彼らには、時間がない。E−1選手権からロシアW杯を目ざす選手たちである。
 
 基本的に国内組のみでチームが編成される今大会では、『東アジアカップ』と呼ばれていた13年大会が印象深い。国際Aマッチ出場歴のなかった森重真人、山口蛍、青山敏弘、大迫勇也、柿谷曜一朗、斎藤学がデビューを飾り、彼らは14年のブラジルW杯でメンバー入りを果たす。W杯前年のE−1選手権が注目を集める理由だが、4年前と今回では状況が根本的に違う。

 13年大会は7月に開催された。ブラジルW杯までは、約1年の猶予が残されていた。13年後半だけでも8月と9月にキリンチャレンジカップが合計3試合あり、10月、11月の欧州遠征でさらに4試合を消化した。当時のアルベルト・ザッケローニ監督には、東アジアカップで気になった選手をテストする機会がこれだけあったのである。

 大会名が『E−1選手権』に変わった今回は、W杯前年の師走に開催されている。ロシアW杯の開幕は約半年後に迫っており、ここから先のテストマッチは来年3月の2試合しかない。W杯直前にも出場国はテストマッチを組むが、この時点ではすでにメンバーが固まっている。

 来年3月のテストマッチは重要だ。グループリーグで対戦するポーランド、コロンビア、セネガルのいずれかを想定した国と、このタイミングで戦っておきたい。もっと言えば、11月は招集を見送った本田圭佑、岡崎慎司、香川真司らをチェックする機会にもなる。彼らをW杯の戦力と見込むなら、ここで呼ばないはずはない。

 これからプラスアルファの戦力をテストする余地は、意外なほど少ないのである。言い方を変えれば、今回のE−1選手権に出場している選手は、限られた時間でインパクトを残すべき立場にあるのだ。

 12月9日に行なわれた北朝鮮戦では、GK中村航輔がアピールに成功した。そもそも攻め込まれなければ見せ場が訪れないポジションで、彼の活躍はチームにとって好ましくないわけだが、いずれにせよ、この22歳は国際Aマッチデビュー戦で鮮明なる解答を示した。

 W杯では経験が価値を持つ。2大会連続でゴールマウスに立ってきた川島永嗣の存在は、それだけに大きいものがある。中村がファーストチョイスになるのは難しいが、第2GK以降の序列を変えていく可能性はある。

 試合後のハリルホジッチ監督は、中村とともに伊東も評価した。右サイドからの積極的な仕掛けは、短い時間でもはっきりと読み取ることができた。

 問題はポジションである。右サイドは久保裕也と浅野拓磨が争っており、3番手は本田だ。序列を切り崩すのがもっとも難しいポジションと言っていい。他の選手より大きなインパクトを残さなければ、伊東は競争に加われない立場なのだ。

 むしろ注目すべきは、センターバックだろう。吉田麻也を軸に人選が進められ、ここにきて槙野智章が有力なパートナーに浮上している。ただ、吉田と槙野で最終ライン中央が固まったわけではなく、3人目が誰なのかも不透明だ。

 アジア最終予選の終盤に起用された昌子源は、北朝鮮戦でゲームキャプテンに指名された。現状では彼が槙野とスタメンを争っているが、9日のパフォーマンスは周囲を納得させるものではなかった。

 CBの序列に影響を与える選手が、今大会で現われるのか。それこそは喫緊の課題である。