中性的なハイトーンボイス。キャッチーなメロディーにのせて、絶望の中で見つけたかすかな希望を、非日常的に歌い上げる――……

本日インタビューにご登場くださるのは、そんな昨今見かける 邦楽ロックのトレンドの真逆を地で行く ロックバンド Yellow Studs (通称「イエスタ」)だ。



結成から今年で13年め。完全無所属としてインディーズで活動する彼らは、営業、宣伝、広報もすべて自分たちの手で行ってきた。

うつりゆく時代、消えてゆく同期のバンド。社会的な葛藤や孤独と戦いながらも奏で続ける彼らの音楽には、ノスタルジーを感じるほどの「不器用なロック」がある。にじみ出る人間臭さは、彼らのようなキャリアでないと生み出すことはできないだろう。



そんな「Yellow Studs」メンバー4人の目に映る、現代の「社会」「就活と若者」「ロックシーン」そして「バンドマンとしての生き方」について、踏み込んでみた。

人生うまくいっている人にはわからない「不器用なリアリティー」



(左より)ドラム・田中宏樹さん、ベース・植田大輔さん、ボーカル&ピアノ・野村太一さん、ギター・野村良平さん

――皆さんのバンド結成のきっかけは?

植田「私が20歳の頃に、ギターの奥平(※この日は不在)と2人でなんとなくバンドをやりに上京してきました。あとは……」

太一「アルバイト先で出会った暇な人たちで始めました」 

――皆さんの音楽のコンセプトみたいなものはありますか?

太一「飾らず、かっこつけずに生の音楽を届ける ことです。アルバイトをしながら生きていく中、国民健康保険とか住民税とか厚生年金とか払えないという意味で、国に迷惑をかけているような人たちの……そんなダメな人たちが集まるとこういう風になるよっていう……まぁ今はみんな頑張ってちゃんと払えるようになりましたが」

良平「簡単に言うと リアリティー です」

――歌詞はボーカルの太一さんが担当されているんですよね。作詞の際は、どのようなことを心がけているんですか?

太一「心がけていることは、うそをつかない こと。気持ち悪いのはあんまり言いたくないですね。『愛してる』とか『大丈夫だよ』とか、『お父さんお母さんありがとう』とか。直接言えよ。歌にしなくていいよって思うタイプなんです」



――イエスタの音楽は、どんな人たちに届けたいですか?

太一「しー……死にたいひと?」

良平「少なっ(笑)」

太一「俺ら自体がうまくいっていない人間たちなので、うまくいっていない人たちに聞いてもらいたい です。というか、うまくいってる人たちには多分ハマんない んじゃないですかね」

――実際に経験した人でないと説得力が出ない言葉の重みってありますよね。

太一「生き詰まっている人が、音楽を聞いて助けられたとか……。俺らの音楽が人の命を救っていることも、たぶん何度かあるんじゃないかと思うんです。だから、がんばってる人、悩んでいる人 に聞いてもらいたい。だけど、『元気出せよ』とかそんなのは思ったことないしね」



夢も希望もない。本当の絶望はファンタジーでは語れない

――皆さんの音楽は、昨今の音楽に多い「希望」や「絶望」といったものやファンタジックで抽象的な要素が少なく、どこまでも現実的な印象を受けるのですが、そのあたりは何か意識されていますか?

太一「みんなが心地良いようにつくられている感のある歌詞が苦手なんです。ビジネスミュージック的な……。まあお金は欲しいんですけどね」

良平「事実僕らは 夢も希望もない ですからね。歌詞にするほどのものは」

太一「結構毎日が苦しいですよ」

――そんな中で、人気楽曲『さえずり』は、どのようにつくられた曲なんですか?



太一「これはとにかく、つらくてしょうがないときにつくった曲 ですね。『もう無理だ』ってときに。だからそんな感じの歌詞です。当時バイトなにやってたんだろうな……」

良平「わかりやすい直球的な曲です」

太一「(世間的には)全然直球じゃないけどね。この時代にこんな曲、はやってないからね」

――今の若い世代には、皆さんのような音楽はめずらしいかもしれませんね。

太一「そうですね。『売れる気あんの?』みたいな音楽やってますよね」

植田「そうだね(笑)」



――売れ線の音楽に、あこがれはあったりするんですか?

太一「あこがれはありますよ。すごいなあって思いますもん。曲に感動まではしない場合も、マネジメントがうまいなあとか、営業がすごいとか……売れている人には何かがある と思っているので尊敬します」

就活生へ、社畜へ、働くことに悩む人へ“しちゃえドロップアウト”


――音楽だけでなく、皆さんは世間一般的に言われる「若者」の特徴の対極に位置しているように見えます。スマートで無難な道を選び、堅実である一方で野心や夢もない。海外旅行もクルマも興味はない。そのような生き方について、皆さんの目にはどのように映っていますか?

太一「それはそれで勇気があるなあ って思いますよ。ソツなく人生こなしてソツなく死んでいく。俺だったら怖くて選べないから、すごいなって思います」

一同「うん」

太一「就職して、十何年働いて課長になって部長になって……すごいなと思います。そういう生き方が全員できない から、音楽やっています。たぶん」

――就職活動をモチーフにしたMVが印象的な『脱線』は、新卒採用主義の日本社会に、一石を投じるようなパンチがある曲ですが、この曲をつくろうと思ったきっかけは何かあるんですか?

 

太一「これは、ある就職活動について(自分に)相談してくれた子に向けた歌なので、全世界に向けた歌とかではないです」

―― ドロップアウトや挫折を経験しないまま生きている若者にとって、「レールを踏み外す」という行為はある意味死より恐ろしいことに映る場合もあると思うんですけど、それを促すというのは、斬新ですよね。

太一「それまでもアルバイト先で、新卒の子が入ってきては辞めていったのを見ていたんです。みんな大学を卒業したら『新卒』『新卒』で、『現役で受かんなきゃ意味がない』って言う。しかもそれが原因で自殺している人もいるというニュースも聞く。そんな風習に意味はないし、それにとらわれているのも滑稽 に見えたので、だったら『こっち側にこういう生き方もあるよ』みたいな、ね」 

――レールを一度外れたものには、風当り厳しい日本社会についてどう思われますか?

太一「こういう生き方しか知らないからわかんない。社会人やったことないし」

良平「知恵があってこれを選んでいるわけじゃないですからね」
 
植田「知恵があったら選んでないですよ(笑)」



――現代社会で、バンドマンとして生きていくのは、大変ですか?

太一「好きにやっているだけなんで、圧力とかは別にないですね。その点は恵まれています。ただ世間の目は冷たいですけどね。クレジットカードができないとか。クレカは欲しいです」 

一同「(笑)」



ビートルズより長い月日で今の音楽シーンに思うこと

――皆さんはこれまでずっと完全無所属として、ご自身で営業や販促、宣伝活動もされていますよね。 大変なことも多いと思いますが、その中で逆に良かったと思うことはありますか?

太一「フットワークは軽い よね。事務所通さなくていいですし、すぐ動きますよ」

植田「あとは 小さな称賛もダイレクトに届く ので、嬉しいですね」

良平「キリン『氷結』のCM(※松田翔太さんがご出演されているもの)に曲が使われたときも、『うちらだけでもできるんだな』みたいなのはありました」

太一「そういった案件が来たときも楽だよね。『2日後や3日後につくってくれ』みたいな依頼も、フットワーク軽く対応できます」


 
――MV制作の手配もご自分たちで?

良平「MVは主に友だちですね。『コメディ』なんかはお客さんで来てくれていた学生の子がデザイナーになっていて。それでつくってくれました」



――お客さんが育ってというのはすごいですね! 皆さんは結成が2003年ということで、今年は活動……

良平「今年で 13年め になります」

太一「え、うそ。13年? ……やばいっすね」

良平「やばいっすね」
 
太一「小学校1年生だった子が、高校3年生になるより長いんだ?」

良平「そりゃお客さんも大きくなりますもん。中学生だった子が社会人になってたり」

太一「ライブに子どもを連れてきてたりね」




――結成当初と今とで、時代の変化を感じられることはありますか?


植田「親子2世代でライブに来る人 は増えましたね」

良平 「あと 知り合いのバンドがどんどんなくなっていきます。みんな辞めていきました」

――自分たちの中で、変わったと思うことはありますか?

太一「変わったのは……演奏がちょっとうまくなった かな。12年もやってりゃ」 

植田「基本的にはあまり変わっていませんね」

太一「変わってないのが良いことかどうなのかはわからないですけど、誰ひとり辞めようと思わず……(まわりを見回して)うん。たぶん、全員思ってない」

一同「(笑)」



太一「12年解散しないというのはある意味すごいと思います。それで売れないのもすごいけど」

良平「ビートルズより全然長い からね。ビートルズ10年やってないもん」

太一「えっ。マジ? あいつら全然やってないじゃん」

良平「あのスパンに何曲だっけ? 100? 200?」

太一「すごいね。天才なんだね」

――今と昔のバンドシーンで変化を感じられる部分はありますか?

太一「今は バンドマンがみんなまじめ。草食っていうのかね? 僕らがいたところだけかもしれないですけど、昔はバンドマンつったら『悪』っていうか……」

良平「昔のバンドマンって怖かったですもん」

太一「悪いことをするのがかっこいい みたいな、ね。今、どこのライブハウス行ってもそういう人いないもんね。ライブハウスでケンカとかなくなりましたもん」

良平「知名度あるバンドさんは総じてみんなまじめですね」

太一「あと上手な人、増えたね。YouTubeとかiPhoneとかできてきたから、練習しやすくなったのかな?」

社会的なものでなくても、誰かの生活の歯車になる

――そんな皆さんの、これからの「夢」や「野望」があれば教えていただきたいです。

太一「メンバー全員、家と車があって、人並みの生活水準を保つ のが夢です。ちゃんと働いている人たちと同じくらいのゼイタクができればいいなあと思います」



良平「車はゼイタクっすね」

太一「それでくたばるまで金かせげたらいいのかなあと思います。ライブやってお金もらって、CD発売してお金もらって。それが続くように……あと、何かなあ? 『レクサス』とは言わず……」

田中「僕、軽でいいっすよ(笑)」

――生活面以外ではどうですか?

良平「自分たちがカッコイイと思った音楽を聞いて、カッコイイと思える音楽をつくって、それをお客さんにもカッコイイと思ってもらいたいです」



――シンプルですね!

良平「まあ『わかんない』って言われることも多いですけどね。『そっかー失敗しちゃったかー』って(笑)あとは……ちやほやされたいですね! もっと!」

一同「(笑)」

良平「いいものつくって『いい』と思ってもらいたいです。リアクションがほしい。つまりモテたい!」

太一「この歳になってもちやほやされたいって……すごいな」

――おふたりはどうですか?

植田「環境に応じて楽しく音楽を続けていられたら、それがいちばんだと思います。結成当時は、メジャーデビューとかミリオンヒットとかが頭の片隅にあったりしたんですけど、今の環境では変わってきているので。CDが売れなくなったり、ゴールとするものもいろいろと変わってきている中、それでも今、こうして音楽をやってこれるのは幸せなことだと思います」



田中「僕も昔は、ドカンと売れるとか有名人になるとかそういう気持ちもあったんですけど、そうではなくて 普通に社会人として生活していくレベルで音楽をやること もできるはずとずっと思っていて。そうなることと、それを続けていくことが目標です」



――最後にイエスタの音楽を通して、伝えたいメッセージはありますか?

太一「社会的なお金は回してないですけど、どこかの誰かの生活の歯車にはなれている と思うんです。違う方の歯車で、誰かのプラスになるスイッチになれれば……と、思っています」

――ありがとうございました!



短いようで長い13年、社会の変化を音楽とともに歩んできたYellow Studs。自身の体験から生まれてくるリアルな歌詞は、万人に届かなくても、どこかの誰かを救っている。

そして、生活がかかっているからこそ、ひとりひとりのファンを大切にする彼らの考え抜かれた“おもてなし精神”やパフォーマンスは、ぜひライブハウスで体験していただきたい。

Yellow Studs「方位磁針ツアー2015」11/07(土)天王寺fireloop(大阪)11/15(日)仙台 MACANA(宮城)11/23(月祝)浜松 窓枠(静岡)11/28(土)高崎 FLEEZ(群馬)12/06(日)名古屋ジャミン 2016/01/23(土)渋谷 WWWHP→ http://yellowstuds.net

Yellow Studs 公式ブログ



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「ちくしょう精神」が原動力。
不器用なまでにまっすぐで飾らない叫びは、いつの時代にも通じる普遍的なものだと思います。 

(撮影/クマ、取材・文/キャロラインTANIGAWA)