同時に、経済成長率を高めるためには、各地域同士が「一体化」し、分業の効率を高めていく必要があるのだ。「分散して暮らす」と「各地域が一体化する」という、一見、相反する命題を実現するのが、高速鉄道や高速道路といった交通インフラなのである。

 インフラ建設により、各地域同士の「距離」を縮め、生産性を高める。これこそが、今の日本にとって正しい地方創生策だ。また、「正しい地方創生策」を推進する場合、インフラ整備に加え、「税制」も重要になる。
 インフラ整備により東京圏と地方の生活面、ビジネス面の格差を解消し、さらに地方移転に対し税制優遇措置を講じるのだ。無論、インフラ格差を「ゼロ」にすることは不可能だろうが、それでも、
 「ある程度は便利で、さらに税制面で優遇措置を受けられる」
 という話になれば、東京から地方へと、一極集中とは逆の流れが起きる。

 実は、政府はすでに地方移転に対し税制優遇措置を設けており、実際にいくつかの企業が本社機能等を地方に移し始めているのだ。具体的には、YKK AP、医療機器メーカーのべセル、サントリープロダクツ、アパレルメーカーのキャン、産業用冷凍機メーカー前川製作所などとなる。
 東京23区の企業は、地方に本社機能を移すか、もしくは地方拠点を拡充すると、法人税の軽減措置を得ることができる。例えば、
 「特定業務施設の新設又は増設に関する課税の特例」
 「特定業務施設において従業員を雇用している場合の課税の特例」
 などで、移転を伴う投資に対し、特別償却25%、税額控除7%を受ける、あるいは増加雇用者一人当たり50万円の税額控除(移転を伴う場合は最大80万円)を受けることができる。

 税制優遇のみ、あるいはインフラ整備のみでは、なかなか企業は東京から本社機能等を地方に移そうとはしないだろう。二つがそろうことで初めて、本格的な「地方創生」への道が開ける。
 どれだけ税制を優遇されても、「不便な地域」に企業が移転することはない。安倍政権はインフラ整備には相変わらず否定的だが、税制優遇は始まっており、成果も出始めている。是非とも、安倍政権には税制優遇策を継続した上で、地方のインフラ整備を進めるという「正しい地方創生策」に立ち戻ってほしいのだ。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。