2016年6月1日、スイス南部で建設されていた「ゴッタルド基底トンネル」が正式に開通しました。アルプス山脈を縦貫するこのトンネルは最も深い場所でアルプスの山頂から約2000メートルもあり、日本の青函トンネルが持っていた記録・53.9kmを超える57.1kmという世界最長トンネルとなっています。
Gotthard tunnel: World's longest and deepest rail tunnel opens in Switzerland - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-europe-36423250
ゴッタルド基底トンネルは、スイス南部のエルストフェルトとボディオを結ぶトンネルで、建設には17年の歳月と2600人の作業員が携わってきました。以下の図が示すように、トンネルは可能な限り高低差が生じないように設計されていることに加え、現存している鉄道ルートよりも600メートルも低い位置に通されています。これにより険しい山岳部分を通る必要がなくるため、より高速化を実現することが可能です。
地図でも分かるように、ほぼ直線で2地点を結ぶゴッタルド基底トンネルは、鉄道輸送の要として大きな期待が寄せられています。険しい山々からなるアルプス山脈は、かつてから中央ヨーロッパの物流における難所の一つとして立ちはだかっていました。
57.1kmという距離は、日本の青函トンネルを抜いて世界1位を新たに樹立。それまでヨーロッパ最長だったフランスとイギリスを結ぶ「ユーロトンネル」は世界第3位の長さとなっています。
6月1日の正式開通に際し、ヨーロッパの各国首脳を招いた開通式が執り行われています。司祭によるお祈りが行われ……
開通列車には左からレンツィ・ イタリア首相、アマン・スイス大統領、メルケル・ドイツ首相、そしてオランド・フランス大統領ら各国首脳が搭乗しています。
トンネル開通により、スイス・チューリッヒとイタリア・ミラノを結ぶ鉄道は、従来かかっていた約3時間40分から2時間40分程度へと1時間も短縮されるとのこと。平坦でカーブの少ないトンネルとしたことで、トンネル内を走る列車は時速250kmでの走行が可能になっており、全長57.1kmを約20分で通過してしまうとのこと。これにより、アルプス山脈はもはや交通の難所ではなくなったとすら言う声も挙がっているほど。
ゴッタルド基底トンネルにまつわる情報をインフォグラフィックにするとこんな感じ。トンネルの建設には17年もの年月を要し、総工費は120億ドル(約1兆3200億円)にものぼります。これにはスイスの連邦プロジェクト「アルプトランジット計画」として国家レベルの予算が投じられています。掘削機の長さは400メートルで、使用されたコンクリートの量はエンパイア・ステートビル84個分に相当する400万立方メートル。このトンネルにより1日あたり37万7000トン・コンテナ1万5080本相当もの貨物輸送が可能になるため、物流における大きな役割を担うことが期待されています。
この写真は、危険な場所で作業する人々を守る聖バルバラの像。工事期間中には9人の作業員が命を落としているそうです。
なお、同計画ではゴッタルド基底トンネルを通る「ゴッタルドルート」のほかにもう1本「レッチュベルクルート」が建設されており、すでに稼働中。フランス側を結ぶレッチュベルクルートとドイツ側を結ぶゴッタルドルートが開通することで、中央ヨーロッパには鉄道の太い大動脈が通ったことになりました。
By Cooper.ch
ゴッタルド基底トンネルに関しては、以下のサイトでも詳しく解説されています。
世界一長いゴッタルドベーストンネル、あと1年半で完成 - SWI swissinfo.ch
外部リンクGIGAZINE(ギガジン)
関連情報(BiZ PAGE+)