前編では、福岡ソフトバンクホークスの内川 聖一選手に、4番打者としての思いから、さらには体のコンディション作りの栄養面についてもアドバイスをいただきました。後編でも、内川選手ならではの工夫を伺っていきます!
サプリメント・プロテインも使い「どの時間で、どんな栄養を摂取するか」内川 聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)
「僕の経験として長く現役で活躍している選手と活躍できない選手の違いは、夏場でどれだけ成績を残せるか。食べられない選手はやっぱり夏を越えられないんです。長く活躍している選手は、『この人、本当に食べるな!』というぐらい大食。だから基本、バランス良く量も多く食べられて、その補助としてサプリメントとプロテインを摂取してもらえばよいと思います」
それともう1つ内川選手は年齢による摂取量の違いについても語ってくれた。具体的に言えば10代の身体と30代の身体では練習法のアプローチ、食事の摂り方、代謝も当然違ってくる。実際、内川選手は30歳を超えてから、今度は体重が減りにくい体質になっていることに気付いた。過去には肉離れで戦線離脱した痛い経験も踏まえて、彼は「適正体重」を見出したのである。
「ケガをすると運動量が落ちるため、どうしても太りやすい状態になります。適正体重を保つために、食事の摂り方、栄養バランスもいろいろ考えなければなりません。そこはザバスさんや嫁さんにもアドバイスをいただいて助かっています。 体重を増やすことは必要なことですが、自分にとって動きやすく故障になりにくい適正体重をケガをする前から見つけることが大事です」
そんな内川選手にとってサプリメントやプロテイン、そしてサバスによる栄養サポートは、非常に重要な位置を占めている。
「僕が若い頃から、ザバスさんにはいろいろ教えていただいていますが、ホークスに移籍してから個人的に契約をさせて頂いたんです。『今、この時間で、どんな栄養が必要なのか、何を、どんなタイミングで摂取するべきなのか』その理由を教えてもらわないと、自分にとって必要なものなのかが分からなかったのですが、そういうサポートをいただいたことで、プロテインに限らずですが、疲労回復のためのサプリメントもうまく活用できています」
このような努力の結果、現在は夏の連戦にも耐えられる、かつ最も動きやすい185センチ93キロの適正体重を手に入れた内川選手。「しっかりと食べることが大前提」の上で、適正体重を知り、タイミングよくサプリメント、プロテイン摂取をする。ここは高校球児のみなさんにも大いに参考となる話である。
「自分の弱みを認める」が日本一の安打製造機への出発点内川 聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)
そんな内川選手に野球選手としてのあり方、取り組む姿勢についてアドバイスをいただいた。よく上達するためには「量より質」か、それとも「質より量」という議論になるが、内川選手はどちらも大事だと考えている。
「うまくなるためには、『質より量』が大事になる時があり、『量より質』が大事になる時があります。やはり、きちんとした形を量をこなす中で作って、そして質を高めていくことが大事であって、最初から『質より量だ』という議論することは違うと思うんです」
技術は一朝一夕で出来上がるものではない。長い時間をかけて作り上げていくもの。そしてそれができれば、何度でもできる再現性を高めるために質のある練習が大事になる。さらに内川選手はこう続ける。
「できない選手が『頭の中では分かっているんですけどね』というのはただの言い訳です。それを体で表現する。それを表現できるために量が必要で、そして何度もできるように質を高めるという手順が大事になると思います。僕は打者ですが、一瞬の判断で外角を状況によって引っ張りますし、内角もライト方向へ打ち返す時もある。それができるようになるには、普段の打撃練習から意識的に行って、試合の中で無意識にできるのが理想です」
とはいえ、内川選手もこのような考えに行き着いたのは最近だという。
「若い時からこんな考えで出来ていればと思いますけどね。僕もプロ入り16年目になりますが、最初はレギュラーをとりたい、そしてレギュラーをとってからはバントの指示は送られない打者になろう!と目標を立てて、段階を踏んでやってきました。そういう過程を進む中で、いろいろな方の考えを教えていただいて、今の考えに到達できたと思います」
そこに到達する第一歩とは?「自分の弱みを認める」。最後に内川選手は語る。「やっぱりできないことを認めることが大事です。できるために必要な作業をしていくわけで、不得意なことを認めないと何の改善にならない。できないのに『本当は俺はできるんだよ』というのは違う話で、そう思っている限り、課題克服の練習を真剣に取り組むことはできないと思います」
高校球児のみなさんも踏んでいかなければならない「心・技・体」そして「栄養管理」。項目別に弱さを認め、見つけ出し、課題を克服する。そして作業の継続。この手順を丁寧に続ける内川 聖一は、2016年・福岡ソフトバンクホークスの3年連続日本一、そして日本一の安打製造機への道を着実に歩んでいく。
(取材・文=河嶋 宗一)
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