【あさイチ】(NHK)2017年4月24日放送
「正しく知りたい!がん検診」

今日、より簡単ながん検査の手法の研究が進んでいる。代表的なのが、だ液や尿、血液を使ったものだ。

中でも血液中のアミノ酸濃度を調べる「アミノインデックス検査」は、既に実用化されている。番組では、実際にこの検査を受けた女性を取り上げた。

試験管1本分の採血で7〜8種類のがん検査

アミノインデックス検査では胃、肺、大腸に加えて、早期発見が難しいと言われるすい臓がんも対象だ。加えて男性は前立腺、女性は乳がんや子宮がん、卵巣がんの可能性の有無も調べる。

結果はA〜Cの3段階で示され、C判定が出るとがんのリスクの可能性が高く、精密検査を勧められる。

倉澤早絵さん(33)は、父親を肝臓がんで亡くしており、がんが気になる。アミノインデックス検査を知り「簡単なら」と申し込んだ。費用は2万4000円と、自治体のがん検診と比べて高額だ。検査前の準備は特に必要ない。当日病院を訪れると検査内容が映像で説明された後、試験管1本分の採血が行われた。これで終了。受付から30分ほどで帰宅となった。

2週間後、結果が出た。胃がんのリスクについてC判定となり、精密検査を受けるよう促された。その後の検査で、幸いにも異常は見つからなかった。

アミノインデックス検査の仕組みを、三井記念病院総合健診センター特任顧問の山門實さんはこう説明する。

山門さん「がんになると、血液中のアミノ酸に変化が出るんです」

血中には20種類ほどのアミノ酸があり、バランスを保っている。ところが、がん細胞が現れるとアミノ酸の種類によっては増えたり減ったりして、バランスが崩れる。そこで、アミノ酸バランスの違いを統計的に解析して、がんのリスクを示す。ただC判定でも、精密検査で実際にがんと分かる割合は、100人中1人程度にとどまる。

山門さんが「まだ課題が多いのも事実」と指摘するように、新しい検査だ。国推奨のがん検診のように、検査を受けたことで「がんによる死亡リスクが下がるという検証結果」は現時点で出ていない。国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部部長・斎藤博さんは、将来への期待を示す一方で「まだ実力が分かる段階ではない」と述べた。

検診で100%がんを見つけられないけれど

一方で、アミノインデックス検査をきっかけにがん検診の受診率アップに成功したのが、鳥取県南部町だ。「がん征圧宣言」を出した2011年当時、国が推奨するがん検診の受診率は芳しくなく、最も高い大腸がん検診で35.9%にとどまっていた。

そこで町では、簡単に受けられるアミノインデックス検査に補助金を出し、町民は1000円だけの負担とした。すると多くの人が関心を持った。費用が安く、がんへの不安もあり、町民の5人に1人が検査を受けたのだ。

なぜ国推奨のがん検診を避ける人が多かったのか。町民に聞くと「怖かった」という答えが出てきた。検査でがんと宣告されたら受け止められる自信がない。でもアミノインデックス検査は「リスク」の有無を知るだけなので、気持ちの上で楽だという。C判定が出たら、きちんと精密検査を受けようと前向きな気持ちになれるというのだ。

だが、国推奨の検診も実際は「がんリスク」を示すだけだ。この点はどうやら誤解が生じていたのかもしれない。ゲストで元バレーボール女子全日本代表の益子直美さんも、こう話した。

益子さん「がん検診っていうと、ちょっとハードルが高くて。私もずっと逃げて逃げて...結果が怖いな、と」

南部町では、アミノインデックス検査の広がりとともにがん検診の受診率も軒並みアップ。2011年と15年を比べると、例えば肺がん検診の場合、27.4%から42.9%と大幅に上昇した。

がん検診については視聴者の関心も高く、番組に多くの投書が届いた。そのひとつは、肉親が毎年検診を受けて「異常なし」との結果だったにもかかわらず、検診の数か月後に末期がんと診断されて半年後に亡くなったとの内容だった。投書した人は「がん検診なんて意味がないですよね」と手厳しい。

国立がん研の斎藤さんは「検査でがんを100%見つけられる、(絶対に命を)助けられる、というものではありません」と説明。それでも、がんで死亡するリスクを下げることは実証されていると続けた。合わせて、検診で異常がなかったとしても、自分で「おかしい」と感じたら必ず医療機関で診察を受けるよう勧めた。