若手を伸び伸びとプレーさせるのも、ベテランと呼ばれる彼らの役割のひとつだ。スコアレスの状態が続いたなか、大迫、武藤、原口といったカードを切って攻撃に変化をつけていきたい意図は見えたけれど、ピッチ上は相変わらず“渋滞”が緩和されていなかった。
言い換えれば、ピッチ上での交通整理ができていなかったから、選手の入れ替えはあっても、あまり機能していたとは言えなかったんだ。こうしたフレッシュな選手がラッキーボーイとなって状況を劇的に変えてくれることも多々あるけど、そうしたシチュエーションを作り出して彼らを気持ちよくプレーさせるのも、いろんな意味でリーダーシップの取れる本田や長谷部の役割だと言える。
いずれは宇佐美が本田に、柴崎が長谷部になるんだろうから、若手のふたりは本田や長谷部のそばでもっと学んでいけばいい。ワールドカップ2次予選、さらには最終予選の舞台というのは、チームの完成度を高めるという作業を通して、ベテランから若手へと“経験”というバトンを受け渡す絶好の場所でもあるんだから。
どうすればゴールを「こじ開ける」ことができるか――。いずれにせよ、「こじ開ける」というのが、この2次予選の大きなテーマであることはイラク戦での解説でも伝えたけれど、今回のシンガポール戦ではっきりと分かったはずだ。
最終予選はもとより、2次予選というのもやっぱり一筋縄ではいかない。たしかに相手GKの神懸かり的なセーブを含めて、シンガポールの組織的なディフェンスは讃えられるべきものだった。ただし、実力差を考えればアウェーのシンガポールが“勝点”を狙う戦術を取ってくるのは予想できていたことだった。
これからもシンガポールに限らず、対戦相手のレベルを考えれば、まともに「殴り合い」を挑んできてくれる相手などないだろう。しっかりガードを作って勝点1を奪えば儲けもの。そんな割り切った戦い方をしてくる相手をどう攻略していくかが課題になる。
いつも同じようなサッカーをして「こじ開ける」ことができるようになるには、本田や長谷部などの経験豊富な選手のリーダーシップが鍵を握るだろう。彼らがもっとゲームをコントロールして、アジアでは圧倒的な“格の違い”を見せつけてくれるよう、次回以降の試合に期待したい。
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