どっちでもいいですよ。練習中のポジションも実は1トップで、俺が自由に下がっていただけ。ずっと1トップでやってきたし、篠田(善之)監督も『自由にやっていい』と言ってくれているので、どこを任されてもチームのために全力でやるだけです。
 
――篠田監督の印象は?
 
 何事もはっきりと言ってくれます。厳しいこともバンバンと。なんかこう、『監督のために頑張ろう』という気持ちにさせてくれます。
――1月26日の大宮とのトレーニングマッチではPKで2試合連続ゴールを決めましたが、それ以上に中島 (翔哉)選手に大きな声で要求していた姿が印象的でした。
 
 翔哉はすごく良いものを持っているけれど、全部がこう(両手で視野を狭めるポーズ)だからもったいないなって。それは俺が伝えないと分からないと思うから、敢えて言いました。

 でも、これからですよ。まだ2試合しかやってないわけで、これからもっとたくさん意見交換してすり合わせていきたいし、翔哉に限らず若手には気付いたらアドバイスしないといけない。自分が若い頃、先輩から言われて気付いたことがたくさんあった。だからフロンターレでも(大島)僚太とかに言ってましたし。それはもう、自分がやらないといけないなって。
 
――ベテランの使命だと。
 
 そう。選手のためにね。それで、その選手が良くなれば、チームのためにもなりますから。そこは大事な部分だと思います。
 
――一方、石川(直宏)選手や前田(遼一)選手、徳永(悠平)選手など、10代の頃に一緒にプレーした選手たちと、こうして30代半ばで再会するのは感慨深さもあるのでは?
 
 ありますよ。まさかこの年齢になってまた同じチームでやることになるとはねえ。(沖縄県国頭村キャンプでは石川)ナオさんとは同部屋で、昔話ばかりしています。ユース代表時代のこととか。『あの時は、ああだったよね』とか、『アイツ、何してるんだろう』とか、そんな話ばっかり。楽しいですよね。みんな、全然変わらない。年だけ重ねちゃったけど、全然変わってない。
 
――2月25日に開幕を迎えますが、 キャンプで押さえておきたいテーマは?
 
 まずは攻撃の連係面ですよね。距離感は良いんですけど、どう崩すかはっきりしていない部分もあるので、そこはすり合わせていきたいですね。守備も、切り替えの速さは良いけど、行く時と遅らせる時の判断がなんとなく曖昧。遅らせるべきところは遅らせる、ゴール前でブロックを組むべき時はしっかり組む。その辺りをすり合わせていきたいですね。でも、まだまだこれからですよ。とにかく、開幕戦で鹿島を倒せるように良い準備をしたいですね。
 
――チャンピオンシップの準決勝に続いて天皇杯の決勝でも(川崎が)敗れた鹿島は、強く意識する相手ですか?
 
 いや、昨シーズンの負けはもう終わったことです。負けたから、ではなく、鹿島は純粋にチャンピオンだし、開幕戦の相手なので絶対に倒したい。勝つことができれば、チームは勢いに乗れる。そういう意味でも、すごく良い相手。楽しみです。
――FC東京のファン・サポーターのイメージは?
 
 イメージ……なんだろう? 試合中、あまり対戦相手のサポーターを意識したことがないので分からないですけど、どんな応援歌を作ってもらえるのかは気になりますね。フロンターレ時代の応援歌は子どもたちも気に入っていたので、今度はどんなチャントを作ってもらえるのか楽しみです。

 あと、『ヨシメーター(※大久保のJ1通算ゴール数を掲げた横断幕)』。あれ、すごくモチベーションが高まるんですよ。テレビ中継でもバーンって抜かれるし。あれを見ると『どんどん更新してやろう』という気持ちになる。あれはフロンターレのサポーターが作ってくれたんだけど、ああいうのがあると嬉しいですね。
 
――では、FC東京のファン・サポ ーターに向けてメッセージを。

 タイトルを目指して一緒に戦いましょう。まだ、『大久保嘉人ってどうなの?』って思っている人もいるはずなので、結果を出して振り向かせられたらいいなって思います。
 
――リーグ優勝と得点王、どちらのタイトルが欲しいですか?
 
 どっちも。
 
――両方ですか。
 
 うん。FWというのは『俺が点を取ってチームを勝たせてやる』って思うものですから。俺が得点王を獲れれば、優勝に近づくはずなので、だからどっちもです。

取材・文:飯尾篤史(スポーツライター)