社会人の2人に1人が転職している時代。総務省の労働力調査でも2016年の転職者数は306万人。7年ぶりに300万人台の大台に上がったとニュースになり、これからも転職人口は増加予測。

そこで、本連載では、いい転職をした女性と、悪い転職をした女性にお話を伺い、その差は何かを語っていただきました。

滝川美奈子さん(仮名・35歳・東京都出身)

転職回数……1回(総合商社→派遣社員)
転職した年齢……30歳
年収の変化……350万円、400万円
学歴……名門大学経済学部卒業

事務職には、名刺すら支給されないという会社の文化

私の大学って、総合職志望の人が多いイメージがあるんですよ。海外に行って、事業開拓して、リーダーになって……みたいな感じ。でも私はその真逆で、東京の実家から離れたくないし、転勤もしたくない。華やかな世界には憧れるけれど、地味な職場で長く働きたいと思って、大企業の一般職1本に絞って就職活動をしました。

母校のネームバリューとOBのコネで総合商社に合格しました。初出社の日、驚いたのは総合職には名刺が渡されたのに、一般職にはナシ。会社のメールアドレスも総合職は自分の名前が入っているものなのに、一般職は数字とアルファベットを組み合わせた記号だけ。「あなたはこれから一生、会社の中でしか仕事をしないんですよ」という烙印を押された気分になりました。

入社3年目にして派遣スタッフが激増、彼女たちのほうが給料が高い!

25歳のときに、一般職採用数が激減して、派遣スタッフが激増。同じ年の派遣の女の子と仲良くなって、ランチを一緒にするようになったんです。彼女も名門大学出身で、都内の実家住まいだったから、環境が似ていたんですよね。正社員就職ができず、派遣として働いていると言っていました

でも、海外旅行に行ったり、スキーに行ったり、1000円のランチを食べたりして、お財布の中身を気にしていない感じが伝わってくるんです。当時の私の手取りは17万円ですからね。実家に住んでいましたが、何かを埋めるように「自分磨き」にお金をかけていたので、彼女のようにハイブランドの時計も、中古ですら手が届かなかった。

で、失礼だとは思いながらも、給料を聞いたら手取りで28万円だったんです。派遣社員って給料が高いんだと驚きました。派遣になりたいことを伝えると、「正社員には社会保険や福利厚生などのメリットがあるし、社会的信用だってあるんだから、辞めちゃだめだよ」と言ってくれたんですけどね。

総合職と同じような仕事をしているのに、給料格差は大きかった……

総合職女子と同じような仕事をしているのに、給料は2/3

それまで、他人の給料はあまり気にしていなかったのですが、総合職の同期入社の女子はいくらもらっているのかと聞いてみたら、手取りで25万円だったんですよ。同じように資料作成やデータ入力、電話取りなどをしているのに、私よりも給料が高い。

さらには、総合職の女子は、私が席にいるときは電話が鳴っていても出ないんです。“電話取りは一般職の仕事”とばかりに、コール音を無視する。どんなに私が忙しくても、電話に出てくれないのでムカついてましたね。だって、私よりも年下の後輩ですよ。特に仕事をしていないボーっとした男子が、電話をとらない。電話をとるって、周囲の人がどんな取引先と仕事をしているのかを把握するいいチャンスだと思うんですけれど、それをしないでメールばかりしているんですよ。

さらに言うと、派遣スタッフにも腹が立っていて、ギリギリに仕事を頼まれると「できません」と断っているんです。そういう仕事が私達正社員の一般職に来て、サービス残業しながら仕上げることもありました。

どれだけ一生懸命仕事をしても、終電で帰ることがあっても、それが”当たり前”。なんかすごい理不尽だと思いながらも仕事をしていました。

どんなに忙しくても、電話をとるのは一般職女子の仕事と思われていた。それに、アラサーになっても「女の子」扱いされることもモヤモヤしていた。

毎年行なわれていた昇給がストップ、総合職への打診をされて、転職活動開始へ〜その2〜へ続きます