リーガ・エスパニョーラから、レアル・マドリードとバルセロナによる伝統の一戦“クラシコ”がなくなる――。それまで、少なくとも海外のリーガファンの間では、半ば冗談として捉えられてきたことが、いよいよ現実のものになろうとしている。

 27日、スペイン北東部カタルーニャ州議会の総選挙が行われ、分離・独立派が過半数の議席を獲得した。この結果、独立派連合は今後1年半以内に、スペインからの独立の手続きを民主的に行っていくという。

 仮に独立が実現した場合、カタルーニャ州に本拠地を置くバルサとエスパニョールは、スペイン側から見て“外国のクラブ”となり、現在所属するスペインサッカー連盟(RFEF)からは除名。リーガからも脱退することになる。スペインのスポーツ法では、スペイン国内の連盟に属さないチームが、国内のリーグ、つまりリーガでプレーすることは認められていないからだ(※編集部注:アンドラのチームだけは、特例によりスペイン国内のリーグでプレー可能)。そうなれば、数々の激闘を繰り広げてきた“クラシコ”は、1つのピリオドを打つことになる。

 もっとも、そうした未来が、当事者であるクラブ関係者、選手、地元のファンたちにとって幸せなサッカーライフを保証するものになるかと言えば、一概に「Si(*スペイン語で「Yes」の意)」とは言えないだろう。

 バルサとエスパニョールが独立後に公式戦を戦うには、他国のリーグに参入するか、カタルーニャサッカー協会が欧州サッカー連盟(UEFA)や国際サッカー連盟(FIFA)に独自に加盟し、オリジナルのプロリーグを創設する以外に方法がない。特に後者の道を選んだ場合、バルサはこれまでよりもレベルの低い相手と戦うことになり、“2強”はおろか、“1強”体制が長く続くことになる。当然、リーグとしての魅力、競争力はなくなり、チーム力が低下する恐れや、現在在籍するスター選手が次々に退団する可能性が出てくる。

 なお、その場合、“クラシコ”が再び実現するのは、新たなリーグで欧州カップ戦出場権を獲得して、ヨーロッパリーグやチャンピオンズリーグで対戦する。あるいは、親善試合で戦う。その二択しか残されていない。ただ、これにしても、そもそも新たなリーグに欧州カップ戦出場権は分配されるのか、という問題が残っている。

 このように、政治的な問題はともかく、サッカー的な観点から見て、カタルーニャ独立にともなうメリットはほぼ無いに等しい。実際、バルセロナのジョゼップ・マリア・バルトメウ会長は、今回の選挙を前に「バルセロナはニュートラルな立場にある」と主張。クラブが独立運動とは距離を置いていることを強調し、慎重な姿勢を崩していない。それも、独立によるデメリットを理解しているからと想像できる。

 一方、今回の選挙結果は、代表レベルにも波及する。いざ独立が実現すれば、カタルーニャサッカー協会が「一国の協会」としてUEFAやFIFAへの加入を目指し、独自の代表チームを持つことになるのは必至。そうなった場合、来年のユーロ2016で大会3連覇を目指すスペイン代表に、カタルーニャ州出身のジェラール・ピケやセルヒオ・ブスケツらを選出できなくなるという最悪の事態も想定される。

 もちろん、「Catalonia is not Spain(カタルーニャはスペインではない)」が合言葉だった独立支持派は、これまで非公式に活動してきたカタルーニャ代表が、真の代表チームとして国際大会に参加することを切望してきた。同代表入りの資格を持つのは、前述の“バルサ組”の他にも、セスク・ファブレガス(チェルシー)やボージャン・クルキッチ(ストーク)ら“海外組”のスター選手も含まれ、チームとしての実力は欧州中堅国以上とも評される。そして、もし仮に「スペイン代表 vs カタルーニャ代表」が実現すれば、“クラシコ”以上の盛り上がり、注目を集めるのは間違いなく、好勝負を演じる可能性もある。