幼稚園と保育所の機能を併せ持つ幼保一体施設が注目を集めている。文部科学省と厚生労働省が協議を重ね、06年から全国で本格展開したい意向だ。それに先駆けて、東京都品川区の区立二葉すこやか園(大竹節子園長)では3年前に幼稚園の教室を使って保育所を開き、幼保一体を始めた。今月6日発表の文部科学省と厚生労働省のモデル事業にも認定されている。同園では、0〜5歳児が同じ建物内で生活している。

 幼保一体の考えは1970年代に地方で生まれ、最近では保育園の待機児童と、少子化による幼稚園の定員割れを同時に解消するため、構造改革特別区域の規制緩和でも盛んに議論されている。現在全国に約300カ所の一体施設があるという。だが、所轄省庁の違い、1日の保育時間の差、調理室の有無、幼稚園教員免許と保育士資格の差異など、多くの問題点も指摘されている。

 そうした流れの中で始まった二葉すこやか園の試みには、一貫した教育を6年間行うという考えが根底にあり、多方面から関心が寄せられている。01年、区と園が協力し、2階建ての園舎の1階2室を保育園保育室、1室を幼稚園保育室に改装。保育所に必要な調理室は、隣接する中学校の体育倉庫を改造して作った。新設した「二葉つぼみ保育園」は0〜3歳児を迎え入れ、同年9月1日に開園した。

 同園の幼稚園児たちは午前9時までに登園し、教育時間を教室や園庭で過ごす。小石が敷き詰められ、サルビアやアジサイなど季節の花が植えられた園舎周りの「もりのみち」も、格好の遊び場だ。正午には給食が始まる。以前は弁当だったが、現在は保育園と同様に、調理室で作られる食事やおやつを食べている。午後2時30分、幼稚園の閉園以降も園に残る子どもたちは、午後7時30分までの「預かり保育」組。

 一方園内の保育室では、0〜3歳児までを預かっている。ここでは午前7時30分から午後6時30分までの基本保育と1時間の延長保育を行っており、3歳児には保育・教育が融合したカリキュラムを受けさせ、翌年からの幼稚園での幼児教育につなげる。同園が目指す、「就学前の6年間一貫教育」を実施している。

 大竹園長は「最初は相互理解の問題が一番大きかった」と振り返る。保育所の新設案に対しては「子どもの数が増えれば狭くなる」「うちの子は食が細いから給食はちょっと」など、保護者から反対の声もあがった。だが、「就学前教育を受けさせたい」という保護者もいた。同園では幼稚園児が保育園の乳幼児と接する機会も増え、自然な形で仲良くしている。また、同園のスタッフは、全員が保育士資格と幼稚園教員免許を持っている。所轄省庁が違うため実現していないが、3〜5歳までの3年間を1人の先生が受け持つ形が理想だ。
 
 また預かり保育の実施で園にいる時間の増えた子供たちのために、幼児教育の時間と家庭的なゆったりとした時間のメリハリをつけている。ソニー教育財団の「ソニー幼児教育支援プログラム」で、03年度優秀プロジェクト園にも選ばれた。幼保一体施設について、大竹園長は「共働きも増え、長い時間子どもを預けたいというご両親も多くなった。教育の第一責任者は家庭だということを踏まえて、選択の幅が広がっていくといいですね」と今後に期待を寄せた。【了】