もはや「関係の修復は不可能」(画像はイメージ)

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創業会長と娘の社長がそれぞれ取締役の選任を求めて対立していた大塚家具のお家騒動。2015年3月末に開かれた同社の株主総会で大塚久美子社長(47)が提出した会社提案が61%の賛成で議決され、創業者の勝久会長(71)は退任に追い込まれた。

久美子社長は総会後の記者会見で企業イメージの回復に取り組む考えを示したが、勝久氏が約18%を保有する筆頭株主である事実は変わらず、対立の火種はくすぶったままだ。

「名誉会長」を用意したが

同社の関係者によると、久美子社長は当初、勝久会長に「名誉会長」などのポストを用意する考えだった。しかし、株主総会での議決権確保に向けた双方の多数派工作が激しくなる中で、勝久会長は久美子社長の退任を求める意志を変えず、「関係の修復は不可能」(幹部)とみられている。

株主総会後、久美子社長が開いた記者会見でも報道陣の質問は勝久氏の今後の処遇に集中したが、久美子社長は、「(勝久氏が)株主であり、創業者である事実は変わらず、それを踏まえて判断していきたい」と述べるにとどめ、具体的な言及は避けた。

久美子社長が頭を悩ませているのは、今後の「安定株主対策」だ。創業者が引退後も最大株主として経営に干渉を続けることは同族企業では珍しいことではないが、一般投資家にも開かれた上場企業として「経営と所有の分離」を徹底しなければ、いくら「コーポレートガバナンス(企業統治)を徹底する」(久美子氏)と強調しても形だけになりかねない。

株主総会では筆頭株主の勝久氏以外に、約3%を保有するフランスベッドなど取引先の一部、従業員株主と一般株主を含め全体の4割弱が会社提案への反対に回った。敗北した勝久氏は総会後、「株主の判断を真摯に受け止め、まっさらな気持ちで出直す」との短いコメントを発表したが、報道陣の前には姿を見せなかった。今後は「経営権を奪い返すため株式公開買い付け(TOB)など『次の一手』を打ってくる可能性もある」というのが関係者の共通の見方だ。

経営への未練隠さず

久美子社長にとって最大の対抗策となるのは、自らが投資ファンドなどを味方に付けて対抗TOBに踏み切ることだ。証券会社の幹部は「総会で久美子社長の会社提案に賛同した金融機関や一般株主がTOBに応じて発行済み株式の3分の2以上を取得すれば、株式公開をいったん廃止して非上場企業として経営改革のスピードを上げるためのいわゆるMBO(経営者による企業買収)が成立する」と話す。

投資ファンドや他の取引先などを引受先とする第三者割当増資を実施し、勝久氏側の持ち株比率を引き下げる手法もある。ただ、増資は設備投資などの資金調達や戦略的な資本提携などのために実施するのが本道で、「取引金融機関などの賛同を得られる保証はない」(関係者)という。

埼玉県春日部市の桐だんす店を業界トップに育て上げた創業者の勝久氏は、株主総会での発言の冒頭、「(久美子氏の)クーデターにより社長の座を奪われた大塚です」と自己紹介し、経営への未練を隠さなかった。久美子社長を後継者に選んだ自らの判断への反省の弁を繰り返し、他の株主から「会社は(大塚)一族のものではない」と諌める発言も出たほどだ。

同社を舞台にした騒動はまだまだ収束にはほど遠いようだ。