新作『ザ・ウォーク』を引っ提げ来日したロバート・ゼメキス監督が、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989)で主人公マーティとドクが訪れた“未来の日”を日本で過ごした際に、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの続編は作らないと断固として語った。

 現実が劇中での未来に追いついた2015年10月21日、多くの熱狂的なファンがこの日を祝福した。ゼメキス監督も、「とても誇りに思うよ。想像すらしてもいなかったことだから本当にうれしい。最近はこうやって長きにわたって愛される作品が作られることが少ないからね。公開から30年近く経っているけど、今でも多くの人に観てもらえているということは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が本当の映画であるということの証だと思っている」と心からの喜びを口にする。

 2015年には『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ジュラシック・ワールド』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』といった過去の人気シリーズが次々復活した。記念すべき日を迎え、ファンなら期待してしまうのが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』続編の可能性。映画界で続編ブームが起きていることについて、「オリジナルのアイデアで成功することが難しくなってきているからだと思う」と分析したうえで、「成功させることができるとしても、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の続編を作ることはないね」とキッパリ。

 「僕は常に今やっていることに集中するだけさ。面白いと思うものを見つけて、それで映画を作る」と映画作りの信念を明かしたゼメキス監督。そしてそのアンテナに引っ掛かり、ゼメキス監督が映画化したのは、ワールド・トレード・センターのツインタワーの間に張られたワイヤーの上を歩いたフィリップ・プティの実話だ。ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じるフィリップが、VFXで完全に再現されたツインタワーの間を空中闊歩するシーンは圧巻。一方で、「ワールド・トレード・センターのツインタワーとその街、ニューヨークに宛てたラブレターなんだ」と語る通り、今はなきニューヨークのシンボル、ツインタワーを通してどことなくノスタルジアを感じさせる作品ともなっている。(取材・文:編集部・石神恵美子)

映画『ザ・ウォーク』は1月23日より全国公開