連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第23週「あいを継ぐもの」第130回 3月8日(水)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:新田新三


130話はこんな話


開発部長になった健太郎(古川雄輝)ははりきって、ライセンス事業をはじめようとする。

ご飯にするお風呂にする


さくら(井頭愛海)は、リスのキャラクター・サミーちゃんを開発。コンセプトは生まれた子供の最初のお友達だ。
このキャラ、君枝(土村芳)の絵柄ととても似ていて、彼女のつくったキャラを受け継いでいるという解釈で良いのだろうか。他社だったらパクリ疑惑ものだが、君枝は「可愛らしい」と喜んでいるから心広い。そういえば、君枝とさくらは絵を描くことで仲良かったから、嫁姑として、そういう部分で折り合っていけるはずなのに、そういう仲良さは全然出てこないのが少々残念。

スピードが大事


KADOSHOの古門(西岡徳馬)に、仕事には「スピードが大事」といわれた健太郎は、既存のキアリスらしさとは違うものを出そうとして、さくらと齟齬が生まれる。
本店に子供の遊べるスペースをつくりたいさくらと、それよりも売れる商品を置いたほうがいいという健太郎。

ライセンス事業


自社商品(キャラクターやロゴ)を他社で商品化することを許可し、その際、使用料を発生させる事業。
いまやすっかり定着したキャラクタービジネスである。
昭和48年夏、商店街で子供達が「変身!」とはしゃいでいた遊びの元は「仮面ライダー」であろう。昭和46年からはじまったヒーローもので、ライダーの変身ベルトなどの玩具や、コレクション性の高いライダーカードの入ったスナック菓子などが売れに売れた、キャラクタービジネスの成功例だ。

ライセンス事業の説明を聞いたすみれは「そんなお商売もあるの」と驚く。キアリスのモデルである会社ファミリアは、熊のファミちゃんリアちゃんというオリジナルキャラクターを開発した一方で、アメリカで誕生したスヌーピーの版権元と契約を結び日本国内での販売権を獲得。大阪万博の年にぬいぐるみ販売をはじめ、3年後には年間11万3000個も売り上げた。その後、衣料雑貨も商品化した。つまり版権料を支払う側でもあったわけだ。スヌーピー版権獲得のきっかけは、すみれのモデルである坂野惇子の長女・光子がアメリカ留学に行ったときスヌーピーに魅入られたから(株式会社ファミリア編「上品な上質 ファミリアの考えるものづくり」より)。
でもドラマでは、さくらは反対に「(自分のキャラクターを)勝手に使われるの?」とちょっと不服そうだ。

健太郎とすみれの対立に関して、前述の売り場の使い方のエピソードは、過去、すみれ(芳根京子)と大急が似た件で価値観の違いがあらわになったことがあった。
子供の気持ちを大事にするつくり手側とビジネス優先側の二項対立の構造が繰り返し描かれることで、物語全体が単調に思えることも否めない。すこし工夫が必要に思えるが、ただ、毎日熱心に見るのではなく、ごくたまに見るような視聴者にとっては気にならず、むしろメリハリがあると捉えられる可能性もある。どこにターゲットを絞るかの難しさを感じさせる部分である。
(木俣冬)