夕暮れにたたずむ水溜りボンドが撮りたい! と今回、熟慮の末に選ばれた撮影場所は多摩川の河川敷。まったくの偶然なのだが、ここは、カンタとトミーにとって原点とも言える場所だという。2015年1月1日よりYouTuberとして活動をはじめる際、最初の作品群を撮影したのが多摩川河川敷だった。いまやフォロワー数240万人の人気YouTuberとなった水溜りボンドに“はじまりの場所”で行く年、来る年を語ってもらったのだが、右肩上がりの彼らにも意外な悩みが…?

撮影/平岩 享 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
ヘアメイク/門口明加

水溜りボンドらしい動画を評価してもらうために

今回、写真撮影のためにわざわざ、都心から離れた多摩川の河川敷までお越しいただいたんですが…。
トミー いや、すごい偶然なんですけど、まさかの多摩川の河川敷でね。
カンタ 僕らは、2015年から投稿を開始したんですけど、2014年の年末にあらかじめいくつかの作品を撮りだめして、準備をしてたんです。
トミー その撮影をしたのが、まさに多摩川の河川敷で。練習も兼ねていろんなことをしたんですけど…。
カンタ 年末の寒い時期にね(笑)。
それから約3年で、水溜りボンドは240万人のチャンネル登録者という、押しも押されもせぬ人気YouTuberになりました。今年4月のインタビューでは、ここまでの軌跡をお話いただきましたが、今回はこの1年、そして2018年についてうかがいます。まず今年1月の時点で、登録者数は…。
カンタ 110万から120万人ですかね?
つまり、1年間でほぼ倍増したわけですね!
カンタ ふたりとも感じていたのは、今年の最初の時点でも、ある程度の再生数はあって、“水溜りボンド”という名前もそこそこ知っていただいてはいるけど、まだまだ僕ら自身については知らないという人が多いんじゃないかということで。
カンタさんとトミーさん個人の知名度がまだまだ低いと?
カンタ たとえば、iPhoneに関する都市伝説を試してみるふたりという形で知られていたかもしれないし、面白い情報を持ってきて紹介するって役割はあったかもしれない。でも、それは必ずしも僕らじゃないとできないわけじゃない。僕らがやる意味、必要性は何だ? って考えて、今年に入ってとくに、僕らがやるからこそという企画を考えるようになりました。
▲カンタ
▲トミー
トミー わかりやすく言うと、タイトルに僕らの名前が入った。「トミーが…」とか。最近だと、ホームラン企画とかもそうですね。
カンタ 最初の頃は、動画時間もなるべく短くタイトにしてて、タイトルに書かれたことをやるだけ。だって僕らが楽しそうにワイワイ雑談していても、iPhoneの裏技を知るためにたまたま、僕らのチャンネルに来た人にとっては邪魔ですから。
それを少しずつ変えていった?
カンタ 僕らが話してる部分を盛り込むようにもして。そのぶん動画の尺は長くなったけど、それでも満足してもらえるようにテロップを増やして工夫しながら、そっちの方向に軸を振り切った部分はありますね。目先の再生数は若干減ったけど、結果的にいい方向に…。
話の途中ですみません(笑)。インタビューを読まれる方にわかりやすく状況を説明しますと、いま、喫茶店でお話をうかがっているんですが、トミーさんの注文した飲みものがやっと来まして…。
カンタ 「クリームソーダ」ってちゃんと書いてくださいね(笑)。
トミー いや、マジでクリームソーダが楽しみすぎて、これまであんまり話に身が入ってなかったです(笑)。というか、メロンソーダにアイスを乗せるだけなのに、なんでまだ来ないんだろうってずっとソワソワして、あっち(厨房)のほうを見てたので…。
カンタ すみません、話を戻すと(笑)、僕らがやることの意味をちゃんと動画に載せたかったし、最近はトークライブでも、僕らのトークそのものを見に来てくれて「いいな」と満足してくださるファンも増えて、そこは大きく変わってきた部分だなと。

再生時間が長いものでも、見てもらえるようになった

やはり最初から脱線トークばかりというわけにもいかなかったでしょうし、少しずつトーク部分を増やしながら、この変化は地道にファンを獲得して、知名度を上げてきた成果ですね。
カンタ 最初からそれをやっても、誰が俺らの卒アル写真に興味があるんだって話ですからね(笑)。いまとなれば、卒アルの動画もかなりの再生数がありますけど。逆に昔の動画も、いまの僕らのキャラクターを知ってもらったうえで見てもらえたら、より楽しめると思います。
トミー というか、脱線トーク自体は昔からしてたんですよ。そこは編集で切られる前提で。アップされないことを理解したうえで、でもその部分をなくしたら、海外の動画でよくある、手元だけのアップで実験を見せたりするチャンネルになっちゃう。やっぱり、それ以外の幅を広げていかないといけないって思いもあったんです。
表に出すかどうかは別として、水溜りボンドのあるべきスタイルとして、以前からあった部分なんですね。
トミー その部分をだんだん増やしていって、いまではふたりが面白いと思う部分を中心に使う状況になりました。それは純粋にうれしいですね。ある意味で僕らの力が試されている時期でもあるし、再生数や登録者数の伸びで言うと我慢の時期でありつつも、やっている人間としては充実感も強くなってます。
大学のお笑いサークルで出会い、活動してきたというルーツもありますしね。
トミー あとは少し前から、サブチャンネルを毎日投稿するようになったのも大きいですね。サブは、完全に僕らのトーク、キャラが好きで見に来てくださる方が多いので、出したいものを出せるんです。
「我慢の時期」とはおっしゃいますが、1年で登録者数が110万人から240万人というのはかなりハイペースだと思います。
トミー いま思うと100万人に到達するまでよりも、100万から200万までのほうが大変でした。でも努力も大きかったし、達成感もすごくありましたね。
動画の長さに関しても、長い作品を見てもらうのがなかなか難しい時代に、1時間にもおよぶ作品を投稿するってリスキーな挑戦でもあったかと。
カンタ もちろん、視聴者への見やすさは考えながら編集もしていますが、長くなるものはどうしても長くなるんですよね。
トミー 生配信で30分、1時間とやることもあるけど、わりと安定して見てもらえるようになったし、それは100万人台の頃といまとで大きく変わった部分ですね。タイトルがそんなに強烈じゃなくても、僕らを見に来てもらえるようになってる。
カンタ やはり編集なしで、僕らのしゃべりで視聴者をくぎづけにするっていうのが理想なので、その変化はうれしいですね。
カンタさん、トミーさんという個人に対するファンが、きちんとついてきている状況ですね。
カンタ それこそ今年、地方を回ったんですけど、いままで一度も行ったことのない香川でもたくさんの人が集まってくださって。香川で道を歩いていても気づかれたりして。そうやって見てもらえるようになったんだなって改めて感じましたね。

「無人島のカメ」に「血のりシャンプー」1年の動画を振り返る

今年1年のなかでもっとも印象的だったことや、一番心に残っている作品について教えていただけますか?
カンタ やっぱりドッキリ企画が大きいよね?
トミー ドッキリだね。家が変わったことで、カメラの台数が増えて、GoPro(※小型のカメラ)もあるし。
カンタ 昔はね、カメラ1台で撮ってたけど。
トミー 部屋も1Kだったから。カメラが回ってると違和感が半端なかった! いまは一軒家になって、カメラが増えて、サブチャンネルもあるから、家で普段からカメラが回ってても不思議じゃないので、そういう意味でドッキリを仕掛けやすくなったのは大きいね。
カンタ ドッキリにもそれぞれの個性が出てくるんですよ。さっきの話じゃないけど、個々の存在を知ってもらっているうえで、視聴者も見ながら「こいつ、こうしそうだな」とか楽しんでもらえるようになったし。
トミー ネタで言うと、何が一番印象に残ってる? ドッキリで。
カンタ えー、何かなぁ…?
トミー いや、そこで「鳥取砂丘」って言わないなら、ああいうことはやっちゃダメよ(笑)。
「鳥取砂丘でかくれんぼ中にガチで東京に帰ってみた」ですね?(笑)
カンタ あぁ、あれかぁ。あれはちょっと違うんだよな…。
トミー 違うの? あれ違うならやっちゃダメでしょ(笑)。あれな、ひとりだからマジでわけがわからなくなるんだよ。鳥取砂丘。空間がいつもと違いすぎて、ホントにひとりで取り残された感が半端ないしな(笑)。
カンタ その前に鬼ごっこをしたけど、あの時点ですでに寂しかったもん。砂丘に行くまではワクワクしてたけど、いざ砂丘に着いてカメラを回し始めたら「なんで鳥取砂丘で鬼ごっこをしてるんだろう…?」って(笑)。
トミーさんのもっとも印象深い作品は?
トミー 俺は血のりシャンプーですかね?
「シャンプー中に血のり垂らしたらとんでもないパニックになったwww」ですね。
カンタ あれは恥ずかしかったね、自分が(笑)。(シャンプー中に血のりを流されると)ああなるんだ! って。
トミー 「臭いスプレー」もよかったね。やったら面白くなるだろうって感じがありました。
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