山手線の新型車両E235系電車、駅ホームで列車の最後尾に注目していると、ある演出が行われます。しかも毎月変化するというその演出、どのような意図があるのでしょうか。
あるタイミングでイラストが現れる
2015年11月にデビューした山手線の新型車両E235系電車には、行先表示器にフルカラーLEDが採用されています。先頭と最後尾の行先表示器には、山手線の路線色であるウグイス色の帯に、「山手線」という路線名と、「新宿・池袋方面」といった行先が英語表記つきで交互に表示され、従来の主力車両であるE231系500番台の表示器よりも“表現力”がアップしています。
山手線のE235系。後端の行先表示器にアジサイのイラストが表示されている(2017年6月、恵 知仁撮影)。
じつはこれらの行先表示器は、イラストの表示も可能。営業運転時には、最後尾の表示器に12種類の花が月替わりで登場します。1月はツバキ、2月はウメ、3月はタンポポ、4月はサクラ、5月はアヤメ、6月はアジサイ、7月はアサガオ、8月はヒマワリ、9月はキク、10月はススキ、11月はイチョウとカエデ、12月はシクラメンです。
ただ、この花のイラストは常時表示されているのではなく、あるタイミングで切り替わるといいます。JR東日本に話を聞きました。
――花のイラストはどのようなときに表示されるのでしょうか。
駅で列車のドアが閉まり発車したのち、一定の速度に達するとイラストに切り替わります。ホーム上でも切り替わるのを見ることができます。
目的は「乗客との対話」
――イラストを表示する意図はどのようなものでしょうか?
E235系は、「人と対話する車両」という開発イメージから「お客さま、社会とコミュニケーションする車両」というキーワードに基づきデザインされ、前面の大きな窓や表示装置で「人と人、人と社会をつなぐ情報の窓」が表現されています。そのうえで、行先表示器にもお客さまと対話するコンテンツをつくる観点から、12の「月の花」を表示しています。
――イラストのデザインは誰が手掛けたのでしょうか?
車両デザインを担当した「KEN OKUYAMA DESIGN」がイラストのデザインも担当し、行先表示器のメーカーである三菱電機で調整したものを表示しています。
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駅を発車した電車を見送る人だけが見られる、このさりげない演出には、電車とその利用者をつなぐ役割がありました。
【画像】月ごとに変わる12のイラスト
花は1月のツバキから12月のシクラメンまで12種類。各デザインはそれぞれ3秒周期でパターンが変化する(画像:JR東日本)。