神奈川県の箱根山がごく小規模な噴火をしたと気象庁が発表し、箱根町が半径1キロに避難指示を出すまでの事態になっている。万が一、御嶽山規模の噴火になれば、周辺の温泉街も巻き込まれるとの指摘もあるが、冷静に状況を見ることが必要のようだ。

「現時点では、噴火ではない」。報道によると、気象庁が2015年6月29日に発表したときは、こう言い切っていた。

地滑りが起こり、その土砂が新たにできた噴気孔をふさいで噴き上げられた?

大涌谷で幅10メートルほどの地滑りが起こり、その土砂が新たにできた噴気孔をふさいで噴き上げられたとの説明だった。1キロ以上先の温泉周辺の道路では、車の窓ガラスに白っぽい粉の降下物が付着していたのを確認したというが、説明通りならそれは火山灰ではなかったことになる。

マグマなどの動きを示す火山性微動が初めて確認され、箱根町で震度3の地震も2回起きたが、警戒レベルも、5月6日に2(火口周辺規制)に引き上げられたままに据え置かれた。

ところが、火山の専門家からは、気象庁のこの判断に異論が相次いだ。

朝日新聞によると、静岡大の小山真人教授(火山学)は、「噴火でないというのは奇妙な感じだ」と取材にコメントした。「地下の熱水活動が地滑りを引き起こし、噴火を誘発したと考える方が自然だ」として、警戒レベルを3にすることも検討すべきだとした。

ネット上でも、専門家から次々に異論が出た。群馬大学の早川由紀夫教授(地質学)はツイッターで、気象庁は噴出した固形物が少なくとも300メートル以上先で降下したら噴火と定義しているとして、「これは即座に噴火と認定しないといけない」と厳しく指摘した。今回は、水蒸気爆発が起きたと考えられるとし、火山灰の噴出量は100トンにも及ぶと推計している。

その後、気象庁は、まる1日経った30日になって、火山灰の降下が認められ噴火が分かったとして、警戒レベルを3(入山規制)に引き上げると発表した。

「予断を許さないので、常に情報には注意を」

大涌谷の近辺では、30センチぐらいの大きな噴石も落ちてきたといい、気象庁では、注意を呼び掛けている。

一方、早川由紀夫教授のツイートによると、今回は、警戒レベルを4にしてもおかしくないという。箱根山では、14年9月の御嶽山噴火レベルの火砕流が生じる恐れもあるとし、その場合、2キロほども下って温泉街を巻き込みかねないと警告している。

名古屋大学大学院の山岡耕春教授(地震・火山学)は、J-CASTニュースの取材に対し、気象庁のレベル引き上げについてこう話す。

「火口から固形物が飛んだなら噴火と言ってもよかったので、やっと認めたかという感じです。めったに起こらないことですので、勇気がいることだったのだと思います。まだ緊急性が分からない状況ですので、レベル4にするのかは判断が難しいところでしょう。ただ、レベルについては過信しないことが大切で、数日から1週間単位で様子を見て、具体的な対策を考えていくべきですね」

今後、大規模な水蒸気爆発や火砕流などが起きる可能性については、こう言う。

「噴火が収まるかもしれませんし、大きくなるかもしれませんので、予断を許さない状況だと思います。しかし、いきなりというのは考えにくく、地震増加などの前兆があるのではないでしょうか。深いところでかなり大きな地殻変動が起きてマグマ噴火に至るには時間がかかるはずで、1万年に1回ぐらいの頻度でもありますので過剰の心配はいらないと思います。ただ、可能性はいくらでもありますので、いつでも逃げられるように常に情報には注意する必要があるでしょう」