第64味 インドネシア
ジョコ政権に求められる改革スピード

主要格付け会社がインドネシア債券を「投資適格」に格上げ

米国の格付け会社S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)が今年5月 19 日、インドネシアの長期債信用格付けを1段階引き上げ「BBBマイナス」にすることを発表しました。

同国の格上げについては、すでにフィッチが2011年に、ムーディーズが2012年に格上げを実施しており、これにより主要格付け会社3社がそろって債券を投資適格として認めたことになります。

インドネシア経済のGDP(国内総生産)成長率推移をたどると、2011年から2015年にかけて減速傾向にありましたが、2016年に入ってからは再加速する格好になっています。

同国の人口規模や年代別構成比率などから、経済成長と市場拡大の期待が大きいのですが、ほかの新興国と比べるとインドネシアの1人当たりGDPの伸びがやや出遅れています。

インドネシア経済が抱える最大の課題は、インフラ開発の遅れと、ビジネス環境の未整備です。慢性的な財政赤字状態のため、常に財源不足が続いてきたことも要因とされています。

そのため今回の格上げは、債券発行による資金調達などの面で追い風になると言えるでしょう。また、同国のジョコ・ウィドド政権による取り組みが評価された面もありそうです。

2014年 10 月に誕生したジョコ大統領ですが、就任直後に財政負担となっていた燃料などに対する補助金の大幅削減に着手し、インフラ関連予算の拡大に踏み切りました。

さらに、手続きの簡素化、ネガティブリスト(外資企業に対する参入規制)の改正、経済特区への投資減税などを盛り込んだ 14 本の経済政策パッケージを2015年9月から2016年末にかけて、矢継ぎ早に打ち出しています。ジョコ政権は2017年4月に任期(1期=5年)の折り返し地点を通過しましたが、依然として 60 %近い高い支持率を維持しています。

足元のインドネシア経済の復調は、こうしたジョコ政権の取り組みが功を奏し始めた段階といえそうです。

今後の課題は、このまま同国経済の加速を軌道に乗せ、外資を流入させることができるのか。そして、さらに経済を加速させて好循環を維持していくことができるのか。

一層の改革スピードが注目ポイントとなりそうです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田雅之

新光証券などを経て、2011年10月より現職。ネット証券隨一の中国マニアでテクニカルアナリスト。歴史も大好きで、お城巡りと古地図収集が趣味。