突然で恐縮だが、サラダ用ドレッシングの充実っぷりはスゴイと思う。
和風、中華、イタリアン、フレンチ、ごま、サウザンアイランド、シーザー、青じそ、オニオン……。スーパーでよく見かける味を書き出しただけでもこんなにある。しかも、最近ではチョレギ風味やタイ風味、パクチードレッシングまで登場してきて、まだまだその種類は増えていきそうだ。

ところで、ドレッシングの定番の味として多くのメーカーから発売されている「イタリアンドレッシング」。ランチセットについてくるサラダや、居酒屋のサラダなどにもよくかかっているため馴染み深い人も多いと思うが、実はあれ、イタリアには存在しないってご存知だろうか。

筆者もイタリアに来る前までは、あれがイタリアのサラダの定番の味なんだと思っていたら、実際にはレストランなどでもあのドレッシングがかかっているのを見たことがない。ええー、なんでだ?

一応、イタリア人の友人に聞いてみた。

私「イタリア人って、イタリアンドレッシング使わないの?」
友人「なにそれ? 聞いたことない」

3秒で撃沈した。

そもそも「イタリアンドレッシング」ってなんだ?


そもそもイタリアンドレッシングって何なのだろうか。イタリアには存在しないのに、どうして「イタリアン」なんて名前がついているのだろうか。

調べてみると、イタリアンドレッシングは油と酢、塩などをベースとして、オレガノやフェンネルなどのハーブ、ピーマンや玉ねぎなどの野菜を加えて作るドレッシングのこと。
もともとは1941年にアメリカに住むイタリア系移民が考案したもので、レストランでサラダにかけて提供したのがはじまりということだ。その後、このレストランを経営する一家は別の実業家と協力してドレッシングを製造、販売したところあっという間に人気になり、現在のように多くの国で愛される存在になったのだとか。

自国の料理が海を渡り、海外でその国の好みに合うようにアレンジされるのはよく聞く話だが、イタリアンドレッシングもそんな料理(調味料?)のひとつということだろうか。少し奇妙な話だが、それならイタリアに存在していないのに「イタリアン」と名付けられていることも腑に落ちる。

「なんとなくイタリアっぽい材料で作ってみた」だけのドレッシングだと思っていたことを正直に告白したい。すんません。

イタリアではサラダには何をかけて食べる?


ところで、イタリアではサラダに一体なにをかけて食べているのだろうか。

実を言うとイタリアでは、そもそも市販のドレッシング自体があまり一般的な存在ではない。イタリア人の家庭に食事に招かれてサラダが出てきても、ドレッシングが出てくることはまずなく、スーパーなどでもあまり見かけない。
この記事を書くにあたり一応スーパーをのぞいてみたが、マヨネーズなどの調味料系の店の片隅に1種類あっただけだった(ちなみにヨーグルト味)。



代わりによく使われるのがオリーブオイルと塩、バルサミコ酢(もしくはワインビネガー)だ。家庭でもレストランでも、サラダはだいたい味付けをしない状態で提供され、自分の好みで調味料を適当に合わせて味付けしてしまう。中には酢や塩を使わずオイルだけをかける人もいるし、酢の代わりにレモンを絞る人もいる。
ドレッシングとどちらを好むかは人それぞれだが、これはこれでよりさっぱりとした味付けになり美味しい。

というわけで、イタリアにはイタリアンドレッシングは存在しない。もしサラダにイタリアンドレッシングをかけて「イタリアの味」とか言っている人がいたら、「それイタリア移民の味だよ」と教えてあげてください。こちらからは以上です。

(鈴木圭)