「(G大阪の2点目は)アクシデント的な、みんなの気が緩んだ瞬間にやられてしまった。普段入らないようなシュートが入って、逆にこっちは普段入るシュートが入らない。そういう部分で、持っている、持っていないという差は出たと思う」
 
 そして、彼は唇を噛み締め悔しそうに言った。
 

「サッカーの内容で負けたとは思っていない。ただ、負けたからなんにも言えないけど、正直、ガンバに負けるのは悔しい。負け惜しみと言われるかもしれないけど、苛立ちを覚えている。正直。今はなにを言おうとしても、イラついたことしか言えない」
 
 柏木はそう語ると、うつむきながら足早にスタジアムを去った。
 
 2015年シーズン、浦和は柏木のシャドーからボランチへのメインポジションの転換により、攻撃のバリエーションが実に多彩になった。武藤や関根の積極性が噛み合い出すと、クオリティも上がっていった。加えて柏木のハードワークの質と量も増し、チームへの貢献度は申し分なかった。
 
 チームの中心にいたのは「浦和の太陽」柏木だった。
 
 そこまで制約を受けず、自由にプレーすることで、柏木の豊富な攻撃のアイデアやテクニックは活きる。ただ、現在の3-4-2-1布陣のボランチとしてプレーするとなると、超攻撃的だが守備に不安を抱える“諸刃の刃”と言える存在になっていた。
 
 一つひとつの経験を積めば、ボランチに求められる危機察知能力は磨かれるはずだ。ただ、柏木の長所を活かすのであれば、自由度の高いシャドーへのポジション復帰、もしくはシステム変更(アンカーを配置する?)など、新たな試みをするのも手だろう。ペトロヴィッチ監督の就任から、来季は5年目を迎える。一貫して採用されてきた3-4-2-1システムも、なにかしらの変化を付ける過渡期を迎えているのかもしれない。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)