私たちの身近にあるコンビニの知られざる裏話を、業界の内情に詳しいライターの日比谷新太さんが紹介していく当シリーズ。前回の「コンビニ店員たちの神対応」に続いて、今回取り上げるのは「本部担当者(スーパーバイザー)たちの仕事」について。加盟店からの信頼を得るために、本部担当者たちが日々行っているという心配りの数々を、リアルに紹介しています。

デキる本部担当者の仕事ぶりとは

これまでは主に加盟店側にスポットを当ててきましたが、今回はチェーン本部の加盟店担当者、スーパーバイザー(SV)の仕事における一工夫を紹介したいと思います。

本部担当者といえば、なんだか偉そうにしているというイメージがありますが、実際にはそうではありません。というのもFC契約では、本部と加盟店は対等の立場となっているので、一方的に命令はできません。本部の施策を徹底させるためには、FC加盟店に「納得して」もらわないといけないのです。

そのため本部担当者は、何とか言うことを聞いてもらうために、加盟店主(大体は年上)たちのご機嫌を常に取らないといけないのです。

女性スタッフは下の名前で呼ぶ

商売において女性客を大切にするのは当たり前ですが、加盟店との良好な関係つくりにも女性は重要なキーマンです。ターゲットは加盟店主の奥さん、昼の主力の主婦パートさん、夕方の学生アルバイトたちです。

そんな彼女たちと親しくなるために、デキる本部担当者たちは苗字ではなく、下の名前で呼びかけることを心がけるそうです。「セクハラ?」と言われるとギリギリのラインなんですが、「○○さーん。おはよー」という軽い感じです。

誕生日には必ず一声を

本部担当者のなかには、担当する店舗の全女性スタッフの誕生日をすべて手帳にメモしている人もいました。

誕生日当日にシフトに入っている女性スタッフがいた場合は、絶好のチャンス到来です。店舗に入った瞬間に大声で「○○さん、ハッピーバースデー!」と挨拶&握手。そして、その場で店舗でその日売り込んでいる商品をすかさずレジに持っていき購入し、「はい。誕生日プレゼント」と手渡しするのです。これですと、店長も嫌な顔をしません(なかには、「仕事中なのに……」という反応になることもあるそうですが)。

さらに加盟店主の奥さんの誕生日となると、もう一工夫。「花束」持参でお店に行きます。また可能であれば部下を一人連れて行き、奥さんとシフトを交代。奥さんには着替えをしてもらい、ランチに連れていくのです。忙しいコンビニ店長の奥さんは、外食する機会がなかなかありませんので、非常に喜ばれるそうです。

店舗の飲み会・懇親会には積極参加

コンビニの店長・加盟店主との飲み会は、基本的に自粛ムードです。本部担当者は車で移動していることもありますし、会社からもあまりお勧めされないとのこと。

ただ、店舗が主催している飲み会・食事会・送別会・カラオケ大会・ボーリング大会には、極力参加します。まれに本部担当者がそういう場を企画することもあるそうです。

コンビニのスタッフは時間シフトで勤務しているので、全員が集まることがなかなかできません。そこでこのような機会をつくって、スタッフ間の一体感を醸成してくのです。そして本部担当者は、そのような和やかな場で、本部の考え方や今やってほしいことなどを話すことで、加盟店主らにすんなり納得してもらうわけです。

オフの日なんだけど……

古いタイプの加盟店主から信頼を得る有効な手段としては、本部担当者がオフの日に担当店を訪れるというものがあります。

具体的には「○○店長。明日、私休みです」と事前に伝えておきながら、休みの日に自家用車でお店を訪問。その時の店舗側の驚きと喜びは、いつもとは全く違うらしいのです。さらに、その際に家族(できれば子供)を連れて行くとパーフェクトで、本部担当者と店舗との距離感がグッと近づくそうです。

加盟店側とすれば、コンビニ経営という商売をやっていくなかで、家族に関する相談を本部担当者にする必要性が、どうしても出てきます(何と言っても24時間365時間営業ですから)。そこで普段から「本部担当者にも家族がいる」「休みの日なのにお店を気にしてくれる」ということをアピールしておけば、加盟店側は「こんなに心配してくれる人なら……」と信頼を寄せてくれるようになるのです。

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文/日比谷 新太(ひびや・あらた)

日本のコンビニエンスストア事情に詳しいライター。お仕事の依頼はコチラ→のメールまで: u2_gnr_1025@yahoo.co.jp

出典元:まぐまぐニュース!