「どれだけ休んでも疲れが取れないのは、あなたの脳が疲れているからでは?」――イェール大学で学び、アメリカで開業した精神科医・久賀谷亮氏の最新刊『世界のエリートがやっている 最高の休息法』が、発売3日にして大重版が決定する売れ行きを見せている。
最先端の脳科学研究で見えてきた「科学的に正しい脳の休め方」とは?同書の中からストーリー形式で紹介する。

▼ストーリーの「背景」について▼
もっと知りたい方はまずこちらから…
【第1回】「何もしない」でも「脳疲労」は消えずに残る
―あんなに休んだのに…朝からアタマが重い理由
http://diamond.jp/articles/-/96908

【第2回】脳が疲れやすい人に共通する「休み=充電」の思い込み
―「疲れ→回復→疲れ…」のスパイラルから抜け出すには?
http://diamond.jp/articles/-/96965

【前回までのあらすじ】脳科学を志して米イェール大学に渡ったナツ(小川夏帆)は、諸事情により伯父が営むベーグル店〈モーメント〉を手伝うことになる。彼女のアドバイザーであるヨーダ(グローブ教授/イェール大)が語ったのは、科学的な研究に基づく「最高の休息法」だった。ついに、マインドフルネスが呼吸に着目する真の理由が明かされる。

「脳が疲れる理由」に気づく方法
──呼吸を意識する

「コツは『背中はシャッキリ、お腹はゆったり』じゃ」

翌日、イェールのグローブ研究室を訪ねると、さっそくレクチャーの続きがはじまった。昨日までの講義形式とは打って変わって、今日からは実践的なセッションをやるつもりのようだ。

ヨーダは最初に、椅子に楽に腰掛けるよう言った。背筋は軽く伸ばし、背もたれから離す。そのときのコツが「背中はシャッキリ、お腹はゆったり」なのだそうだ。手は太ももの上に置く。脚は組まないようにして、足の裏を地面にぺたりとつける。目は閉じてもいいし、開けていてもいい。開けるのなら、2メートルくらい先を見るイメージにするといいそうだ。

「うむ、それが基本姿勢じゃ。大事なのが何もしようとしないこと。ただここにあることを自分に許すんじゃ」

早くも私は、昨晩感じた自分の変化を訝しんでいた。マインドフルネスを一瞬でも信じかけた自分の素直さが呪わしい。「何もしない、ただここにある」--結局は坐禅の「只管打坐」と同じではないか。

「むむ、ナツ……まだ雑念があるな」

まるでかつての父だ。ヨーダは私がほかのことを考えているのを、すぐに見抜いてしまう。苦々しい感情とともに、いやな思い出が次々と蘇ってきた。

*   *   *

「まず自分の身体の感覚に意識を向けてみることじゃ。足の裏が床に触れている感覚はあるか?手が太ももに触れている感覚は?お尻が椅子に触れている感じもするはずじゃ。身体全体が地球に引っ張られる重力も感じるかな?」

何をやっているのかさっぱりわからない。たしかにヨーダの言うとおり、それぞれに意識を向ければ感覚はある。しかし、わかりきったことではないか。20秒もすると、もう耐えられなくなってきた。

「次にな、呼吸に注意を向けてごらん。呼吸に関係する感覚を意識するんじゃ。空気が鼻を通る感覚はあるか?胸に空気が入るにつれて、胸が膨らむ感じは?お腹が持ち上がる感覚は?」

「(……何なの、これ?深呼吸くらいわざわざ教えてもらうまでもないわよ!)」

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