★コンテ・チェルシーが30勝で2年ぶり6度目制覇

▽イタリアの名将コンテを招聘したチェルシーが見事な逃げ切り勝ちを見せた。転機となったのは、昨年9月のアーセナル戦だ。この試合を0-3で落として直近4試合1勝1分け2敗となると、コンテは4バックから3バックに変更。これが見事にハマり、そこから盛り返した。11月後半にトップに躍り出ると、そこから一度も順位を落とさずに逃げ切り。30勝3分け5敗、得点85失点33は見事な数字で、プレミア最多勝利数となる記録付きで2年ぶり6度目のトップリーグ制覇を成し遂げた。ただ、今季は欧州カップ戦がなく、主力が疲弊することなくリーグ戦に集中できたという利点も。連覇に向けてはチャンピオンズリーグ(CL)との兼ね合いが鍵に。

▽スパーズもチェルシーと互角の内容だった。得失点だけ見れば、86得点26失点と共にリーグ最高の数字。26勝8分け4敗とチェルシーよりも敗戦は少ないものの、引き分けを勝ちにできなかった分だけ後塵を拝することになった。とはいえ、CLと並行しながらも最後までチェルシーに食らいついた戦いぶりは称賛に値する。

▽ユナイテッドとシティのマンチェスター勢、リバプール、アーセナルは、CL出場権争いにとどまった。シティは、GKハートに代わって加入したGKブラーボがプレミアに適応しきれず、守備陣の駒不足もあって取りこぼしが目立った。来季は、1月に加入しながらも公式戦11試合7得点5アシストと躍動したガブリエウ・ジェズスに期待がかかる。カバジェロ、サバレタ、サーニャ、クリシ、ヘスス・ナバスの退団に伴い、市場での動きも活発になるため、補強選手にも注目だ。

▽リバプールは、欧州カップ戦がなくリーグ戦に注力したものの、4位フィニッシュ。サデイオ・マネがアフリカネーションズカップで離脱した1月に3分け1敗と苦しみ、優勝争いから後退した。やはり運動量を求めるクロップのスタイルをプレミアリーグでシーズンを通して続けるのは難しく、選手の疲労がうかがえる場面が目立った。CLに戻る来シーズン(プレーオフあり)、どのように両立させていくのか注目だ。

▽アーセナルは、好スタートを切ったものの、1月終盤から3月にかけて失速。最終的に、リバプールと1ポイント差の5位に甘んじ、20シーズン連続となるCL出場は叶わなかった。プレミアでの巻き返しが至上命題となる来シーズンだが、木曜開催となるELも戦わなければならず、慣れない日程から簡単なシーズンにはならないだろう。ヴェンゲル、そしてエースのサンチェスの去就によって動きは大きく変わるはずだ。

▽ユナイテッドは、初年度のモウリーニョがチームを見定めることに時間がかかり、スロースタート。中盤から終盤にかけて盛り返したが、最終的にはCL争いからも脱落した。それでも、ヨーロッパリーグ制覇でCL権を確保し、EFLカップも制覇。引き続きの積極補強とチームを把握したモウリーニョ2年目となる来シーズンは、ビッグクラブの威厳を復活させる時となるかもしれない。

▽そのほか、EL権を獲得したのは、ユナイテッドがCLに回ったため、エバートンが獲得。降格チームは、ハル・シティ、ミドルズブラ、サンダーランドの3チームとなった。一方、昇格するのはチャンピオンシップで優勝した名門のニューカッスル、2位のブライトン、そしてプレーオフを勝ち抜いたハダース・フィールドとなっている。

【最優秀選手&監督】

★最優秀選手

◆MFエデン・アザール (チェルシー)
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▽最終優秀選手はアザールとした。PFAとFWA年間最優秀選手賞はカンテに譲ったものの、アザールも負けず劣らずのパフォーマンスを披露。優勝した一昨シーズンから昨シーズンに調子を落としたが、今シーズンは16ゴール5アシストと記録も残し、見事に復活した。コンテが託した2シャドーのセカンドストライカーとしての役割をまっとうし、優勝に大きく貢献した。

★最優秀監督

◆アントニオ・コンテ(チェルシー)
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▽昨シーズンからさらに完成度を上げたチームをつくったスパーズのポチェッティーノも捨てがたいが、ここもチェルシーからコンテを選出。前述したように、アーセナル戦からの3バックへの変更の決断力、CLはなかったもののチームマネジメントも見事で、その熱意から選手たちの人心掌握も抜群であることが見て取れた。適材適所の補強策も期待でき、来シーズンはCLと並行になるが、不安よりも期待が大きい。

【期待以上】

★チーム

◆トッテナム
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▽戦前から評価は昨シーズンに引き続き高かったものの、ここまでの強さを見せたのは多くの人にとって予想以上だろう。前述したとおり、得点数と失点数はリーグNO.1で、ポチェッティーノの手腕は見事だ。今季、ホームのホワイト・ハート・レーンでは17勝2分けと驚異の成績。来季は新スタジアム移転のためウェンブリーがホームになるが、今季のようなムードをつくるのは難しいと考えられる。その部分のマイナスをいかに最小限にとどめることができるかが、1960-61シーズン以来となる悲願の優勝へのポイントだ。

★選手

◆MFマルコス・アロンソ(チェルシー)
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▽今季のチェルシーにおけるキーマンの1人だったと言えるのではないか。特に3バック変更後、左ウイングバックとして躍動。堅実な守備と機を見た攻撃参加からのクロス、そしてリーグ戦6ゴールを挙げたように、得点力も発揮した。マルコス・アロンソの存在がなければ、コンテの3バックシステムは、ここまで安定した戦いぶりはできなかっただろう。手薄なポジションのため、同レベルのプレーができる選手を補強したいところだ。

【期待外れ】

★チーム

◆マンチェスター・ユナイテッド
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▽リーグ戦での戦いという点においては、ユナイテッドが期待はずれに終わった。守備はモウリーニョらしく一定の堅さを見せたが、攻撃面のオプションが物足りなく、ややイブラヒモビッチ頼みの戦いに。とはいえ、シーズン終盤にかけてはパフォーマンスを改善の傾向があり、モウリーニョが補強したバイリー、ムヒタリャン、ポグバ、イブラヒモビッチも結果を出した。さらなる補強により、来シーズンへの期待が膨らむ。

★選手

◆DFジョン・ストーンズ(マンチェスター・シティ)
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▽5000万ポンド(当時約66億円)とも伝えられた移籍金で大きな期待とともにエバートンからシティ入りしたストーンズだが、期待はずれに終わった。負傷もあり、リーグ戦の先発出場は23試合。シティが敗れた全6試合では、すべてストーンズが先発し、逆に不出場の試合は7勝3分けの負けなし。チームと自身のスタイルからリスクの大きい役割を任されているのはエクスキューズとはなるが、持ち味のビルドアップでもミスが多く、消化不良のシーズンとなった。

【ベストイレブン】

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GK

ダビド・デ・ヘア (マンチェスター・ユナイテッド)

▽ここ数シーズンの安定したゴールキーピングを今季も継続。セービング、一対一、クロス対応、足元の技術と、もはや穴がない世界最高峰のGKに成長した。レアル・マドリーへの移籍が取りざたされている中、ユナイテッドとしては何としてもキープしたい選手だ。

35試合(先発35)、3331分

29失点

DF

セサール・アスピリクエタ(チェルシー)

▽低迷した昨シーズンも及第点の出来だったアスピリクエタも、近年の安定した出来を今季も続けた。3バックのストッパーという慣れない役割ながらも、カバーリングや鋭い読みを生かした守備でフィジカル面のウィークポイントをほとんど露呈させなかった。

38試合(先発38)、3605分

1得点

ダビド・ルイス(チェルシー)

▽復帰に疑問を呈する声も出ていたD・ルイスだが、3バックの中央で見事に最終ラインを統率。悪癖のリスキーなプレーも今季はほとんどなく、出足の鋭さを生かした好カバーリングでバックラインを支えた。

33試合(先発33)、3106分

1得点

ヤン・ヴェルトンゲン(トッテナム)

▽パートナーであるアルデルヴァイレルトと共に、リーグ最少失点の堅守を支えた。また、時折見せる攻撃参加では、左足のキック精度を生かしたクロスやシュートなどで見せ場をつくった。

33試合(先発33)、3052分

0得点

マルコス・アロンソ (チェルシー)

▽期待以上の選手で選出したマルコス・アロンソをここでも選出。守備だけではなく、キック精度の高さなど攻撃能力もあるため、左ウイングバックが最適なポジションと言っていいだろう。

31試合(先発30)、2827分

6得点

MF

アレクシス・サンチェス(アーセナル)

▽エジルが好不調の波が目立った中、サンチェスは最後まで攻撃陣をけん引した。シーズン序盤はセンターフォワードとして、そして中盤以降は本来の左ウイングとしてプレー。24ゴール11アシストという記録は見事だ。

デレ・アリ(トッテナム)

▽中盤ならどのポジションもこなせるアリだが、今季はストライカーに近いトップ下の位置でプレー。21歳とは思えないゴール前の冷静さを見せ、決定力にも磨きがかかった若き怪物は、18ゴール9アシストという素晴らしい数字を残した。

37試合(先発35)、3176分

18得点

エンゴロ・カンテ (チェルシー)

▽昨季のレスターでの活躍ぶりをチェルシーでも披露。最終ライン前の防波堤としてボールを摘み取り、堅実につなぎ役を担った。チェルシー優勝の立役者の一人であることに疑いの余地はない。

35試合(先発35)、3305分

1得点

エデン・アザール(チェルシー)

▽最優秀選手のアザールは必然的にベスト11だ。絶好調時のドリブル、シュートまでの一連の動きは圧巻で、多くのファンを魅了した。

36試合(先発36)、3078分

16得点

FW

ジエゴ・コスタ (チェルシー)

▽混戦のFW陣からは、ジエゴ・コスタを選出。昨シーズンとは異なり不必要なアクションが減り、身体を張ったポストワークや囮の動きなど、20ゴールを挙げた得点だけでなくチームへの貢献度が高かった。

35試合(先発35)、3225分

20得点

ハリー・ケイン (トッテナム)

▽ラスト2試合で7ゴールと爆発力を示し、29得点でリーディングスコアラーに。シーズン序盤こそ疲れからかパフォーマンスを落としていたが、きっちりと上げてくるあたりはさすが。これで3シーズン連続20ゴール超え。23歳にして世界屈指のストライカーと言って差し支えないだろう。

30試合(先発29)、2615分

29得点