森重真人(FC東京)
 
 守備の柱として貢献していたし、今季は「ウノゼロ(1-0)」を目指すチームスタイルの象徴だったね。最終ラインを束ねながら、そのうえで7ゴール(チーム内3位)と攻撃面でも活躍しているのだから、選出は順当。代表選手としての格を示したとも言えるね。もっとも、森重ら守備陣の働きが光った分、チームとしては攻撃の物足りなさが浮き彫りになった。
 
太田宏介(FC東京)
 
 左足のキック精度が高いのは、誰もが認めるところ。彼のアシストからゴールも多く生まれているし、攻撃面での仕事ぶりは目を引いた(編集部・注/本誌選定アシストはリーグ最多の「13」)。運動量も豊富で、FC東京の左サイドは、まさに彼ありきだった。ただ、1対1の対応が軽い時やカバーリングが遅れる時もあり、守備面はまだ改善の余地が多い。代表で長友佑都の壁を超えられないのも、そのあたりに原因があるように思う。
 
塩谷 司(広島)
 
 運動量が豊富で、1対1の競り合いでは強さを存分に発揮していた。自分に与えられた役割を忠実にこなしながら、機を見て上がる時の迫力も十分だった。とはいえ、今年は自らのミスから失点を招く場面もあり、ゴール数も14年より少なかった(編集部・注/14年は6ゴール、15年は3ゴール)。そういう意味で、ベストイレブンに匹敵するインパクトを残したとは言い難いんじゃないかな。
 
 
▼GK
西川周作(浦和)
 
 日本代表の正GKだから、納得と言うべきか、入って当たり前だね。G大阪の東口順昭も良いパフォーマンスを続けていたなか、ふたりはリーグでも代表でも、ハイレベルな切磋琢磨をしていたように思う。西川はシーズンを通じてビッグセーブを何度も見せていたし、第1ステージ優勝の原動力にもなっていた。守護神として、着実に成長しているね。
 
◆2015 「Jリーグ最優秀選手賞」 
青山敏弘(広島)
 
 攻守の貢献度が高かったのは間違いないけど、どちらかと言うと、優勝したチームのキャプテンという意味で選出につながった印象が強いよ。単純に目に見える成績、優勝に導く活躍という点から考えると、ドウグラスが一番相応しかったようにも思う。もちろん、それぞれの意見や見方があっていいけど、日本的に丸く収めた感もあるね。キャプテンが大好きな国「日本」を象徴していたような気がするよ。
 
◆2015 「ベストヤングプレーヤー賞」
浅野琢磨(広島/FW)
 
 スーパーサブ的な役割をこなしながら、8ゴールと結果を残したのは立派だった。ただ、それは佐藤寿人とのセット起用という側面も強かったよね。マラソンを走る選手とリレーを走る選手では、負担が大きく違う。個人的には、先発が少ない選手は選ぶべきではないと思っている。先発して結果を残し、途中で交代するのは、大いに称えていい。途中出場で結果を残すのも難しいことだけど、“スピード勝負”にばかりなってしまうのは、彼の成長を考えると、少しもったいない気もするね。
 
 
 
 最後に「Jリーグベストイレブンの選考」について話したい。
 
 まず、第1ステージを制して、年間勝点2位だったレッズの選手が少なかったように思う。特にボランチの柏木陽介は、ベストイレブンに入らなかったのが不思議で仕方ないよ。レッズを動かしていたのは柏木。パフォーマンスから考えれば、レッズから選ばれるべきだったのは、GK西川と柏木だったんじゃないかな。
 
 それから、浦和の関根貴大も良い選手だね。あれだけの攻撃力を備え、あれだけ点が取れるウイングバックはもっと評価していい。ただ持ち上がってクロスを上げるのではなく、あくまでもゴールを意識してプレーするという意味で、サイドの教材となる選手だよ。
 
 同じくサイドの選手では、広島のミキッチもベストイレブンに匹敵する存在だった。激しいアップダウンをしながら、彼ほど積極的に仕掛け、アシスト能力を有した選手は少ない。川崎のエウシーニョは、よりゴールに絡む動きが特長で主にウイングバックでプレーしながら8ゴールをマークしている。
 
 ミキッチやエウシーニョは、少なくとも「優秀選手賞」に値する。実際はどちらも選出されていないけど、できるだけ日本人を選びたいという意識が働くのかな。
 
 日本人にないモノを持っている選手が「ベストイレブン」に選ばれ、「優秀選手賞」を受賞すると、「俺もああいうプレーをすれば選ばれる」という良いお手本になる。
 
『こういうプレーをしたから選出した』という明確なメッセージが伝われば、永遠の課題とも言われる得点力不足を改善するうえで、有効な手立てになると思うよ。