自分の気持ちに正直であり続けた4年間。小野賢章、ソロデビューからの軌跡。
変化を受け入れる人と、変化を拒む人がいる。小野賢章は前者だ。『FANTASTIC TUNE』でアーティストデビューを果たしてからちょうど4年後の2018年2月26日、1stフルアルバム『Take the TOP』がリリースされる。「変化しないと自分も飽きちゃうし、ファンの人にもそんな姿は見せたくないから」。自分の“今”の気持ちに正面から向き合い続け、その結果、4年前に思い描いていた場所とは違うところにいる。だが、彼は4年前と変わらず、いや確実に輝きを増している。人は、変化を受け入れることで前に進むのだ――彼が最前線で活躍する姿を見て、強くそう思う。
撮影/西村 康 取材・文/野口理香子スタイリスト/DAN ヘアメイク/齋藤将志
衣装協力/カーディガン ¥17,800(rehacer / ADONASUT MUSEUM tel.03-5428-2458)
リング ¥25,000(M・A・R・S tel.03-3462-8187)
自分名義の歌と、キャラソンとの狭間で悩んでいた時期
- 『FANTASTIC TUNE』の発売が2014年2月26日なので、ちょうど4年後に1stフルアルバム『Take the TOP』が発売になるということで……偶然ですか?
- あははは、偶然じゃないです。
- そうですよね(笑)。デビューからここまでの時間をどう振り返りますか?
- あっという間だったなという気がしますね。
- 端的に言って、楽しい4年間でしたか?
- 楽しかったですね。楽しかったですけど、いろいろ試行錯誤もして……いろんなことがあった4年間だった気がします。
- 試行錯誤というのは?
- どういう音楽をやりたいのかということは、ずっと考えていたので。『FANTASTIC TUNE』のときの取材では、「俺は今後ロックでいきます」って言ってたと思うんですよ。実際、あのときはロックをすごく聴いていましたし。
- ロック以外の音楽にも興味を持ったり、挑戦したいと思うようにもなった。
- そうですね。自分が“今”興味がある音楽を大事にしてきたし、自分の“今”の気持ちに正直にあり続けた、そういう4年間だったと思います。
- 音楽活動がご自身にとってプラスになったと思うところはありますか?
- 歌に対する姿勢みたいなところは変わったんじゃないかと。“小野賢章”としてCDを出すことになって、最初の頃はキャラソンと変えなくちゃ、みたいに考えていたんですよね。
- キャラソンをたくさん歌われてきた声優さんが、自分名義だとどう歌えばいいのか戸惑ったり悩んだりするという話はよく聞きます。
- でも最近はそういうことも考えず、自分の気持ちの赴くままに歌うようになりました。考え方が気楽になったのかなと思います。
- デビュー2年目の頃のインタビューで「僕の歌で少しでも前向きな気持ちになってもらえたらうれしい」とおっしゃっていました。その気持ちは今も同じですか?
- いいこと言ってますね(笑)。その気持ちは変わってないし、より強くなっていますね。
冬の海は寒すぎて……『Take the TOP』MV撮影ウラ話
- リード曲『Take the TOP』のMV、拝見しました。撮影は12月の頭、早朝に渋谷のスクランブル交差点にて撮影後、伊豆に移動し、海での撮影に臨まれたとか。
- そうです。広いところで撮りたいっていうのと、日の出を狙って海に行ったんですけど、結局、雲に隠れちゃって。出る瞬間は撮れなかったんですよね。
- 海辺での撮影、いかがでしたか?
- 冬の海はとんでもなく寒かったです。早朝だったし、風が強くて。
- 撮影に同行したスタッフさんも「あの寒さの中、笑顔で歌えるなんてスゴい」とおっしゃっていますけど、MVの小野さんからは、そんな寒さは感じなかったですよ。
- そうですか? よかった……。
- 『Take the TOP』というタイトルは、どういう意味なんでしょう?
- 自分の限界を突破して、もっと上にいく。ここまでやってきたけど、ここからまた上を目指してやっていこうという気持ちをこめました。
- MVの公開直後のファンの方の感想を追っていると、男性からのコメントも多くて。小野さんのビジュアルと声ですから、女性ファンが多いのはもちろんのことですが、同性から支持されるのはやっぱりうれしい?
- うれしいです。自分の性格的にも、ありがたいですね。異性にモテたいっていうよりは、同性から「あいつ面白いよね」って言われたい人間なんです。
「恥ずかしかった」ラブソングの作詞に初挑戦
- 今回は、作詞に初挑戦。『to you』というタイトルのバラードですが、以前のインタビューで作詞について「ラブソングとか恥ずかしくて絶対にできない」と。
- 言ってましたよね(笑)。ずっと(作詞を挑戦してみたらと)言われ続けていて、まぁまぁってかわしてきていたんですけど。4年目に突入して、年齢も20代後半になるので、そろそろいいかなっていうのが自分の中であって。やってみないと始まらないですしね。
- いつ頃に書いたんですか?
- ど年末に。年内までに書いてねって言われていたんですが、なかなか手をつけられず。結局、ど年末に書きました。飛行機の中で(笑)。
- えーっ! それは歌詞が急に降りてきて……?
- いや、ずっと考えてはいたんですよ。思い浮かんだ言葉とかをメモに書き留めていたので、そこからヒントを得て……ばーっと手書きで。その荒削りな状態のものを提出した後に、スタッフの方と話し合いながら足し算引き算して、完成を目指した感じです。
- 曲が最初にあったんですか?
- そうです。曲調的にもバラードだよねって。自分的には、やっぱり恥ずかしい気持ちがあるし、自分の恋愛観とか過去の恋愛みたいなのを書くと、ファンの方にはそれが実際に僕の恋愛かどうかはわからなくても、自分ではわかるから。「これは自分の過去の恋愛なんだよなー」って思うのがイヤだったんですよ(笑)。それでイチからストーリーを作ろうと。
- 小説を書くように。
- こういう男の人がいて、支えてくれる女の人がいて、みたいな。想像しながら書きました。
- 挑戦されてみて、どうでしたか?
- とっっても恥ずかしかったです。でも書き始めたらわりと、ばーっと書けましたね。
- 自分で書いた歌を歌うというのは、また特別な体験ですよね。レコーディングはどうでした?
- 迷子になりましたね。どう歌えばいいのか、どこが正解かわからなくなって。プロデューサーの「いいよ」という言葉を信じて歌いました。
- また作詞に挑戦したいという気持ちは?
- あります。バラード以外でも、たとえば自分が演じている役のキャラソンとかも書いてみたら面白そうだなって。
- もともと書くのは苦手だとおっしゃっていたような。
- はい、好きじゃないです(笑)。ブログとかも書けなくて。
- 自分の気持ちを言葉にして伝えるっていうのが苦手?
- 苦手というか……多くは語らず、です(笑)。