各国のサッカー事情に通じたエキスパート2人を迎え、クロストークで掘り下げる連載企画のリーガ・エスパニョーラ編。
 
 バルセロナを拠点に欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに追いかける豊福晋氏と、スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙『マルカ』のバルセロナ支局長を務めるルイス・フェルナンド・ロホ記者が、目下絶好調のアントワーヌ・グリエーズマンに迫った。
 
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豊福晋:前節はバルセロナとレアル・マドリーの2強が順当に勝利を収め、3位のアトレティコも踏ん張りました。アウェーでデポルティボに2-1。この勝点3は、彼らにとって非常に大きかったと思います。
 
ルイス・フェルナンド・ロホ:アトレティコの今シーズンを決定づける試合になったかもしれないね。しかも、3位争いのライバルのバレンシアとセビージャが躓いてくれた。バレンシアはバルサに敗れ(0-2)、セビージャはグラナダを相手に取りこぼしたから(1-1)、アトレティコと4位バレンシアとの勝点差は4に開いた。
 
豊福:デポルは決して簡単な相手じゃなかった。17位で残留争いの真っ只中。4〜5月のこの時期に一番やりにくい相手は、生き残りを懸けて必死で挑んでくる彼らのようなチームですから。
 
ロホ:こういう試合に勝ち切るところは、さすがシメオネだね。勝点差が4に開いたのは精神的にも大きい。このまま無事3位でフィニッシュできるだろう。
 
豊福:デポル戦の主役は、なんと言っても2得点のグリエーズマンでした。『マルカ』のアトレティコ番記者も絶賛していました。選手採点でも、ひとりだけ8点がついていた。
 
ロホ:グリエーズマンは、いまやリーガの主役のひとりと言っていいだろう。バルサのスアレスと並んで、目下、最高に調子がいいアタッカーだよ。
 
豊福:グリエーズマンは今シーズンにアトレティコが獲得した「補強の目玉」のひとりではあったんですが、ここまでの活躍を予想できた人はたぶんいなかったはずです。優勝が狙えるビッグクラブでプレーするのは、彼にとってこれが初めてでしたしね。正直なところ、ここまでやると思っていましたか?
 
ロホ:いや、ある程度はやるだろうなとは思っていたが、ここまでの活躍は予想できなかったよ。リーガで20ゴールだろう。マンジュキッチを抑えてチーム得点王だからね。
 
豊福:マンジュキッチも怪我を抱えながら攻守に貢献してはいますが、グリエーズマンのこの活躍を見せられると、今シーズンのアトレティコはこのフランス代表のチームだなと思います。当初は高いと思えた3000万ユーロ(約39億円)という移籍金も、いまではその価値があったんだと頷ける。
 
ロホ:リーガで20ゴールを決めるのは凄いことなんだ。いまのリーガは得点ランクの1位と2位が飛び抜けているから、影が薄くなってしまうが(笑)。
 
豊福:ロナウドが39ゴール、メッシが35ゴール。ちょっとこのふたりは別枠で考えた方がいい(笑)。
 
ロホ:ただ、それでグリエーズマンの価値が下がるわけじゃない。欧州の他のリーグの得点ランキングを見てみると、セリエAは1位のテベスが18ゴールだ。ブンデスリーガはフランクフルトのマイアーが19ゴールで、プレミアリーグはシティのアグエロとスパーズのケインが20ゴールでトップに並んでいる。グリーズマンの20ゴールは、つまりはそういうことだ。
 
豊福:ロナウドとメッシのインパクトが強すぎるせいで、スペイン国外ではさらに印象が薄いかもしれませんが。
 
ロホ:リーガの年間ベスト11を選ぶとしたら、間違いなく入るだろうね。年間最優秀選手は無理だとしても。