U-23日本代表の松本合宿は2日目を迎え、26日にJ2、J3、サテライトリーグを戦ったメンバーが合流。派遣手続きの関係で欠席した松原健を除く20選手が揃った。前日にJ2・讃岐戦でボランチとしてフル出場した矢島慎也は、ストレッチとランニングを中心とした軽めのメニューで汗を流した。6月は公式戦5試合でほぼフル出場し、PKながら2得点を挙げるなど、「試合に出続けられているので調子は悪くない」と最後のアピールに照準を合わせる。
 
「オリンピックも、(7月1日の)メンバー発表も近づいてきて、みんなアピールしたいと思っているはず。初めて一緒にやるメンツではないし、(実戦の)数はこなしているので、(6月29日の南アフリカ戦は)連係云々ではなく、勝ちが求められている。そのなかで、試合としては最後になる分、より頑張って自分もアピールできればいいかなと」
 
 手倉森誠監督は「(最終メンバー18人のうち)3分の1以上はふたつのポジションをできる選手がいなければいけない」と、かねてからポリバレント性を重視している。5月のガーナ戦でサイドハーフとボランチでプレーした矢島は、その条件を十分に満たしており、指揮官の信頼も厚い理由のひとつと言えるだろう。
 
「(メンバーに)人数制限があるなかでは、ポジションがひとつだと使い勝手が良くない場面が出てくる。自分はボランチも真ん中(2列目)もサイドもできるので、そこのポジションでやれって言われた時に普通に対応できると思います。でも、“普通”じゃダメというか、他の人と同じことをしていても生き残れない。違いを出すという意味では、自分は点に絡むプレーをしたいですね」
 
 生き残りを懸けたサバイバルと同時に、矢島は今回、中島翔哉に代わって「10番」を託された点でも注目を集める。手倉森監督はメンバー発表会見で「中島が欠けていた分、矢島が10番を背負って、ガーナ戦でもトゥーロン(国際大会)でも良い仕事をしてくれている。今の時点では時系列から言っても矢島が10番」と言及した。中島はこの日の練習後「背番号にはそこまでこだわりはないです。ヤジくん(矢島)もすごく上手いし、一緒にプレーしていて楽しい選手」と語ったが、では当の矢島はどう思っているのか。
「うーん、正直『10番』にこだわっているわけではないです。代表に来たら周りはみんな同世代だし、刺激になるのでやる気とかには直接的には関係しません。でも、(監督から)信頼されているのは嬉しいし、それに応えないといけないと思います」
 
 1勝3敗に終わったトゥーロン国際大会では、アジアと世界の差を感じたという。攻守にラストプレーの精度が鍵を握ると矢島は説く。
 
「世界だとひとつのチャンスを決めてくる。そのひとつのチャンスを与えない守備をする、あるいは作らせたとしてもそこで身体を張ってブロックするとか、そういう部分が大事ですね。(トゥーロンでは)攻撃でチャンスは作れているけど、結局(試合に)負けている。チャンスを作っても決め切れるかどうかが課題。あとは一人ひとりの意識の問題だと思います」
 
 手倉森監督の“秘蔵っ子”が、指揮官の信頼にどのような“答”を見せて応えるのか、見ものである
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)