意識や言動を含めてマネジメントの評価制度を昨年、大きく変えたのが外資系製薬企業だ。
 
 「これまではパフォーマンス重視だったが、数値以外に、どのように部下と関わり、どんな影響を与えたのかという育成を重視し、評価と処遇にも反映するようにした。例えば数値は達成していても、女性に対する仕事への意欲を失われる言動や育っていない管理職は降格させる。
 
 逆に予算達成はできなかったが、上司に対する信頼が強く、一気に部下を成長させるなどの成果があれば昇進させることにしている。経営陣からも女性を育てられない上司は外せと言われており、評価の軸を変えることで気づいてもらいたいと考えている」(人事担当者)
 
 経営トップは管理職になりたくない女性が多いことに「経営の危機」を感じているという。そうした意識を経営陣が持つことなしには、女性の登用は進まないだろう。