規格外な選手というのはこういう選手のことを言うのか、とオコエ 瑠偉(関東一)のプレーを見て感じた方も多いのではないだろうか。今回は代表選手に選出されたオコエ 瑠偉の魅力、活躍の軌跡、U-18での課題を見出していきたい。

群を抜くパフォーマンスを甲子園で見せたオコエ瑠偉

オコエ 瑠偉(関東一)

 4月の春季東京大会。清宮 幸太郎の登場により沸いたが、NPBのスカウトの視線の先にいるのはオコエだった。高校生離れした身体能力の高さ、外野守備のレベルの高さ、脚力、パンチ力ある豪打と、スカウトからすればこれほど魅力的な逸材はいない。

 例年、外野手で代表選手に選出されるのは3名前後とまさに狭き門で、オコエほどの能力を持った選手でも代表入りするには、何か実績がなければ、選ばれる可能性は厳しかった。実績――それが甲子園出場なのである。西谷 浩一監督は2013年のU-18ワールドカップの選考を見ても、夏の甲子園出場、未出場問わず実力ある選手を選出するが、やはり甲子園出場者が選ばれやすいのが日本代表だ。

 5年ぶりの甲子園出場を目指して、オコエは東東京大会から活躍を見せる。5回戦の東京成徳大高戦ではホームランを含む4打数3安打1打点の活躍、準々決勝の明大中野戦でも4打数3安打1打点の活躍で打線に火をつけ、5回コールド勝ちに貢献。準決勝の帝京戦では5打数1安打2打点でしっかりと打点を挙げ、決勝の日大豊山戦では6打数3安打の成績を収めた。この試合では、中前安打から二塁打を決めるなど圧巻のプレーを見せた。東東京大会では打率.440、1本塁打、6打点、6盗塁の活躍で甲子園に乗り込んだのである。こうして代表選手に選ばれるための第一関門である甲子園出場を決めた。

 そして甲子園ではどんな活躍を見せるかに注目していたが、想像以上のインパクトを見せることになる。2回戦の高岡商戦では、第1打席で一塁強襲安打から二塁打に。まず足で魅せると、第2打席、第3打席は三塁打。あまりの俊足ぶりに外野手の間に抜けた瞬間、「三塁打」と確信した方も多いだろう。実際にオコエの走塁タイムを測っていたNPBのスカウトは、オコエの三塁打で10.8秒台を記録していたようだ。三塁打のタイムは11秒前半のタイムで俊足といわれるが、それ以上のタイムを叩き出すのだから、スカウトの方たちは興奮したに違いない。

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 高岡商戦では足を魅せたプレー。そして3回戦の中京大中京戦では1回表、誰もが抜けると思った左中間の当たりを見事に追いついてスーパーキャッチ。あまりのすごさに声を上げるほどであった。そして準々決勝の興南戦では比屋根 雅也が得意とする内角直球を振り抜いて決勝2ラン。あまりの嬉しさにバットを高々と投げたオコエ。 走攻守すべてにおいて華のあるプレーを見せ、高校生ナンバーワン野手だと、ファンに印象付けたのである。

 今回の活躍でオコエがどれだけ愛された選手であるかは、甲子園での打席の様子を見れば分かる。オコエが打席に立つと、大きな拍手が沸くのだ。その拍手の大きさは誰よりも大きかった。甲子園出場、甲子園でのインパクトある活躍。代表入りするには十分な材料であった。

課題は「打撃」。何かをつかむ大会となるか?

オコエ 瑠偉(関東一)

 そして代表入りしたオコエ。その課題は「打撃」である。中京大中京戦では上野 翔太郎の140キロを超える速球、切れ味鋭いスライダー、チェンジアップの攻めに苦しみ、準々決勝では興南の比屋根 雅也の変則フォームから投じる縦の変化球、インコース攻めに苦しみ、準決勝でも東海大相模の吉田 凌の縦スライダーを軸とした投球に対し、三振もあった。レベルの高い投手の駆け引きに苦しんだ感があったのだ。

 だが敗戦直後に「プロ志望」と明かしたオコエにとっては、そういった投手から打たなければ、プロでの活躍はないだろう。関東一の首脳陣と話した際に、オコエは走塁、守備で高く評価されているが、打撃はまだまだだと評価する人が多かったという。実際にオコエが木製バットを使って打撃練習する姿を見たことがあるが、当たったときは非常に飛ばすが、詰まった打球が多く、ミートして飛ばすことに苦労している様子であった。まだ木製バットを使いこなせていない段階で、実戦に臨めば苦しむことが予想される。

 だからこそ木製バットを使う今回の舞台はオコエを大きく成長させる場所となるはず。木製バットで打てるにはどうすれば良いのか、首脳陣、周りの選手からいろいろとヒントを得る場となるだろう。スイングの軌道、タイミング、ボールの待ち方などいろいろなことに気付けるはずだ。

 打撃面で「これだ!」というものを掴んだ時。オコエは甲子園に続き、U-18でも大きなインパクトを残してくれるに違いない。その時、オコエは世界中の野球関係者、ファンの記憶にとどまる選手になることは間違いない。

(文=河嶋 宗一)

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