10日、日本代表は日産スタジアムでハイチ代表との親善試合を行い、3-3で引き分けた。この日の先発メンバーは6日のニュージーランド戦から9人を入れ替え、さらに交代出場枠が6人あったため、今回招集された24人すべてが出場できる可能性があった。

この試合の前までに、まだ代表のキャップを手にしていなかったのは、今回が初招集の車屋紳太郎、今年の6月から招集されている中村航輔、そして2014年12月からたびたび招集されている植田直通の3人だった。

2-1と日本がリードして迎えたハーフタイム、長友佑都に車屋が交代する。ところがその後、同点に追いつかれ逆転されると、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はボランチの遠藤航より前の選手ばかりを入れ替える。80分、乾貴士が武藤嘉紀に代わって交代枠はすべて消え、招集された21人のフィールドプレーヤーのうち、植田だけが出場できないことが確定した。

ハイチ戦の前日、植田はいつもに増して引き締まった顔でミックスゾーンに現れた。3年近く待ち望んだ出場機会が巡ってくるだろうという期待に胸を膨らませていたはずだ。

試合終了後、植田は足早にミックスゾーンを通り過ぎようとした。話を聞こうと寄っていくと「今日は何もありませんよ」と無表情に言う。だがファンのためだと言われて、自分の状況について語り始めた。

「先発じゃないのはわかっていたのですが、それでもチャンスはあるかと思っていたので」

「もちろん、出るつもりでした。まぁ、後半からかな、とは思っていたのですが、展開的にも負けている状況にもなったし、攻撃に枚数を増やすのは当たり前だと思っていました」

試合後、監督からは何の話も無かったそうだ。だが、それでも植田は納得しているように見えた。

「僕はやり続けるしかないと思うので。クラブでしっかり結果を出しながら。Jリーグも大事な時期に入ってきているし、しっかり結果を出し続けて、また呼ばれるようにね、やっていきたいと思います」

まだ22歳の若さながら常に冷静で、動揺することが少ない。今回の出来事も消化して乗り越えられたのだろうか。表情はいつもと変わらない。だが「ショックは?」と聞くと、いつもの植田のイメージとは違う答えが返ってきた。

「もちろんです」

植田はそう言うと、一瞬だけ悔しさを滲ませた。そして今度は表情を緩めて「がんばります」と言い残し、選手バスへと向かって行った。

【日本蹴球合同会社/森雅史】