関東に目を向けると、中央構造線は群馬県の下仁田、埼玉県の岩槻南方を通り、さらに茨城県を経て鹿島灘へ抜けて途切れていると見られている。
 「さらに東京近郊を見れば、群馬県高崎市から埼玉県熊谷市を通り鴻巣市に至る深谷断層帯、鴻巣市から千葉県市川市までの綾瀬川断層帯があり、これらの関東平野北西縁断層帯と呼ばれる活断層帯は、中央構造線に近接している可能性が高いのです」(同)
 また、東京都内には立川断層ほか、多くの活断層と思われる断層の存在が明らかになりつつあり、これらが影響し合って巨大地震を誘発することもあるという。

 そもそも、東京の地下は北米プレート、太平洋プレート、大陸側のフィリピン海プレートが入り込む3重構造で、このような場所に首都を構えているのは、世界を見渡しても他にはない。
 「中央構造線が活性化するのは、日本の南側にあるフィリピン海プレートの圧力が強まっていることも意味します。フィリピン海プレートがユーラシアプレートに潜り込む際に表面が削り取られる。この削りカスともいうべき土砂が積もり積もって陸地となり、日本列島の南部を形成しているのです。そこで形成された地盤と、もともとユーラシアプレート上に存在した地盤との境目が、中央構造線と言えます」(同)

 南海トラフはそのフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境目にあたり、水深4000mにも及ぶ深い谷となっている。
 「昨年の5月に話題となった大分県豊後大野市で突如現れた地割れは、活断層の活動の一つと見られ、この変異が中央構造線からの影響とする専門家もいます。熊本地震以降、中央構造線は明らかに活発化しており、つまりは今、フィリピン海プレートが猛烈に大陸側に向かって押し込んできていることが考えられる。この圧力はどこも一定のため、南海トラフでも巨大地震が迫っていると言えます。同時に、今回の沖縄での地震も、その圧力を受けた影響とも取れる」(地震研究室関係者)

 1943年から'45年の戦後にかけ、鳥取地震(M7.2)、南海トラフ巨大地震の昭和東南海地震(M7.9)、三河地震(M6.8)、南海地震(M8.0)が起き、4年連続して死者1000人以上を出す被害が出た。
 「今はこの時と非常に似ているとする研究者もいます。一昨年に起きた鳥取中部地震が、南海トラフ巨大地震の前兆現象だという見方です。確かに、100年に一度のペースで発生するとされる南海トラフでの地震は、その発生前に、いずれも西日本の内陸で大きな地震が頻発しているのです」(同)

 南海トラフを震源とする巨大地震の中でも、887年に起きた仁和地震は、記録に残る中でもトップクラスの規模だったとされる(中央構造線沿いの巨大地震だったという説もあり)。その18年前には、東日本大震災がその再来とも言われた、三陸沖が震源の貞観地震(M8.3以上)が発生している。この過去の流れを見ても、南海トラフ巨大地震がいつ起きても不思議ではないことが分かる。
 防災ジャーナリストの渡辺実氏はこう言う。
 「現代は天地動乱が続いた9世紀後半とそっくりです。貞観地震は東日本大震災そのものだし、富士山が噴火し、南海トラフや関東でも地震が起こった(相模・武蔵地震)。古文書を紐解けば、当時の地獄絵図のエピソードがこれでもかというほど出てきます。今の東京も、いつ直下型の地震に襲われても不思議ではない状況で、南海トラフ地震も再来襲の時期の中に入っていることは間違いない」

 東日本大震災が巨大地震の連鎖の始まりになる可能性があることを、忘れてはならない。