Dステとは、2007年から毎年上演されている俳優集団D-BOYSによる演劇ユニット公演。その17作目となる『夕陽伝』のメインキャストに抜擢された宮崎秋人は、めきめきと頭角を現している若手俳優のひとりだ。キャスト陣の中で芸歴では一番の後輩だが、気後れするどころかむしろ前のめりに突っ走っている宮崎に、本作への意気込みを聞いた。

撮影/後藤倫人 ヘアメイク/小林純子 取材・文/野口理香子


Dステは自分の世界を広げてくれた



――Dステに初出演、しかも主人公の弟役に決まったとわかったときは、どういう気持ちになりましたか?

最初は素直に嬉しかったですね。出演が決まったと聞いたときは、まだどういう作品かわかりませんでした。瀬戸(康史)さんの弟役というのは聞いていたんですけど、瀬戸さんが主役だとも知らなくて。

――そうだったんですか。

だから、家族ものなのかな?なんて思っていました。主軸のストーリーは違うところで展開していて、主人公が家に帰って来たら自分がいる…みたいな。でも実際はそんなほっこりした話じゃなかった(苦笑)。

――(笑)。『夕陽伝』の具体的な内容がわかってからは、どう思いました?

プレッシャーは感じましたけど、自分もこれまで舞台の経験をたくさん積ませていただいてきたつもりなので、やってやるぞという気持ちはすぐに湧きました。

――Dステにはスタッフとして携わっていたことがあるんですよね。

はい。裏方をやりながら、いつかはDステに立ちたいと思っていました。でもDステって言うくらいだからD-BOYSにならないと出られないんだよなぁ、自分はD-BOYSじゃないしなぁ…って。

――半ば諦めていた…?

でも、スタッフとしてついたのはDステが初めてでしたし、初めてのときに受けた刺激っていうのは、ずっと自分の中にあるものだから。

――そうですよね。

自分の世界を広げてくれたDステに出るという夢が叶ったのは――もちろん、他の作品もいろいろ出させてもらえて嬉しいんですけど――ずっと出たいと思っていた舞台に立てる嬉しさというのは、格別ですね。

瀬戸さんへの“憧れ”も役作りに



――さて、『夕陽伝』は日本の神話を下敷きにしており、宮崎さんは大和朝廷時代の大王の息子・都月(つづき)を演じられます。都月はどういうキャラクターでしょうか?

都月は、いずれこの国を継ぐと言われているお兄ちゃんの海里(かいり)を支えようと、剣術や勉学に励んできた男です。でも海里が、自分とは違う方向ばかり見ていることに、フラストレーションを感じています。

――瀬戸さん演じる海里は天真爛漫で、外の世界を見て回りたいという願望があるんですよね。

都月は、海里は何でそんなこと言ってるんだ、しっかり国を継いでほしいのに…って不満に思っているんです。それから、幼なじみの陽向(ひなた)をめぐる三角関係もあって。

――都月は、子どもの頃からずっと陽向が好きで、でも陽向は海里が好きだという…。

たぶん都月は“叶わぬ恋”だってことを受け入れきれてはないんでしょうけど、認めてはいて、陽向の幸せも願っていると思うんです。それなのにまた、海里は違う方向を見ているからモヤモヤしてしまう。

――国のこと、恋愛のこと、その両方で海里に不満を抱いている、と。

どちらにしても、海里には勝てないという劣等感をずっと抱いてるんですよね。

――都月を演じるうえで大切にしていることはありますか?

演出の岡村俊一さんに言われたことは、都月としての海里っていうのもあるけど、役の枠をとっぱらって、宮崎秋人としての瀬戸康史について想像力を働かせようと。瀬戸さんに対する憧れとか、勝てないっていう劣等感とか、そういう気持ちをもっと抱けるようになって、それがお芝居に乗ったらいいねと言われました。

――なるほど! その他に何かありますか?

陽向を演じる(小芝)風花ちゃんを全力で好きになること! 稽古場でもずっと目で追うようにしています(笑)。

――小芝さんはどんな方ですか?

負けず嫌いですね。筋トレも僕らと同じ量をやっているんですけど、「女の子だから腕立て伏せをするときはヒザをついていいよ」って言われても、頑としてヒザをつこうとしない(笑)。本当に負けず嫌いなんだろうなって。

――「男には負けないぞ」って気合いが入っているのかもしれませんね。

その芯が一本通っているところは、陽向にぴったりだなって思います。

――瀬戸さんの印象はいかがですか?

すごく自然体な人です。いろんなタイプの座長を今まで見てきましたけど、瀬戸さんはいつも人の輪の中心にいて、自然と周りが巻き込まれていく感じ。素敵な先輩だなと思います。