最近、糖質制限ダイエットが流行っていますよね。

でも、本当に“効果があるのか”、“安全なのか”気になるという人も多いのではないでしょうか。

今回は管理栄養士の筆者が先日参加した、一般社団法人スローカロリー研究会主催の『糖質とダイエットセミナー』のイベントレポートをお届けします。

■注目すべきは「糖質の質」

今回のセミナーのテーマとなっていた“スローカロリー”。糖質をゆっくり吸収する食べ方をすることで、血糖値の上昇が抑えられ、肥満や生活習慣病の予防になるなどの健康効果が得られるという考え方です。

スローカロリー研究会理事長の宮崎滋先生は、「糖質の量だけに注目するのではなく、糖質の種類や食べ方など“質の視点”に立つことの重要性」を強調されていました。

■糖質オフダイエットはうまくいかない?

続いて登壇された日経BPヒット総合研究所主席の西沢邦浩さんからは、驚きの調査結果が発表されました。

ネオマーケティングが1,880名の女性に行った調査によると、“約6人に1人が糖質制限ダイエットを経験したことがあり、そのうち約2人に1人がリバウンドを経験していた”のです。

さらに、“糖質制限ダイエットを実践した315名のうち、159名(50.5%)が「集中力がなくなった」、「無気力になった」などの体調不良を訴えて”いました。

この結果を見ると、糖質を制限することで身体にはさまざまな影響が現れてくるようです。

■糖質オフではなく「糖質スローオン」に

武庫川女子大学国際健康開発研究所講師の森真理先生からは、糖質オフではなく、“糖質スローオン”という考え方が示されました。

これは、“糖質がゆっくり吸収されるようにする工夫”のこと。具体的には、次のような方法が紹介されていました。

・液体で糖質の多い清涼飲料水は控える

・個体の糖質であるごはんのようなしっかり噛んで食べられるものをおかずと一緒に食べる

・食事をする時に野菜から食べる

・糖質は乳製品や酢と一緒に食べる

これなら普段の食事で手軽に実践できそうですよね。

■日本の食文化を大切にしよう

東京慈恵会医科大学主任教授の宇都宮一典先生は、数ある糖質制限食の有効性を示す論文の問題点を指摘した上で、“炭水化物だけ制限すれば、エネルギー制限はしなくても肥満が防げるわけではないこと”も明らかにしました。

また、「糖質制限をするということは、日本人が一番多く糖質を摂取している元のお米を食べないということであり、これは日本の食文化を無視した食事法だ」ともおっしゃっていました。

さらに、日本獣医生命学大学客員教授の佐藤秀美先生は「日本の一汁三菜の食事は栄養バランスが整い、スローカロリーにもつながる素晴らしい食文化。その良さを今一度見直しましょう」と呼びかけていました。

安易な糖質制限ダイエットは日本人としての食文化を否定することにも繋がるだけではなく、何より科学的に安全性が証明された食事法ではありません。

短期間で痩せたと喜んでいたら、将来の病気を助長している……なんてことにもなりかねません。

もちろん糖質の摂りすぎは良くありませんが、ただ量に気を使うだけではなく、糖質の種類や食べ方に関する知識も深めて、日本人らしい食事を楽しみながら健康を維持する道を探していくのが一番良いのかもしれません。

【参考】

※ 一般社団法人スローカロリー研究会 「糖質とダイエット 〜糖質を正しく摂取するには〜」

【筆者略歴】

※ 圓尾和紀 ・・・ 管理栄養士。総合病院勤務を経て予防医療を志し、独立。和食素晴らしさを伝える活動と、”不自然な食べもの”にあふれた環境で、定期的に身体をリセットする目的からファスティングを取り入れた生活の提案を行う。カラダヨロコブログ。

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※ Sayan Puangkham / shutterstock