テリー 坂上さんは、これだけ多忙なのに、キッズアクターズスクール「アヴァンセ」を開校して、子役の育成もしているんですね。

坂上 はい、もうまる8年になります。今は3歳から中学生以下の子供まで180人ぐらいの生徒がいて。

テリー すごいね。今の子って、どんな印象ですか?

坂上 芝居に限って言えば、僕らの頃と比べても器用だし、すごく上手ですよね。技術的には全然言うことがないです。ただ、失敗したがらない子が多い気がしますね。「レッスンなんだからトチってもいい」と何度言っても、少し長めのセリフを与えるとトチらないことに重きを置いてしまう。

テリー 正確さのほうを優先しちゃうんだ。

坂上 そういう子は、やっぱりオーディションで弱いんですよ。オーディションの選考なんて、結局、インスピレーションみたいなもんじゃないですか。もちろん、最低限の技術は必要ですけど、「ああ、この子だ」と心に引っ掛かってくるのは、その子だけが持っているものだから。それを伝えるのは大変ですね。

テリー そういう傾向って、親の影響もあるのかな?

坂上 かもしれないですね。僕、親御さんと3カ月に一度、対面で現状報告をしているんですけど、親としてちゃんと見られたいというか、「私、ちゃんとやれていますよね?」とアピールしているお母さんがけっこう多いような気がします。

テリー そうなんですか。

坂上 うちの母の年代って、もうちょっと子育てに関しては、いいかげんだったじゃないですか。「よくわからないけど、とりあえずちゃんと育っているみたいだし、ま、いいか」みたいな(笑)。そういう意味では、昔よりも窮屈になった感じはしますね。

テリー みんなプロの俳優を目指しているんですか?

坂上 いえ、コミュニケーション能力を高めるために通っている子もいます。僕も、そもそも自閉症気味だったもので、親に劇団に入れられたんですよ。

テリー 子供と過ごす時間っていうのは、楽しいんじゃないですか。

坂上 ええ。でも、疲れ方は他の仕事とは比較にならないですね。

テリー だろうね。教育する立場だから、責任も大きいし。

坂上 年齢にかかわらず、人と真剣に向き合うことは怖いです。体力、気力などいろいろと吸い取られますけど、その一方で得られるものもありますから。

テリー どんなものが、もらえるんですか。

坂上 うーん、何て言えばいいんですかね‥‥。「自分が失ったものを取り戻せる」なんてことは言えないんですけど「失ったものが明確になる」って感じでしょうか。「あ、こんな感覚、俺なくなっちゃったな」みたいな感じ。でも、その意識が持てるだけでも、全然違うような気が勝手にしているんです。

テリー いやあ、坂上さん、ちゃんとしてるよ。最後に、今後の展望を聞かせてもらえますか。

坂上 この世界の仕事は、自分だけであれこれ決められないじゃないですか。今の状況がいつまで続くかわかりませんが、これまで出会ってきた「おもしろいものを作りたい」という人と、できるかぎりのことはやっていきたいと思います。そして、やっぱり最終的には芝居作りに戻りたいですね。

テリー すてきな目標だなァ。坂上さんみたいな生き方に憧れちゃうよ。

坂上 いえいえ、僕こそテリーさんの生き方に憧れているんですから。とてもマネなんてできません。

◆テリーからひと言

 下ネタから真面目な仕事の話まで幅広く、実にバランスの取れた人だね。忙しいと思うけど健康には気をつけて。夜のほうも頑張ってよ!