米国の宇宙開発企業スペースXは5月6日、日本のスカパーJSATの通信衛星「JCSAT-14」を搭載した「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功した。さらに、ロケットの飛び方の都合から難しいと見られていた第1段機体の回収も成し遂げ、完璧な成功を果たした。
ロケットは日本時間5月6日14時21分(米東部夏時間5月6日1時21分)、米国フロリダ州にあるケイプ・カナヴェラル空軍ステーションの第40発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行し、2分41秒後に第2段と分離した。
第1段はその後、大西洋に向かって降下し、大気圏に再突入。洋上に浮かぶドローン船「もちろんいまもきみを愛している」号の真上でロケット・エンジンを再点火し、甲板の上に舞い降りた。
一方の第2段も順調に飛行を続け、打ち上げから約31分後に衛星を分離し、計画通りの軌道に投入。その後、衛星からの信号も届き、状態が正常であることが確認されている。
○JCSAT-14
JCSAT-14は日本の衛星通信会社スカパーJSATが運用する通信衛星で、現在同社が運用中の「JCSAT-2A」(2002年打ち上げ)の後継機として、日本全域、アジア、オセアニア、ロシア、太平洋地域に通信サービスを提供する。
衛星の製造は米国のスペース・システムズ/ロラールが担当した。打ち上げ時の質量は約5トンで、東経154度の赤道上空3万6000kmの静止軌道で運用される。設計寿命は15年が予定されている。
○存外の大成功
スペースXはロケットの低コスト化を目指し、一度打ち上げたロケットを回収し、再び打ち上げに使うための開発や試験を数年前から続けている。昨年末にはロケットを発射場に程近い陸上に、また今年4月9日には洋上の船への着陸に成功しており、今回で着陸は3回目、洋上へは2回目の成功となった。
ロケットを陸上に戻すためにUターンするには、推進剤に多くの余裕が必要となるが、洋上であればUターンする必要がないため、衛星の質量や打ち上げる軌道の都合で余裕が少ない場合でも、機体を回収できる頻度が上がることになる。
ファルコン9が陸上、もしくは船上に着地するためには、水平方向の速度を落とすため(あるいは発射場まで戻るようにUターンするため)の「ブーストバック噴射」、大気圏再突入時の速度を抑えるための「再突入噴射」、最終的に着陸するための「着陸噴射」の、大きく3回のエンジン噴射を行う。
しかし今回の打ち上げでは、余裕が少ないことから、このうちブーストバック噴射が実施されなかった。この場合、前回の成功時よりも速い速度で船に向かって降下することから制御が難しくなる。実際、今年3月5日にも今回と似た条件と方法で回収が試みられているが、ロケットを制御し切れず、船への着地に失敗している。そのためスペースXや同社のイーロン・マスクCEOは事前に、「今回は回収は難しいだろう」という見方を述べていたが、その予想は良い方向へ裏切られることになった。
マスク氏によると、今回は3月の挑戦と同様にブーストバック噴射を行わなかった一方で、着陸噴射を通常1基のエンジンで噴射するところを3基のエンジンで行い、一気に降下速度を落とすという、これまでにない新しい飛び方を試みたとしており、これが功を奏したと見られる。
着地成功後、マスク氏は「(予想より回収できる頻度が上がったことで)ロケットの格納庫を増築する必要があるかもしれない」と成功への喜びを語った。
ファルコン9の打ち上げは、今回で今年4機目となった。スペースXではまた、今月下旬にタイの通信衛星「タイコム8」の打ち上げを予定しており、さらに「今後、2〜3週間おきにファルコン9を打ち上げると共に、回収試験も続け、さらにそのうちの何機かでは回収した機体を再使用したい」という見通しも発表している。
【参考】
・JCSAT-14 Mission in Photos | SpaceX
・JCSAT-14 MISSION | SpaceX
・Falcon 9 launches with JCSAT-14 - lands another stage | NASASpaceFlight.com
・Elon Muskさんのツイート: "Yeah, this was a three engine landing burn, so triple deceleration of last flight. That's important to minimize gravity losses."
(鳥嶋真也)