アパレルショップ「サントニブンノイチ」には、彼をひと目見ようと人だかりができていた。入場制限ができるほどの大行列の先にいるのは、原宿界隈を中心に絶大な人気を集める美少年・ゆうたろう。男女の垣根を越えた可愛らしさと独特のファッションセンスで活躍の幅を広げている。他人に恋愛感情を抱いたことはなし! だけど恋を模索中…? ミステリアスな18歳は、どこから来て何を目指すのか…? その生い立ちから独自の哲学までたっぷりと話を聞いた。

撮影/倉橋マキ 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

学校に通う意味が、わからなくなった。





――ゆうたろうさんが「サントニブンノイチ」にスタッフとして店頭に立たれると、入場制限がかかるほどのすごい行列ができるそうで…!

最長で7時間待ちの入場制限がかかりました。多くのお客さんが来てくださるのはすごく嬉しいし、ありがたいんですが、小さなお店なので15人ほどでパンパンになっちゃうんですよ。最近では、事前に「出勤します」という告知をせずにお店に出ています。

――7時間待ち!そのすさまじい熱狂に至るまでのお話を伺ってまいります。ご出身は広島ですね? 小さい頃はどんなお子さんでしたか?

小さい頃からお姉ちゃんと遊ぶことが多くて、保育園でも男の子よりも女の子とばかり一緒にいて、よく女の子に間違われてました。



――いま、こうしてお話を聞くと、男性的な低めの声なんですね。写真で見たときの女性的な雰囲気とはガラリと印象が変わりますが、声変わりをする以前は…

めちゃくちゃ声が高かったです! しゃべり方もナヨっとしてて「女の子っぽい」って言われてました。声変わりして、いまは(見た目のイメージと声に)ギャップがあるねってよく言われます(笑)。

――性格的には?

小さい頃からどちらかというと男っぽいというか、サバサバしてましたね。わりとめんどくさがり屋なんです(笑)。親は「あれしろこれしろ」とうるさく言うタイプではなかったので、自由にのびのびと育ててもらいました。なので、いまでもかなりマイペースです。

――子どもの頃に熱中したり、ハマっていたものはありますか?

TVの戦隊ものや仮面ライダーはずっと好きでしたね。日曜の朝9時に必ず起きて見てました! とくに『仮面ライダーアギト』や『仮面ライダー555』が大好きでした!




――ライダーごっこで周りの男の子たちと遊ぶことはなかったんですか?

おもちゃのベルトやソードも持っていて、ひとりで遊んでいましたけど、周りの男子と遊ぶことはなかったですね。

――小学校、中学校と進んで、学校生活はいかがでしたか?

僕、実は中学にほとんど行ってないんです。最初の1年だけは通ったんですけど、自分の中で学校に行く意味がわからなくなっちゃって…。小学校までは普通に通っていたんですが、中学で道を外れたというか、家族以外の人とあまり関わらなかったですね。

――女の子と一緒にいることが多くて、学校で男子からからかわれたりしたとか…?

それはなかったです。いじめられていたわけでもなく。中学の最初の1年で男子とも接するようになったんですが、遊びも話の内容もついていけず、なじめませんでした。当時はしたいこともなかったし、友達も欲しくなくて…。ほぼ引きこもりの状態でした。

――家ではどのように過ごしてたんですか?

携帯をいじったり、YouTubeを見たり。昼夜逆転の生活で、午前中に寝て夕方起きて、ごはん食べて、TV見て、また寝て…という生活を送っていました。すごく時間を無駄にしたなぁと思いますね、いま振り返ると。



表に出るって、こんなに気持ちいいんだ!



――ファッションに関しては、子どもの頃からお好きだったんですか?

家族で買い物に行ったりするのは好きでしたけど、全然詳しくなかったです。古着とかを好きになったのは、いまのお店で働き始めてからですね。

――中学を卒業された後、「サントニブンノイチ」の店員として働き始めた経緯を教えてください。

「サントニブンノイチ」はもともと大阪にお店があったんですが、全国に限定ショップを展開して、一番盛り上がった土地に正式に新しいお店を出すことになったんです。その限定ショップにお姉ちゃんと買い物に行ったら、オーナーに声を掛けられて。



――オーナーのロザッチさんとmicoさんですね。それで広島店のオープニングスタッフに?

最初はモデルとして「今度、イベントやるからおいで」とスカウトされました。スタッフとして働きたかったのですが、16歳で何の経験もないし、オシャレのことも全然知らなかったので…。それがすごく悔しくて、モデルをやりつつお店の手伝いを始めたんです。

――家にいる時間が長かった生活から、スタッフを目指して俄然、闘志を燃やして…

そうしたらオープンから2日後に、お店のツイートで「新スタッフです」とサプライズで発表されて(笑)。ビックリしたけどすごく嬉しかったです。いまでも、オーナーのふたりは一番尊敬しています。

――洋服と出会って世界が変わりましたか?

最初にお店のショーにモデルとして出たとき、コーディネートしてもらってお化粧もしてお客さんの前に出たらすごく反応が良くて「あぁ、表に出るってこんなに気持ちいいんだ!」と。それから洋服がどんどん好きになったし、化粧もするようになったんです。

――モデルと店員を並行してこなすことで、短期間で一気にファッションのことを吸収されたんですね。

毎日、服と触れ合うことで、いろんな知識が自然と身につきました。以前はいまよりもっとやせてて、目立ちたくなくて真っ黒の服しか着てなかったんです。でもお店で「こういうの着てみたら?」と勧められたり、お客さんと接する中で「こういうの着たい!」と自分で考えたりするようになりました。



――広島店で働いた後、大阪店に異動されたんですね。

はい。オーナーの自宅に下宿させてもらったんですが、すべてが初めてで楽しくて仕方がなかった! 広島と大阪を行き来していたんですが、正直、広島に帰りたくなくて、泣きながらバスの予約をしてました(笑)。

――まさに外の世界への目覚め。すごい変化ですね! 何がゆうたろうさんをそこまで変えたんでしょうか?

ファッションはもちろんですが、何より人の面白さです。出会った人たちがみんな個性的な方ばかりでした。それまでは人間関係が苦手で閉鎖的なタイプだったんですけど、しゃべることが好きになって、人間が180度変わりました。

可愛い“だけ”の男の子には、負けない。





――インスタグラムでも積極的に周囲と交流されていますが、始めたのはいつごろですか?

中3くらいですね。その頃は他人とつながることは考えてなくて、お姉ちゃんと買い物に行って買った服をアップしたり。自撮りの写真でも顔は隠していました。

――モデルと店員の仕事を始めてからフォロワーも徐々に増えていき…

アップした写真の反応がいいと素直に嬉しいし、コメントから何がいいのかという正直な反応も見られるのが楽しいです。インスタでは、普段のモデルのときにはあまり見せないようなプライベートっぽさを出すようにしてます。

――10万1千人ものフォロワーがついていますが、これだけ支持されるのはなぜだと考えていますか?

もともと「変わってる」とは言われていました。「あまりこういう人間はいない」と。決して自分を作っているわけではないですが、唯一無二の存在でありたいとは思っていますし、そこをほめていただけるのは人間性そのものを見てもらえていると感じられて嬉しいですね。



――素直な自分を見せるようにしている?

気持ち悪い顔の写真もアップするし、それを見て笑ってもらえるなら嬉しい。そういう素の部分をさらけ出してるところがいいのかな? いろんなコメントが来ますけど、やっぱり「好き」と言ってくれる人が多いので大事にしています。

――ゆうたろうさんは、写真によってまったくの別人のように変身されますね。

メイクや髪型でガラッと印象が変わるところは自分でもすごく気に入っていますし、反応を見るのもすごく楽しい。メガネ外して髪型をオールバックにしてたら、僕だって気づかれず、マネージャーさんにスルーされたこともありますから(笑)。

――「いまの時期はこういうファッションにハマっている」というよりも、ほぼ日替わりでジャンルも性別もまたいでますね!

朝、起きたときの気分で決めてます!

――ファッションで大切にしていることは?

朝「今日はこれ」とひとつアイテムを決めたら、それに沿ってコーディネートや髪型、メイクなどを肉付けしていく感じなんですよね。“かわいい”男の子はいまどき、たくさんいます。でも、僕はそれと正反対にワイルドな感じでキメることもできる。そこで、他の人たちと差をつけることは意識しています。

――好きなファッションを貫くのはもちろん、“プロ”としての意識の高さも見えますし、わりと冷静沈着に状況を見ているようにも感じられますが…

やはり常に「人に見られている」という意識は持っていますし、頭のどこかでいつもファッションのことや美容のことを考えています。醒めた目で物事をジッと見ている部分もあると思いますね。けっこう性格悪いんですよ、僕(笑)。