いま地方で求められているのは「仕事を自ら創れる人」です。仕事を創るためには顧客を知らなければいけません。地元の地域資源を活用した商品を都市部に販売するビジネス(=外需型のビジネス)が生まれると地域の経済はとても潤います。

 僕が生活する宮崎県日南市の場合、外需型のビジネスでの雇用が1人分できると3人の地元を顧客にしたビジネスの雇用が生まれます。それは都市部から入ってきたお金が地域内で循環するためです。

 例えば地元の芋焼酎を東京に売ることで、仕入れ先の芋農家が潤い、芋農家が仕入れている肥料業者が潤い…と地域内で経済が繋がっているからです。

 東京で働くことで得られる最大の経験は、大企業に所属して狭く深い専門スキルを得られることではありません。地方で必要とされているのはそういった細分化された専門スキルではなく、世界最大の東京圏マーケットでどういうモノ、コトが評価されるのか、を体感値で知っていることです。

 東京に住み、消費活動をする中で、あなたに対してあの手この手で消費させようとする商品・サービスに簡単に触れてきた経験値がものすごい価値なのです。

 その経験値が地元の商品を東京圏のマーケットで売るための仮説をたてる力につながります。外需向けの事業を行う10人の企業ができれば、地域に30人の雇用が生まれることになります。

 地域で求められるのは縮小する地域内マーケットでパイの奪い合いをすることではなく、外需を取り込む事業をつくることです。そういったスキルや感覚値を持っている人たちは地方に移住したり、Uターンで戻っても多くの仕事が舞い込んでくる可能性があるわけです。
(文=田鹿倫基・日南市マーケティング専門官)