|それは決して、イノベーションや創造性が欠如しているものではない

先日ラスベガスで行われたCES 2016は、テクノロジー業界における最高のものを目に出来る大きなイベントだ。そこでは未来についての様々なデモンストレーションや対談、ディベートが行われる。

大きなヒットを飛ばして賞賛され、メディアに取り上げられるものがある中、成功をおさめられなかったものもある。これらは別にイノベーションや創造性に欠けていたというわけではなく、とある問題を解決しようとしたものだ。我々はこれらから学ぶことがあるだろう。

失敗は時折、狙いに対して使われるテクノロジーが適切でないために起こることがある。たとえば設計が過剰なものであったり、非常に高価なものだったり、ごく限られた人たち向けのものだったりといった具合だ。以下、大きなポテンシャルを持っているにもかかわらず、どうにも残念な点がある製品を取り上げる。

|UVパッチ

My UVパッチは紫外線の露出をモニターし、日焼けについての理解してもらうことを目的にロレヤルがデザインしたウェアラブルタトゥーだ。髪の毛の半分ほどの厚みの透明な粘着面に紫外線に反応する肌色の塗料が含まれており、日差しの強さに応じてその色を変える。

外で過ごしたのち、装着者がパッチの写真を撮ってモバイルアプリを使ってアップロードすると、塗料の感光度合いから浴びた紫外線の量を分析し、日陰に入るか日焼け止めを使うべきかをアドバイスするというものだ。

UVパッチは理論的にとても可能性のあるものだ。ヘルスケア用の柔軟性を持った電子センサーの登場は素晴らしいことだし、我々は木陰にいたとしても紫外線からダメージを受けるため、日光だけでなく紫外線の露光を計測するというのもいいアイデアだ。だがこのパッチは装着者が写真をアップロードし続けなければならないという問題がある。これではユーザーが忘れてしまったり、そのうち飽きてしまうことだろう。また防水に対応しているものの、ロレヤルはこれを身に着けたまま風呂で体を洗ったり、日焼け止めを塗ったり、塩分や塩素にさらされても大丈夫かどうかについて明言していない。

統計的にみて、皮膚がん発生率は頭部に集中しており顔、鼻、耳などは特に紫外線に弱い。だがこれらの部分にパッチを貼る人などいるとは考えづらい。このような目立ったウェアラブルを使わずに、いちばん脆弱な部分をモニターして安全なままにしておくための方法は他にもあるだろう。(スマートハットなどはどうだろうか)

このパッチは同じく紫外線を測るためにNetatmoが出したJuneウェアラブルブレスレットからは少し進化したもののように思える。このデバイスは直射日光に晒された状態でないと数値が取れなかったり、泳ぐとき身に着けられなかったりといったことから、レビュワー達からの非難を受けていた。

また、UVパッチがもつのは5日間だけであり、継続的な利用を考えると高価なものになると考えられる。(小売価格はまだ公表されていない)しかしながら、様々な可能性を持ったこの商品が、将来どの様な進化をするのかは興味深いところだ。

|Gemio Friendship ブレスレット

Gemio friendship ブレスレットは、女子学生向けの最新ウェアラブルだ。製品には取り外し可能な”Gemsets”が多く含まれている。これは同じデバイスを持つ他の人とのコミュニケーションに使えるLEDライトを備えており、伝えたい事に応じて異なる光を発する事でメッセージを伝達するというものだ。

Gemioは手を振ったりHi Fiveなどといったジェスチャーを認識することもでき、手を振る動作でライトを点滅させることもできる。

価格は$100からだが、これはちょっと若い子たちが出せる額だとは思えない。もちろん彼女たちにも自由に使えるお金はあるが、このコミュニケーションブレスレットにお金を出すと思えるだろうか?

同じような目的のためのプログラマブルなブレスレットで、これより若干安い$69のJewelbotsがあるが、これはプログラミングの基本を学ぶこともできる。また近くにいる友達がもつ同じデバイスに、着用した色や点滅のパターンを設定する機能も備えているが、Arduinoのソフトを使える事がそのための条件だ。GitHubから昔のオープンソースのSTLデザインファイルを探すこともできる。

|Welt

面白い名前のこのウェアラブルベルトは、ウェアラブルでない方をもじって名付けられたものなのだろう。Weltは健康を気にする人があまり目立たないようにウェストサイズや食習慣、歩数、座ってる時間をモニタリングするためのものだ。バックルの裏に取り付けられたセンサーからのデータは分析の為にアプリに送られ、体重管理のための幅広くパーソナライズされた健康チェックが実現される。

ウェアラブルが手から離れることはいいことだ。またスポーティーでないウェアラブルが出てくることも悪いことではない(革ベルトを着けてジムに来る人などいるわけがない)

このデバイスは2014年に登場したBeltyという残念な名前が付けられ、その見た目を馬鹿にされたデバイスより少しましなものだが、ターゲットとなる層がこのベルトを購入するかどうかについては何とも言えないといったところだろう。

|Bartesan ホームカクテルマシン

BartesanはKeurigやNespressoのようなコーヒーマシンと同じような感じのカクテルマシンだ。本体($299)を購入し、リキュールを入れ、フレーバーカプセルをマシンにセットする。カクテルの種類とアルコールの量を選択するとフレーバーカプセルの中身とアルコールが混ざり合い、すぐさまカクテルが出来上がる。フレーバーカプセルはコスモポリタン、アップタウンロックス、マルガリータ、バルテシアンブリーズ、セックスオンザビーチ、ゼスト・マティーニなど12個入りで$20だ。

Kickstarterのキャンペーンで募った額は10万ドルに上り報道もされた。だが私にはこれを買う理由がもう一つよく理解できない。まず4種類の異なるリキュールをわざわざ用意しなければならないし、マシンはブレンダーよりずっと高価だ。フレーバーカプセルも安くはないし、マシンに書き込まれたレシピ以外を試してみるという選択肢は与えられていない。ひょっとすると私は彼らが考える市場の一般的な消費者とは異なるのかもしれない。

“ビール用3Dプリンター”と呼ばれているPicobrewの方がより私の好みだ。カウンターに置いておく自作の小型醸造器であり、PicoPak原料キットと呼ばれる50種類以上の興味深い原料を使ってビールづくりをすることが出来る。小売価格は$699だ。PicoBrewは最近PicoBrew BrewMarketplaceという、自分オリジナルの原材料の組み合わせを発表する場を用意した。その売り上げに応じてロイヤリティが発生する。これはクラフトビールのプログラミング可能な未来になりうるだろうか?

|Pregnancy Pro

妊娠検査は簡単で精度が高いが、スティックに尿をしなければならないというあまり気分が良くない手間が生じる。Pregnancy Proはスマートフォンと連動し、ユーザにパーソナライズされた情報やサポートを提供するアプリへのアクセスができる、世界初の妊娠検査キットだという。

利用者はアプリをダウンロードし、付属のスティックに排尿すれば、自身の生殖能力の状態を知る事が出来る。ダウンロードにあたって、妊娠を望むかそうでないかを述べるところがあるので、望まず妊娠した時に見当違いな祝福メッセージを受け取る事も避けられる。

私にはどうにもこのテクノロジーが取ってつけたようなものに感じられてならない。これの価格は$15と、普通の妊娠検査の倍の価格だ。母体の状態をトラッキングするアプリなら、Clueなどより良いものが思いつくし、Bellabeatのウェアラブル、Leafなどはアクティビティレベル、睡眠の質、ストレスレベル、排卵日/安全日の周期などのトラッキングを一式で提供している。

|CES 2017に向けて考える

安価なハードとオープンソースソフトによって、あらゆる類のデバイスを接続させることはより簡単になった。それでも実際に役立つ活用例を生み出すことは容易なことではない。そのデバイスが取って代わろうとしているものは、本当に問題を抱えているのだろうか? それとも単に技術を投入する理由を探しているだけなのだろうか?

これらはCESで展示されるプロセッサーやスクリーン、バッテリーといった技術に制約を与えるものではない。今後もより安く、優れたものになっていくだろう。これらのデバイスは人々の向上欲、そして製品を正しい方向に持っていくために費やされる時間の現れである。

ReadWriteJapan編集部
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