サウジアラビア代表を率いるオランダ人監督、マルク・ファン・マルバイクと日本サッカーの因縁は深い。
ファン・マルバイクの名が広く知られるようになったのは、オランダの名門フェイエノールトを率い、UEFAカップ(現ヨーロッパ・リーグ)を制した01-02シーズンだが、当時のチームにはヨン・ダール・トマソン、ピエール・ファン・ホーイドンクらとともに、小野伸二(現札幌)が不動の主力として名を連ねていた。
04-05シーズンからは現在、香川真司が在籍するドルトムントを率いている。ただ、当時はクラブの財政難もあって、中位をキープするのが精一杯。06-07シーズン途中に解任の憂き目に遭っている。
マルコ・ファン・バステンからバトンを受け、オランダ代表監督に就任したのが08年8月。約1年後の09年9月には、岡田武史監督率いる日本代表とテストマッチを行なっている。結果は、オランダが3-0の勝利。前半をスコアレスで折り返すなど、岡田ジャパンもアウェーで健闘したが、後半に力の差を見せつけられた。
そして翌年の南アフリカ・ワールドカップでは、オランダと日本がグループEに同居。日本とは第2戦でぶつかり、ヴェスレイ・スナイデルの強烈ミドル一発で手堅く1-0の勝利を収めている。結局、グループリーグを1位で突破したオランダはその後、ファイナルまで駆け上がるのだ(決勝はスペインに敗れて準優勝)。
話題になったのは、その南アフリカ大会の組分け抽選会におけるエピソードだ。同じ組になった日本代表の岡田監督と会話中にファン・マルバイクが、「ところで日本の監督は誰だ?」と、失礼にも目の前の本人に尋ねたという。数か月前に親善試合で対戦していたにもかかわらず、だ。
さらに、ワールドカップ本番の試合前にも握手を交わした両者だが、その際にファン・マルバイクはいかにも不機嫌そうな顔つきで、岡田監督に対して「お前は面倒な奴だ」と言い捨てたとも言われている。
その後、2012年のEUROで惨敗(グループリーグ3戦全敗)した責任を取り、任期途中でオランダ代表監督を辞任。短期間ドイツのハンブルクを率いたあと、15年8月から現職に就いている。
ちなみに、教え子であり、娘婿でもある元オランダ代表MFのマルク・ファン・ボンメル(かつてバルセロナやバイエルンでプレーした)は、義父のサウジアラビア代表監督就任当初からアシスタントコーチを務め、当然ながら今回の日本遠征にも帯同している。
ロシア・ワールドカップのアジア最終予選で、サウジアラビアはここまで3勝1分けと好調を維持し、日本と同じグループBの首位に立つ。
果たしてファン・マルバイクは、このままサウジに06年のドイツ大会以来となるワールドカップ出場をもたらせるのか。因縁浅からぬ日本とのアウェーゲームは、64歳のベテラン指揮官にとっても真価を問われる大一番となるが、前日会見では余裕のコメントが口を突いた。
「日本はこのグループで最強のチーム。しかし、我々もしっかり準備をしてきたし、自信もある。日本は質の高いチームだが、相手も我々が質の高いチームであることを知っているだろう」
そして、アウェーでの日本戦は引き分けで十分か? という質問に対しては、
「どこで試合をやろうと、我々は常に勝つために戦っている」
ときっぱり。
現在、日本やオーストラリアを従え、グループ首位に立っていることが、自信の裏付けになっているのだろう。ただ、それでもファン・マルバイク監督は、現在のチーム状態に満足はしていない。
「良い状態にあるのは確かだが、今日良いからと言って明日も良いとは限らない。だから我々は常に努力し、常に改善していく。良い選手がいても、大切なのはチームとして良いサッカーができるかどうかなのだ」
そして最後に、この一戦にプレッシャーを感じているか? という問いにも、不敵な表情でこう答えている。
「選手にとっても監督にとっても、プレッシャーがあるというのは悪いことではない。ただ、明日の試合で一番プレッシャーを感じているのは日本のほうだろう」
日本対策も十分に練ってきたという自信満々のファン・マルバイク。不気味なことこのうえない。
PCMAX
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